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元Jリーガー、中京大中京・岡山監督が語る高校サッカー…人間育成の大切さ

2016.01.04

中京大中京を率いる岡山哲也監督 [写真]=瀬藤尚美

 3日に行われた第94回全国高校サッカー選手権大会3回戦で、愛知県代表の中京大中京高校は0-1で前回王者の石川県代表・星稜高校に敗れた。

 中京大中京高校は、現役時代“ミスター・グランパス”と呼ばれた岡山哲也監督が名古屋グランパスからの出向として2011年から率いており、5年で3回の全国切符を手にしている。プロスポーツから高校教育へと活躍の場を移した岡山監督は、「部員は83名いますが、日々色が違う。学校で、サッカー部で起こりうること含め、トータルで見て毎日が違う色、そう思います」と高校サッカーの難しさや面白さについて問われ、そう答える。

「高校サッカーは独特な世界」と表現する岡山監督は、育てた選手がプロになってくれることを願う一方で、「部員が83名いて5、6人の選手はプロを目指します。だけど、それ以外の子たちは大学に入り、社会人になる。僕自身はサッカーを通じて社会に出た時の頑張り方を伝えたいと思うし、高校サッカーを通じて、プロを目指さない子たちにもいい思い出を作ってあげたいと常々思いながらやっています」とも話す。

 その岡山監督の思いを表すエピソードも明かしてくれた。一つは選手権の登録メンバー30名を選考する際にマネージャーを加えたことだ。

「一人マネージャーがいるんですが、3年間で一番頑張ったんです。だから一番いい思い出を残してほしいという思いで、メンバーに入れて開会式で旗を持たせました。これでメンバーに入れなかった3年生が何人かいますけど、彼らの代表として選びました。そういうことは彼らに伝えたいし、わかってくれたらいいと思います」

 もう一つは主将のMF石川将暉を星稜戦の残り10分で起用したこと。石川は本大会前にハムストリングスの肉離れによりチームを離脱。「出られたことが奇跡だった」と岡山監督が言うほどの状況だったが、「最後は託す思いで彼を投入しました。プロ選手なら絶対に出さない。でもこれが高校サッカーのいいところで、最後に懸ける思いが回復力を早くして、最後ピッチに立てた」と話せば、起用された石川も「お前の高校サッカーはこれで終わりだから、後悔のないようにやってこいと送り出してもらえて。自分としてもこの3年間、岡山監督に捧げてきて。その監督にそう言ってもらえた時は、涙が出そうなくらい嬉しくて、最後の最後まで自分らしくやれて、後悔のない3年間だったと思います」と、岡山監督からの思いを受け止めている。

 その石川は卒業後の進路について大学に進むものの、「サッカーをやるかは迷っている」とコメント。小学校の教員を目指していることを明かしてくれたが、「プロの選手を育てる役割を担いたいなと思っています。自分がここまで成長できたのは、間違いなくサッカーがあったからなので。自分が得た経験を、将来を担う下の世代にしっかりと教えて、サッカーの楽しさや、サッカーは人を成長させてくれるという自分が学んできたことをしっかりと伝えられたらいいなと思います」と、試合後にも関わらず、力強くハッキリと明るい表情で話してくれた。

 岡山監督は星稜戦後の最後、このように語ってくれた。

「60歳になってもサッカーが好き、サッカーに携わる仕事をしている子たちを育てたいと思っています。プロを何人育てたかというのもいい指導者かもしれませんけど、今回出場した部員10数名以外の70名が岡山の指導のもと、中京大中京でよかったと思ってくれる子を一人でも多く育てるのも、いい指導者だと思います。どちらかと言えば、これが高校サッカーじゃないかと」

 サッカーを通じて“選手”ではなく“人”を育てることが将来、サッカー文化の拡大につながることは間違いない。

文=小松春生

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