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98年度以来となるベスト8進出 攻守に高い機能性を発揮する佐野日大の5バック

2017.01.04

先制点を決めた佐野日大の梅澤(中央) [写真]=平山孝志

取材・文=河治良幸(提供:ストライカーデラックス編集部)

「5-4-1」の佐野日大は堅実な守備で一条のパスワークを阻みながら、攻撃時は両サイドバックが素早く駆け上がって鋭い縦の攻撃を繰り出す。前半18分には1トップの野澤陸がゴール前に突っ込んだ後のセカンドボールを左サイドバックの梅澤崚が拾い、左足の豪快なボレーシュートをゴールに突き刺した。一条も中央の守備が堅い佐野日大を相手に、前半27分、左サイドからのクロスに加茂祐輝がヘッドで合わせて追いつくが、前半40分に佐野日大が再び勝ち越し。佐野日大は堅守から効果的なカウンターを繰り出して一条になかなか同点チャンスを作らせなかったが、終了間際に岩本修平が入れたボールの混線を加茂が押し込みPK戦へ。佐野日大は1人目が外したが、GK中村一貴が2本止め、佐野日大が98年度以来となるベスト8進出を決めた。

 サッカーにおいてシステムはベースにすぎず、よく「システムうんぬんではない」という言葉も監督や選手から聞かれる。それでもチームが戦う上で機能性のベクトルにもなりうる。佐野日大が用いる5バックは「5-4-1」とも「5-2-3」とも表現できる形だが、守備から入り、前に勢いよく出ていくという彼らのコンセプトに適しており、海老沼秀樹監督が起用する選手の適材適所での特徴にもフィットしている。

「前向きにボールを奪いたいという意図があり、そこで奪って素早く攻撃をするという。また前にヘディングの強い選手がいますので、そういう形を効率的にするためにはそうすればいいかと」(海老沼監督)

 テクニックに優れる一条との試合は、最後に追いつかれてPK戦になったが、手堅い守備と推進力のある攻撃が機能しており、2つの得点も1トップに張る野澤をターゲットにサイドの選手が前を向くという形から生まれた。2回戦の米子北戦では、両サイドバックがより守備的に対応していたが、彼らの対応が一条に対して少し甘くなったところで失点につながったのは反省材料だろう。ただいい守備からいい攻撃につなげるという方向性を基本線に、相手や展開に応じて両サイドバックが攻守のバランスを変えることで、大きく形を変えずに調整しやすいのも現システムの特徴となっているようだ。

「もともとディフェンス3枚で『3-4-3』みたいなイメージですけど、守備時はサイドの選手が下がり気味になりますので、5枚となります」と海老沼監督が説明するシステムを導入したのは夏のインターハイ予選で県内のライバルである矢板中央に敗れた後だったという。「インターハイの時は『4-4-2』だったんですけど、負けた後にこれじゃダメだということで、ああいうフォーメーションになって、うまくフィットした」と語るのは先制点を決めた左サイドバックの梅澤だ。2点目をクロスでアシストした右の小澤亮祐とともに、豊富なアップダウンでチームを支える生命線というべき存在だ。

 屈強でフィード能力のある3人のセンターバック、推進力が高く運動量の豊富な左右のサイドバック、バランス感覚に優れた2枚のボランチ、前からの守備と飛び出しを兼ね備えた左右のシャドー、そして前線でボールをキープでき、ヘディングの強い1トップという組み合わせが見事にはまる形だ。J内定選手やU-19代表候補など突出したタレントがいるわけではないが、粒ぞろいの選手たちが役割意識を担う佐野日大は、攻守に高い機能性を発揮する5バックをベースに、さらなる高みを目指していく。

(試合後コメント)

佐野日大
海老沼秀樹監督
今日はいろいろ反省があるんですけど、生徒が精一杯やってくれた結果なので、修正して試合できる喜びを感じたいです。(追い付かれてのPK戦は嫌な流れ?)そう思っちゃうと、そう流れが行ってしまうので、絶対そう思わないようにと伝えました。かなり前(98年)ですけどPK戦でベスト8に行ったときは、そういう苦しい試合をして勝ち上がったので、君たちは後輩なので絶対にできると送り出しました。(PK戦の順番は)選手たちが決めてやりました。(PKストップは)キーパーコーチがしっかりトレーニングしてくれたおかげです。(5-4-1は)狙いとしては前向きにボールを奪いたいという意図がありますので、そこで奪って素早く攻撃をするというのを狙っています。一人一人は劣る子が多いんですけど、みんなの力を合わせてやろうと思っていますので、1人で守れなかったら2人、2人で守れなかったら3人という形で、後ろにだんだん人数が行ってしまったということです。(システムは)いろいろ春先から4-4-2であったり、4-1-4-1であったり、試しました。ただそれはシステム上の並びであって、危なかったらゴール前に帰ればいいし、チャンスだったら上がっていけばいいことです。ピンチを感じる力やチャンスを感じる力を選手が感じで行動してくれれば、おのずとゴール前に10人だったりという形にもなるので。失点は相手が気迫で上回って取られたと思っていますので、今度はその気迫を自分たちの力にしてがんばっていければと思います。

3番 梅澤崚
(先制点のシュートは)難しい状況だったんですけど、打てば入るかなと思ったので打ちました。前を向いたときには入っていたのでよかったです。(浮き球は)練習はしているんですけど、入ったことは少なくて、一か八かというというところもあったんですけど、チャレンジすれば入るんだなと思いました。(PK戦の最初に失敗したが)右を蹴ったつもりだったですけど、コースが甘かったです。緊張はしていなかったというか、1番に蹴るというのは自分が決めなきゃいけないという気持ちはありました。外しましたが、(GK中村)一貴がいたので、そんな泣くまでいたらなくて冷静でいられました。(5-4-1のシステムは)自分がサイドで攻めも守りもできれば周りの人が楽になるだろうし、でも自分も攻めたいです。攻めも守りもできるのは楽しいですし、自分にも合っていると思います。インターハイのときは4-4-2だったですけど、負けた後にこれじゃダメだということになって、ああいうフォーメーションになって、うまくフィットしたなと思います。

7番 野澤陸
周りは前を向いたらどんどん追い越してくれるので、そういう選手を簡単に使っていこうと思いました。(5-4-1は)最初は守備ばっかりで難しかったですけど、やっていくうちに自信がついて、県大会も取れて、自分たちの自信になったと思います。(前を向かせるプレーは)自分がそういうことをやることで、周りの選手が楽に攻撃できるので、それは自分しかできないことなので、しっかりやっていきたいです。周りからは点取れとかいわれるんですけど、コーチ・監督から求められることは違うので、周りを生かして、チャンスがあれば自分も点を取りにいきたいです。まだまだ負けている部分が多いので、100パーセント勝てるようにもっと体を張りたいと思います。試合をやるごとに自信がついてきています。

ストライカーDX高校サッカー特集ページ

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