青森山田率いる黒田監督期待の2年生DF常田克人 [写真]=安藤隆人
苦しい戦いだった。抜群の組織力を有し、鋭いカウンターで攻め込んでくる広島皆実の猛攻を、青森山田守備陣は強固な守備で弾き返し、20分のFW丹代藍人のゴールを守り抜いて、準決勝進出を決めた。
3-4-3の3バックの左に位置する2年生DF常田克人は、怪我から復帰したばかりだった。186㎝の長身を誇る彼は、2年生ながら守備の要として、春先から存在感を放った。しかし、5月に左足の第5中側骨を骨折。復帰したのは、インターハイ直前の事だった。1回戦は僅か2分の出場、2回戦は出場しなかった。そして、3回戦の尚志戦でついにスタメン出場を果たした。
「怪我から復帰したばかりなのに、重要な試合でスタメン起用してくれた。何とか応えたいと思った」
しかし、先制した直後の14分、尚志のFKの時、自分がマークすべき尚志MF山城廉を捕まえきれず、山城に同点ゴールを浴びてしまった。その後は集中力を切らさず守りきり、1-1のPK勝利となったが、常田は大きな責任を感じていた。
「あれは完全に僕のマークミス。本当に悔しくて、何とか挽回をしたかった」
挽回の場はすぐにやってきた。広島皆実戦で2試合連続スタメン出場を果たすと、高い集中力を駆使し、3バックを巧みにコントロール。彼の魅力は186㎝の高さだけでなく、足元の技術の高さもある。そして状況判断能力とバランス感覚に長け、カバーリングとビルドアップも得意としている。広島皆実の攻撃に対し、時には前に出て防ぎ、時には引いて、ヘッドの強い3年生CB菊池流帆のストロングポイントを引き出し、巧みなカバーリングを披露。攻撃の際も精度の高いキックで、攻撃の起点にもなった。
「心の中では自分が守備を引っ張るんだと思ってやっている」
完封勝利に大きく貢献し、見事に尚志戦の挽回を果たした常田。しかし、常田の能力を考えると、まだまだこれで満足できる出来ではない。
「常田?まだまだ。彼には『恐竜になれ』と常に言っているけど、まだまだ『アルパカ』だね。もっと気迫を前面に出して、闘わないといけない」
黒田剛監督は手厳しいが、これも常田に対する期待の表れ。アルパカのままの選手に、3回戦、準々決勝と重要な試合で、怪我明け間もないのにスタメンフル出場をさせるわけがない。
「アイツに経験をさせて、より大きくなってもらいたくて、昨年の選手権で唯一1年生で26番目のメンバーとして入れた。もっと経験してほしい」
最後に黒田監督は、常田に対する『愛』を口にした。
「もっと3年生と長く試合をして上を目指したい。細かいミスが多いので、もっと集中してやらないといけない。自分はまだまだやれると思っている」。
指揮官の大きな期待と愛を受けた2年生DF常田克人。この大会はポテンシャルをさらに引き出す、重要な大会となるはずだ。『恐竜』になるための、大きな礎と共に―。
(文=安藤隆人)