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“ヒガシのイニエスタ”藤川虎太朗「2秒に1回は周りを見る」

2016.01.12

チーム4点目を決めた藤川虎太朗[写真]=兼村竜介

 第94回全国高校サッカー選手権大会決勝、國學院久我山戦では36分に三宅海斗の先制点をアシスト。「パスをもらう前にあそこ(三宅の位置)を見ていた」。さらに70分にはタイミング良くエリア内に走りこみ、児玉慎太郎のマイナスのクロスに合わせてチーム4点目となる「イメージどおり」のゴールを決めた。

 東福岡の2年生MF、藤川虎太朗の持ち味は「相手の動きを見ながら自分のポジションを変えて、相手にとって嫌なところを突く」こと。この試合のアシストとゴールは、憧れのアンドレス・イニエスタバルセロナ)をほうふつさせる絶妙なポジショニングと正確なキックから生まれた。ちなみに両者を比較すると、ともに上背はなく、やや細身と、体格的にも通じる部分がある。

 夏のインターハイで5得点を挙げて得点王に輝いた攻撃的MFは、9月に右足首を捻挫してチームを離脱。本来のパフォーマンスを取り戻すまでに時間を要した。「ケアしながらやってきて、引きずってしまった」(藤川)。それでも選手権準決勝の星稜戦でスタメンに復帰すると、さっそく貴重な先制点をマーク。続く決勝でも1ゴール1アシストと期待に応えるパフォーマンスを見せ、有終の美を飾った。

 もっとも、藤川の高校生活はここで終わったわけではない。“夏冬連覇”の偉業達成によって、東福岡は追われる立場となった。藤川は「先輩にプレッシャーをかけられた」と苦笑いしながらも、「そのプレッシャーを打ち砕かないと、もっともっと上の選手にはなれない」と気を引き締め、さらに「死に物狂いで3冠(インターハイ、高円宮杯、選手権)を取りに行く」と新たな目標を掲げる。

 最高学年となる2016年は“2つのスタミナ”の強化に取り組む。一つは体力面のスタミナ、もう一つは「頭のスタミナ」だ。「疲れて頭が働かなくなると、周りが見られなくなるし、声が出なくなるし、セカンドボールの予測もできなくなる。常に頭を回転させるスタミナがほしい」。中盤中央に君臨する藤川は絶えず全方位を見渡す必要があり、「2秒に1回は周りを見ている」。特長であるポジショニングの良さは、この視野の広さあってのものだ。

 バルセロナにおけるイニエスタのゲームメークのように、藤川のポジショニングセンスを活かした組み立てや崩しは、チーム浮沈のカギを握るだろう。2014-2015シーズン、イニエスタがバルセロナで“3冠”を成し遂げたように、“ヒガシのイニエスタ”は東福岡に3冠をもたらすことができるか。寸刻の休息を経て、東福岡の、そして藤川の勝負の1年が始まる。

文=安田勇斗

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