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【コラム】北川航也から受けた刺激…筑波大MF西澤健太にあふれる“古巣”清水への思い

2016.12.20

インカレ決勝で2ゴールをマークした西澤 [写真]=梅月智史

 自分を奮い立たせてくれる、かつての仲間がいる。彼らがいる世界を目指してサッカーに励む筑波大学の2年生MF西澤健太は、今大会を経てその舞台に一歩近づいた。

 清水エスパルスのアカデミーで育った西澤にとって、現在プロ2年目のFW北川航也(清水)らはかつてのチームメイト。ユースからトップチームへの昇格を果たし、自分よりもずっと先を歩む彼から受けた“ある言葉”が、西澤の胸に突き刺さった。

「大学サッカーでもっと余裕がなければ、プロになってもうまくいかないよ」

 12日に行われた第65回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)2回戦の筑波大vs関西大学戦。会場で観戦した北川から、試合後にそう告げられた。

「自分に足りないものを補うため」に進学した筑波大で、西澤は1年時から試合出場を重ね、目標であるプロ入りに向けて順調に進んでいると思っていた。しかし、より厳しい世界に身を置く北川の言葉は、衝撃的なまでに心に響いた。

「本当にグサっときた。今年、天皇杯で(北海道コンサドーレ)札幌と対戦した時もプロのレベルの差を実感していたし、その言葉どおりだと思った」

 その後、筑波大はトーナメントを勝ち上がり、18日に迎えた決勝の日本体育大学戦。北川が再び観戦に来てくれると聞いていた。何としても目に見える結果を残したかった西澤は、前日に「普段はほとんど見ない」という高校時代のプレー映像を見返した。

「普段はイメージトレーニングもほとんどしないけど、このインカレで全然結果を残せていなかったので、何かを変えなければと思って高校時代の映像を見たら、ヒントになるものがあった」

 左サイドハーフで先発出場した西澤は、呼び覚まされた得点能力を発揮した。28分、味方が相手から奪ったこぼれ球を拾い、左足一閃。36分には、右サイドからのクロスに頭で飛び込み、チームを勢いづける2点をマークした。

「高校の時はヘディングが得意で結構点を取っていたけど、大学に来てからは練習試合を含めてもほとんどなかった。前日に映像を見たことがうまくハマったと思う」

 チームはその後6点を追加し、8-0の圧勝でインカレを制覇。西澤は大会ベストMF賞に輝き、「正直こうなるとは予想していなかったので、“持ってるな”という感じ」と笑顔を見せた。

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“古巣”清水に対する憧れの気持ちは、今も薄れてない。「1年生の時は『帰りたいな』くらいの気持ちだったけど……」。そこから決意を新たにしたのは今年。クラブ史上初のJ2を戦うチームと、そこで奮闘する北川らの姿を目にし、愛するクラブへの思いはより一層強くなった。

「J2に落ちて、同期が頑張る姿を見た時に『自分は何をしているんだろう』と思った。自分もエスパルスに帰って活躍して、エスパルスを強くしたい。そう思いながらこの1年間取り組んできた」

 清水を離れて2年目となる今も、テレビで試合映像を見たり、出先で結果速報をチェックすることは欠かさない。「2年後と言わず、特別指定選手としてでも早く活躍したい」と思いはあふれるが、今のままでは実力が伴わないこともしっかりと理解している。

「セットプレーやパス、クロスの部分では少しは貢献できるかもしれないけど、ドリブルやシュートの精度はプロに全く届いていない。今も練習中なので、これからしっかりと身につけてプロの舞台で戦えるようになりたい」

 プロサッカー選手にまず求められるものは結果。北川から強烈な刺激を得た西澤は、インカレ決勝の舞台で2得点と躍動し、一歩そこに近づいた。だが、目指すゴールはもっと先にある。

「今日の結果は自信になるけど、ここからが大事。僕には目指すべき存在、帰りたいチームがある。それは本当に嬉しいことで、そこに向けて努力するだけ」

 身近な目標であるかつての仲間をリスペクトしながらも、はっきりと視界に捉えている。いつかまた同じユニフォームを着て、愛するクラブを強くする。まっすぐに突き進む西澤の進化は、まだまだ止まらない。

文=平柳麻衣

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