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本領発揮できず涙…日体大の左サイドコンビDF高野遼&MF高井和馬「次は代表で」

2016.12.20

ともに来季プロ入りする日体大のDF高野(左)とMF高井 [写真]=岩井規征

 これが最後ではない。学生最後の大会は悔し涙をのむ結末となった。しかし、大学屈指の左サイドコンビは、ピッチでの再会を誓って新たな道を歩み始める。

 日本体育大学の左サイドバックを務める高野遼と、左サイドハーフの高井和馬。二人は1年時から授業でもプライベートでも多くの時間をともに過ごしてきた。3年時からは鈴木政一監督の指導を受けた。かつてジュビロ磐田や年代別代表を率いた経験のある指揮官が求める選手像は、「オールマイティ+スペシャリスト」。名将の指導を受けながら切磋琢磨した彼らは、最上級生となった今季、大学サッカー界で一際輝きを放った。

 圧倒的なスピードと正確な左足のキックが持ち味の高野に対して、「あそこまで攻撃的に来るサイドバックはいない」と他大学の選手が恐れる声を聞いたのは一度ではない。一方、攻撃を司る高井は、今季リーグ戦で14ゴールを記録し、MFながら関東大学1部リーグ得点王を獲得。二人は「頼りになるし、お互いに生かしあえるのですごくやりやすい」とコンビネーションも抜群で、チームのリーグ戦3位入賞に大きく貢献した。

「日体大の左サイド攻撃が大学ナンバーワンだと見せつけたい」

 その思いを持って臨んだ第65回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)。だが、理想通りにはいかなかった。

 開幕2週間前の練習中に高野が左足首を負傷。痛み止めを服用しながら2回戦の静岡産業大学戦に強行出場したが、患部を悪化させ、61分に交代で退いた。その後は準々決勝、準決勝を欠場。「一度冷静になって(2回戦の出場を)我慢すれば、準決勝あたりでしっかりと復帰できたのかなと思う」と反省を残しながらも、仲間を信じて決勝に向けて調整を続けた。

 そして迎えた18日、筑波大学との決勝戦。高野は先発メンバーに名を連ねたが、今度は高井の姿がなかった。準決勝の後半アディショナルタイムに値千金の決勝ゴールをマークした高井だが、直前のプレーで今大会2枚目の警告を受け、決勝戦の出場停止が決まっていた。

 大一番を絶対的エース抜きで戦わなければならなくなった日体大。高井はピッチに立てない悔しさを胸に押し込み、自分にできることに努めた。決勝前日の練習ではチームの雰囲気作りに徹し、仲間に熱いメッセージをLINEで送った。試合中は自らメガホンを持ち、大きな声で味方を鼓舞した。

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 高野はそんな高井の思いを背負ってピッチに立っていた。

「長文のLINEをもらいましたし、試合中もあいつの声がすごく聞こえてきて、『絶対にやらなきゃいけない』と思っていた」

 高野は12分にクロスバーを直撃する強烈なシュートを放つなど、積極的な姿勢を見せる。しかし、チャンスを作りながらもエースを欠く日体大は、得点を奪えないままスキを突かれて失点を重ね、0-8の記録的大敗で準優勝に終わった。

 決勝戦後、高井は「本当に出たかったし、『僕がいれば』と自分でも思う」と胸中を明かした。エースとしての自覚と責任感、そして大舞台でも結果を残せる自信は持っていた。

“相棒”のいないピッチで奮闘した高野は、高井の心情を思いやりながら、こみ上げる悔しさをこんな言葉で消化した。

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「逆に僕たち二人がそろっていたら、日体大はどうなっていたんだろうってみんなに思ってもらえたら」

 二人がそろっていたら――。思いを持ち越す先はプロの舞台だ。高野は横浜F・マリノスへの加入が内定。高井も加入先は未発表だが、来季のプロ入りを決めている。

「次は日本代表でコンビを組みたい」と高井。名将・鈴木監督の下、「プロで通用する選手」になるべくサッカーに励んだ彼らなら、その夢を実現させる可能性を十分に秘めている。

“大学屈指の左サイド”から、“国内屈指の名コンビ”へ――。再び二人で左サイドを躍動する日が来ることをを信じて、高野と高井はそれぞれの道で成長を遂げる。

文=平柳麻衣

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