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大舞台での弱さを払拭する2得点…チームを救った青森山田の背番号7・高橋壱晟

2016.01.01

「あいつがこの大舞台で決めてくれたのが大きい」

 試合後、正木昌宣コーチが笑顔を見せたように、試合をひっくり返した2年生MF高橋壱晟の2発は、チームを救っただけでなく、スタッフ陣も大きな手応えを感じるものであった。

 それはなぜか。彼は青森山田中学時代からずば抜けた攻撃センスを誇り、正確な足元の技術とパスセンスで攻撃を操ってきた。高校に上がると、2年生になった今年から10番と並んでチームのエースナンバーである7番を託された。黒田剛監督が彼に7番を託した理由には、「あいつが攻撃の中心になって、試合を決めるプレーをしないといけない」と、大きな期待があった。

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2015プレミアリーグEASTでは攻守に関わり続け、バイタルエリアに顔を出しては、重要なところで点を奪ってきた。しかし、「舞台が大きくなると、萎縮するというか、プレーに怖さがなくなってしまう。もっと堂々とやればもっと上で通用するようなレベルなのに。もったいない」と、トーナメントや注目度の高い試合で力を発揮できないでいた。

 それだけに1年間で一番大きな舞台での彼の活躍は、チームにとっても待望するものであった。黒田監督や正木コーチを始め、スタッフ陣が彼の奮起を期待して声をかけても、やはり最後は自分次第。殻を破るには、彼自身がやらないといけない。

 そして、迎えた大社高校との初戦。いきなり2点のリードを許し、窮地に立たされたチームにおいて、背番号7が躍動を見せた。1-2で迎えた56分、途中出場のMF田中優勢が落としたボールを受け、ドリブルを仕掛けると、「シュートコースが空いているのが見えた」と、ワンテンポ溜めてから、冷静に右足を振り抜いた。強烈なシュートはゴールに突き刺さり、同点ゴールを生みだした。

 さらに62分にはショートカウンターから糸を引くようなスルーパスをMF神谷優太に通し、チャンスを演出。迎えた後半アディショナルタイム2分には、DF原山海里のロングスローをファーサイドで受けて、左足一閃。劇的な逆転弾を叩きこんだ。

「正直、最初は緊張で地に足がついていなかったけど、徐々に堅さが取れていった。積極的に仕掛けられたし、シュートは冷静だった」。スタッフ陣が待ち望んでいた『大舞台での活躍』。これで彼自身も殻を破る手応えをつかんだはず。だが、まだ打ち破れてはいない。例えるなら、少し『ヒビ』が入っただけ。この『ヒビ』を広げられるかは、今後の彼の活躍に懸かっている。

 殻を突き破れ――。

 高橋壱晟の成長への道のりはまだ始まったばかりだ。

文=安藤隆人、写真=高見直樹

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