東福岡のサイド攻撃が実り、守備を固める東邦を撃破

前回大会王者の東福岡は3回戦に進出した [写真]=鷹羽康博

取材・文=鈴木智之(提供:ストライカーデラックス編集部)

 前半からJ内定3選手を擁する優勝候補、東福岡が主導権を握る。両サイドから精度の高いクロスを送り、ワントップの藤井一輝がフィニッシュに持ち込む。対する東邦はキャプテンのセンターバック・小出晴貴、190センチのセンターバック・アピアタウィア久を中心に跳ね返す。均衡が破れたのが、後半16分。小田逸稀のクロスに藤井一輝が頭で合わせ、東福岡が先制する。その後もボールを支配し、主導権を握った東福岡が東邦のシュートを0本に押さえ込み、1-0で勝利した。

 東福岡の攻撃といえば、“伝家の宝刀”サイドアタックである。4-1-4-1のシステムでピッチを広く使い、両ウイングと両サイドバックが積極的に攻め上がり、クロスボールをゴール前に供給する。

 この試合、唯一のゴールもサイドアタックから生まれた。鹿島アントラーズ加入内定のサイドバック・小田逸稀がゴールライン際まで攻め上がり、ゴール前にクロスを入れる。そこに飛び込んできたのが、ワントップを務める藤井一輝。クリアしようとした東邦キャプテン・小出晴貴と競り合いながら、ヘディングシュートを突き刺した。

 前半にも青木駿、高江麗央といったアタッカーがサイドからのピンポイントクロスで決定機を作っており、森重潤也監督が「サイドの仕掛けはこだわりを持ってトレーニングしてきた。それが結果につながったことはよかった」と語るとおり、中央を固める東邦守備陣の攻略法として、サイド攻撃は有効だった。

 東福岡のサイド攻撃のポイントは、3人が連携するパスワークにある。ボールの動かし方の例を挙げると、ひとりがタッチライン際で中央を向いてボールを持つ。そして、ワントップの藤井やインサイドハーフの藤川虎太朗、鍬先祐弥、高江など中央にいる選手にクサビのパスを入れ、彼らが後方にいる別の味方に落とす。このとき、最初にクサビのボールを入れた選手が「3人目の動き」となり、前方へ駆け出していく。落としのボールを受けた選手は、前線へ走り込むこの「3人目の選手」へパスを通すという流れだ。

 1人目の選手がボールを真横に、2人目の選手が後ろへ動かすことで、相手守備陣の視線を混乱させ、3人目の選手がフリーになるタイミングとスペースを作る。非常にオートマチックな動きであり、クサビのボールを受ける際の身体の向き、ボールを繋ぐ角度、走り出すタイミングなど、入念にトレーニングされている様子がうかがえる。

 試合後、決勝アシストの小田が「今日は両サイドから崩すことができた。相手がサイド攻撃を嫌がっていたので、何度もチャレンジした」と話していたが、スピードとテクニックがあり、連携のとれたサイド攻撃を止めるのは至難の業だ。

 東福岡の3回戦の相手は、同じ九州の鹿児島城西に決まった。2回戦では強力な攻撃陣を擁する長崎総科大附属に対し、徹底して自陣ゴール前を固めることで無失点に抑えたチームである。はたして、九州屈指の「矛」と「盾」の対決はどちらに軍配が上がるのか。楽しみな一戦になりそうだ。

(試合後コメント)
東福岡
森重潤也監督
初戦を突破できてほっとしています。相手が守備重視のチームだとわかってはいたのですが、前半はしっかり守られてしまい、相手ペースなのかなと感じていました。ハーフタイムには、先取点が欲しかったので、チーム全体でアグレッシブに行こうといいました。(大会連覇に向けて)目の前の一試合をしっかり戦っていくことが、最終的に目標にたどり着く方法だと思います。先ばかりを見ずに、足元をしっかり見ておかないと(初戦敗退した)インターハイの二の舞になってしまう。そこは気をつけているところです。

9番 藤井一輝
得点場面はGKの前で触ることを意識しました。今後も積極的にゴールを奪って、チームの勝利に貢献したいです。大会連覇のためには、一試合、一試合、目の前の試合をしっかりと戦うことが大事だと思っています。

10番 藤川虎太朗
初戦で緊張もあり、いつもどおりのプレーができませんでした。体のキレがなく、頭が止まってしまい、次のプレーが遅れてしまいました。後半になるとボールも回り出して、1点取ってから落ち着きました。

東邦
横井由弦監督
ゲームを壊さないために、早い時間の失点は避けよう、前半の入りが大事だという話はしました。前半はなんとか踏ん張れたのですが……。今年のチームは、耐えて耐えての繰り返し。負けてベストゲームというのも変かもしれませんが、最後まで自分たちの力を信じて、戦ってくれた選手たちを誇りに思います。

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