対人守備の強化で野洲を圧倒…テクニック集団・聖和学園で異彩を放つDF釼持雅也

 DFラインが頻繁にポジションチェンジをする聖和学園高校において、左サイドバックの釼持雅也の存在は、チームにとって欠かせないものとなっている。初戦の大一番、野洲高校戦においても、彼の存在感は際立っていた。

 左サイドバックとして積極的なオーバーラップを見せる一方で、「センターバックがサイドから持ちこんだら、センターバックのポジションに入って、ラインをコントロールし、後ろを空にしないように意識している」と、判断よく入れ替わって、最終ラインを幅広くカバーし続けた。そして、野洲のキーマンであるFW村上魁とMF林雄飛のホットラインに対しては、「元々、球際には自信があったので、あの2人に自由を与えないことを意識した。一対一は相当鍛えた」と高い対応力を見せた。

 この裏には大会直前に集中的に取り組んだ練習の成果があった。聖和学園は今、同校OBで現在はモンテネグロリーグで活躍する有光澪が、臨時コーチとしてチームに加わっている。テクニックとスピードのある有光と、全体練習後に毎日のように一対一のトレーニングに打ちこんだ。「村上選手や林選手に振りきられないように、意識してやった」(釼持)ことが、この大一番で花を開いた。

 この踏ん張りもあり、チームはけがから復帰したエース谷田光の2ゴールを含め、前半だけで3-0とリードを広げた。そして迎えた47分には、ペナルティーエリア左でMF木部大嗣がフェイントで相手DFを揺さぶる間、猛然とダッシュしてフォローに入る。木部のドリブルがDFに当たったこぼれ球をトップスピードで拾ってペナルティーエリアに進入すると、相手のファールを誘い、PKを獲得。このPKを自らがきっちりと決め、試合を決定づける4点目を挙げた。直後にオウンゴールをしてしまったが、これは彼を責めることはできないシーンだった。終ってみれば7-1の圧勝。勝利に大きく貢献した釼持だったが、試合後、喜ぶ選手たちにこう声をかけた。

「浮かれるな!次が戦いだぞ。切り替えろ!次が大事なんだからな!」

 彼の魅力は攻守に関わる力だけでなく、その人間性にある。物事に対し、常に率先して取り組み、個性的な選手たちを副キャプテンとして声でまとめあげる。象徴的だったのは、4点目を挙げた時、ベンチに駆け寄って、控え部員一人一ひとりとハイタッチをした場面。

「僕の存在はチームだと『異質』。泥臭いプレーと声でチームを引き締めていきたいと常に思っている。ハイタッチをしたのも、『全員で戦っているんだ』ということを伝えたかったからです」

 テクニック集団・聖和学園の中で、異彩を放つ釼持雅也。次なる戦いでも、彼の存在はチームの大きな支えとなるはずだ。

文=安藤隆人、写真=高見直樹

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