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後輩に託した全国1勝の先…屈辱から這い上がった遠野・主将が示した姿勢

2017.01.03

ドリブルで仕掛ける遠野の主将・千田夏寅 [写真]=兼子愼一郎

 岩手県勢として9年ぶりとなる選手権での勝利を手にした遠野の今季は、屈辱から始まった。昨季の選手権では、初戦で東福岡と対戦。後に頂点まで駆け上がった強豪を相手に攻守両面で歯が立たず、0-3の大敗を喫した。今季の主将であるMF千田夏寅は当時を知る選手の一人。「東福岡のレベルを感じて、1年間常にそこを基準にやってきた」と振り返るように、大会を終えてからはキックやトラップの質、味方への声などこれまでと同様の練習ながらも、クオリティーを東福岡に少しでも近づけるため意識を高めた。もちろん千田一人だけが意識を高めるだけでは、チーム全体の質は上がらない。時には厳しい言葉も交えながら、周囲の選手にハッパをかけて、全国での一勝を目指した。

 インターハイこそ代表校の座をライバルである盛岡商に譲ったが、夏以降チームは急激に力をつけ、4年連続となる選手権出場を達成。シードのため初戦となった2回戦では松山北から2点を奪い、念願だった選手権での白星を手にした。この日の3回戦も、前日の勢いのまま勝利を目指したが、開始わずか2分でCKから先制点を献上してしまう。「相手は3試合目なので、後半20分すぎて足が止まるとみていた。選手にはそこから勝負だと伝えていた」(長谷川仁監督)との読み通り、試合終盤は決定機を作ったが、同点弾は奪えず、0-1で試合終了の笛を聴くことになった。

「チャンスはあったけど、決めきることができなかった。そこをきっちり決めてくるのが全国のチーム」。そう千田が口にしたように、一歩前進した先にはまた新たな課題が待っていた。もちろん悔しさもあるが、第一目標であった初戦突破を果たした喜びもあり、千田は「全国で2試合続けて試合ができることが新鮮だった。タフな日程でしたが、本当に勝ちたい気持ちでいっぱいだったので疲れも感じなかった。最後、押し込んでいる時は楽しさもありました」と口にする。

「後輩たちには勝負どころの強さを身につけてほしい。最初のCKは大事なので、今日みたいに失点しないでほしいし、緊張感のある試合でもチャンスを決めきってほしい。来年は1つだけでなく、2つ勝ってほしいと伝えました。練習から試合の緊張感を持ってやらないと、いざこういう緊張感のある試合になると発揮できないので頑張ってほしい」。そう千田が口にしたように歴史を塗り替えた偉大な3年生は、後輩たちに全国1勝の先を託し、高校サッカーの舞台から旅立った。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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