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ユース教授のインターハイ2015全校紹介 vol.2~関東・北信越

2015.07.29

今大会の優勝候補筆頭と評される市立船橋

文・写真=安藤隆人

 夏の風物詩、インターハイが間近に迫ってきた。今年は8月2日から9日まで兵庫県で開催。真夏の王者をかけた決戦を前に、“ユース教授” 安藤隆人氏が出場全55校を紹介する。

【関東】佐野日大(栃木)3年ぶり9回目
 矢板中央とのライバル決戦を気迫で制し、代表権を手にした。今年から同校OBで、かつて一度指揮を執っていた海老沼秀樹監督が復帰。新たなスタートを切った。

 ポイントとなるのが、岩木艦(3年)と長崎達也(2年)の2トップだ。「全国ナンバーワンストライカーになりたい」と強い意志と目標を持つ岩木は、フィジカルが強く、キープ力と突破からのシュートに長け、長崎は豊富な運動量とゴール前の鋭い嗅覚が武器。個性の違う2人が絶妙なコンビネーションを見せる。余談だが、海老沼監督のフィジカルは体幹がしっかりしており、選手顔負けのアスリート体型だ。

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【関東】流通経済大柏(千葉第1)2年ぶり12回目
 昨年のインターハイ予選では、2003年から11年連続で本大会出場をしていたが、準決勝で習志野に1-2で敗れ、連続出場はストップ。それだけに今予選にかける意気込みは凄まじかった。準決勝では昨年同様に習志野と激突。この一戦で凄まじい気迫を見せ、2-0で制し、インターハイ出場権を掴むと、決勝ではライバル・市立船橋との接戦を3-2で制し、優勝を手にした。泣く子も黙るパワーとスピードで、攻守において隙の無いサッカーを展開する、全国トップレベルの強豪は、このチームほどスタメン予想が難しいところは他に無い。毎年、毎試合のようにスタメンが代わり、これまで出ていなかった選手がスタメンに抜擢されたり、ずっと出ていた選手がベンチに回ったりすることは日常茶飯事。それだけチーム内競争が熾烈で、個々のレベルが高いのが伺える。

 例えば、プレミアリーグでは、昨年度の選手権ベスト4の原動力となったGK瀬口隼季(3年)がベンチで、GK高井悠貴(3年)がゴールマウスを守っているが、インターハイ予選準決勝ではGK鹿野修平(1年)を大抜擢。本当に誰が出るか分からない。MF菅原俊平(3年)、鈴木豪(3年)、昨年のレギュラーのセンターバック本村武揚(3年)、黒澤丈(3年)と屋台骨となっている選手ですら、レギュラーの座は安泰ではない。層の厚さがずば抜けている彼らが、すさまじい生存競争を行う。そこを勝ち抜いた11人が、常に危機感を持ってピッチに立っているのだから、相手にとって脅威以外何物でもないだろう。それが流通経済大柏たる所以だ。

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【関東】明秀日立(茨城)3年ぶり2回目
 群雄割拠の茨城を制したのは、3年ぶり2度目の優勝を果たした明秀日立だ。つい最近までは茨城と言えば、鹿島学園と鹿島高の鹿島勢と、水戸啓明(前 水戸短大附属)と水戸商の水戸勢が熾烈な代表争いをしていた。だが近年、第一学院(前 ウィザス)と共に頭角を表してきたのが、明秀日立だ。

 3年前のインターハイで全国大会初出場を果たすと、昨年はインターハイ予選決勝で鹿島学園に敗れた。今年も準決勝で第一学院を延長戦の末に3-2で下すと、決勝では水戸商を1-0で下し、昨年の雪辱を果たした。センターバック石川慶人(3年)、MF吉田知樹(3年)が攻守の軸となり、ここにMF前川尚梧など楽しみな2年生がフィットし、総合力は高い。今大会の台風の目となれるか。

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【関東】市立船橋(千葉第2)3年連続25回目
 間違いなく今大会の優勝候補筆頭だ。プレミアリーグイーストでは第6節終了時点で4勝2分の負け無しの2位。インターハイ予選こそ決勝で流通経済大柏に敗れたが、これはもう全国大会の決勝と言っていいカード。現に2年前の福岡インターハイでは決勝でぶつかり合い、FW石田雅俊とDF磐瀬剛(現在はともに京都サンガF.C.)を擁した市船が優勝を手にしている。

 今年のチームは、FW永藤歩(3年)、高宇洋(2年)の縦関係の2トップが攻撃の看板となっている。ボランチの椎橋慧也(3年)、センターバック杉岡大暉(2年)と、センターラインに軸となる選手がおり、さらにサイドは個性的な選手を揃える。MFは正確なキックを操る左の工藤友暉(3年)、推進力のある右の西羽拓(2年)、サイドバックは攻撃力のある左の古屋誠志郎(3年)と右の真瀬拓海(2年)が配置され、両サイドから鋭い攻撃を見せる。目標はズバリ2年ぶりの優勝。「常に『市船プライド』を持ち続けている」(朝岡隆蔵監督)。泣く子も黙る名門中の名門に油断と慢心という言葉はない。

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【関東】桐生第一(群馬)8年ぶり3回目
 快進撃の予兆はあった。1月の新人戦では準決勝で前橋商を、決勝で選手権準優勝の前橋育英を破って優勝。センターバック一宮憲太(3年)、田沼和樹(2年)、ボランチの井上翔太(3年)、島田祐輔(3年)、FW今泉祐哉(3年)、滝沢昴司(3年)など、センターラインが強固なチームは、この結果で自信を掴むことができた。勢いがついた彼らは、今予選でも準決勝で前橋商を1-0、決勝では前橋育英を2-0で下し、8年ぶり3回目のインターハイ出場を手にした。

 今予選は4試合を戦って無失点と、守備が安定し、攻撃陣も毎試合得点としっかりと結果を残した。中でも滝沢昴司とMF滝沢和司(3年)の双子の兄弟のコンビネーションは一見の価値あり。全国でもこの安定感を披露して、昨年の前橋育英の成績(ベスト4)以上を狙う。ちなみにOBにはリオ五輪予選に挑むU-22日本代表FW鈴木武蔵アルビレックス新潟)がおり、女優の篠原涼子の出身校でもある。

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【関東】桐光学園(神奈川第1)3年ぶり12回目
 昨年の悔しさから這い上がるために。今年の桐光学園は相当な覚悟を持って、今大会に挑む。昨年の選手権予選3回戦、日大藤沢と対戦したが、試合終了間際に相手のエースである田場ディエゴ(現 国士館大)に決勝ゴールを決められ、涙を飲んだ。その日大藤沢が全国ベスト4に進む姿を見て、「今年は日藤以上の結果を残す」と、チームの意思統一ができている。

 U-18日本代表FW小川航基(3年)は、今大会注目の一人。個の力で打開し、ゴールをこじ開けられるストライカーだが、周りにはFWイサカ・ゼイン(3年)、MF桑原孝太郎(3年)、鳥海芳樹(2年)、桑原遥(2年)と、攻撃センスの高い選手が揃っており、彼らが織りなす攻撃の破壊力は全国トップレベル。GK指崎尚大(3年)、センターバック三觜大吾(3年)を軸とした守備陣との連携も向上しており、優勝候補の一角と言える。ちなみに桐光学園のユニフォームは、鈴木勝大監督が現役時代から、水色、青、水色のウルグアイ代表カラー。鈴木監督、中村俊輔(現 横浜F・マリノス、※鈴木監督の1学年下)の時代は、エネーレで、完全に当時のウルグアイ代表の正ユニフォームと同じ型であった。

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【関東】帝京第三(山梨)2年連続9回目
 準決勝で日本航空を1-0で下すと、決勝戦で本命視されていたライバル・山梨学院大附属を5-0と一蹴し、2年連続9回目のインターハイ出場を果たした。昨年はインターハイ予選決勝で山梨学院大附属に0-1で敗れるも、本戦が地元・山梨開催で2チーム出場できたため、山梨第2代表として出場し、ベスト16に食い込んだ。

 今年は山梨チャンピオンとして、FW小山駿(3年)、村上光樹(3年)、MF梅田至(3年)らを軸に、それ以上の成績を狙う。OBの亀川諒史(現 アビスパ福岡)が、リオ五輪を目指すU-22日本代表に選ばれており、偉大な先輩の活躍も刺激にしたい。

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【関東】日大藤沢(神奈川第2)8年ぶり7回目
 昨年度の選手権において、快進撃を続け、ベスト4に輝いたのは記憶に新しい。この時のメンバーが多く残り、今年もハイレベルなチームに仕上がっている。中でもGK鈴木孔明(3年)、センターバック小野寺健也(3年)、左サイドバックの西尾隼秀(3年)、右サイドバックの福屋凌平(2年)の昨年のレギュラーが構成する守備陣は強固で、彼らの積極的なラインコントロールから、仁科千優(2年)、石坂尚己(2年)、FW蛭田悠弥(3年)、矢後佳也(3年)ら今年台頭してきた選手が、攻撃を活性化させる。

 チームを束ねる小野寺のキャプテンシーは素晴らしく、GK鈴木と共にチームの精神的な支柱となっている。この2人が引っ張る今年のチームは、より上位を狙える力を持っている。ちなみに日大藤沢は、49歳でプロの最前線で活躍をする、プロ野球界のレジェンド・山本昌(中日ドラゴンズ)を輩出している。

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【東海・北信越】創造学園(長野)3年ぶり2回目
 近年、長野県のサッカーシーンでメキメキと力をつけ、3年前のインターハイ、選手権に初出場を果たした新興勢力だ。185センチのGK長谷川諒(3年)、MF小澤祐太(3年)、FW武田圭二(3年)らが軸となり、長野県勢で唯一、プリンスリーグ北信越を戦っている。

 今予選の決勝では、昨年度の選手権出場メンバーが多く残った都市大塩尻を3-1で破り、2度目の栄冠を手にした。この勢いに乗って北信越大会では、準決勝で星稜を1-0で下して決勝進出。決勝では新潟明訓に0-1で敗れたが、準優勝という結果を残した。目標は過去2度の全国出場でなし得なかった初戦突破だ。

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【東海・北信越】新潟明訓(新潟)2年ぶり6回目
 田園地帯に囲まれた中に、青々とした人工芝のピッチが広がる。校舎のすぐ横にあるきれいな人工芝のピッチで、トレーニングに励む選手たち。環境は新潟県内でも屈指を誇る。理論派で丁寧な指導が魅力の田中健二監督の下、質の高いサッカーを披露する彼ら。今年のチームは元U-16日本代表の加藤潤(3年)と中村亮太朗(3年)の技術の高いダブルボランチが核となる。この2人の巧みなパス出しから、FW高橋怜大(3年)らアタッカー陣が果敢に裏を突いて、ゴールを陥れる。

 今予選では3回戦で開志学園JSCを4-0、準決勝で帝京長岡を1-0で下すなど、難敵を退けて、無失点優勝を成し遂げた。さらにその後に行われた北信越大会で優勝を果たした。インターハイの最高成績は4年前のベスト8。それ以上を十分に狙える『新潟のタレント集団』だ。ちなみに新潟明訓と言えば、野球を思い浮かべる人も多い。オールドファンからすれば、水島新司氏の人気野球漫画『ドカベン』のモデル校として有名だ(主人公が在籍した高校が明訓高校)。今も野球部は強豪で、かつてヤクルトの抑えのエースで、メジャーリーグのホワイトソックス、ニューヨーク・メッツでもプレーをした高津臣吾氏(現 東京ヤクルトスワローズ投手コーチ)の長男・大嗣くんも所属して、注目を集めている。

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【東海・北信越】福井商(福井)53年ぶり2回目
 野球の名門校として知られており、天谷宗一郎(広島東洋カープ)、中村悠平(東京ヤクルトスワローズ)などのプロ野球選手を輩出している。サッカー部は毎年県の上位には食い込んでいたが、絶対王者の丸岡、北陸、新興勢力の福井工大福井の壁に阻まれ続けてきた。

 新人戦でも準決勝で北陸に1-3の敗戦を喫したが、今予選では初戦で昨年のインターハイ出場の福井工大福井を6-1で下して勢いに乗ると、準決勝で丸岡を2-2からのPK戦の末に下し、決勝では北陸に2-1。3強すべてをなぎ倒して、実に53年ぶり2回目の出場を果たした。この快進撃の立役者となったのが、センターバック谷口卓穂(3年)、右MF松田悠弥(3年)、180センチの大型アタッカー・橋本拓馬(3年)と牧田鉄平(3年)のツーシャドーだ。彼らが中心となって、53年ぶりのインターハイで勝利を狙う。

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