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名古屋U18吹ヶと神戸ユース藤谷がプレミアで魅せた熱いライバル対決

2014.04.29

【写真】=安藤隆人

 本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人

高円宮杯U-18プレミアリーグ第3節・名古屋U18VS神戸ユース。共に2連勝同士の上位決戦は、0-0のドローに終わったが、一際熱い『攻防戦』が繰り広げられ、観ているものを90分間魅了した。

 名古屋U18の左サイドバック・吹ヶ徳喜と、神戸ユースの右サイドバック・藤谷壮。二人は共に2年生で、年代別代表にも名を連ねるタレント。仲の良いライバルでもある。

「仲がいいけど、絶対に負けたくない相手。中学時代から『(藤谷)壮だけには負けたくない』と思っていた」と吹ヶが語ると、藤谷も「(吹ヶ)徳喜との対戦はいつも楽しみ。小学校の時からナショナルトレセンで一緒だったし、仲が凄くいいけど、でも負けたくないライバル」と語る。

 共に『ライバル』とはっきりと言い切る二人は、この試合でその思いをプレーでぶつけあった。最初のマッチアップは30分、吹ヶのオーバーラップを藤谷が身体を預けてブロック。33分には今度は藤谷のオーバーラップからのクロスを、吹ヶが身体をなげうってブロックした。

共にフィジカルに優れ、スピード、精度の高いキック、豊富なアップダウンが魅力なだけに、マッチアップする時のスピード感、プレーの強度は非常に高い。前半から激しい攻防を繰り広げる彼らの熱は、後半に入ってさらに高まる。

 そしてピークを迎えたのは、残り15分を過ぎてからだった。79分、吹ヶがスルーパスから抜け出すと、ドリブルで一気に縦にボールを運ぶ。そこに猛然と寄せてきたのは藤谷。お互いがトップスピードで近づくと、吹ヶがマイナスのパスを出した瞬間、藤谷はその動きに反応しブロック。さらに86分には吹ヶが自陣から左サイドを一気に50メートルをドリブルで運ぶ。完全に突破したかのように見えたが、そこに現れたのはやはり藤谷だった。トップスピード同士で激しくぶつかり合うと、吹ヶの強引なクロスをまたも身体をなげうってブロック。チャンスを作らせなかった。

 運動量が落ちるはずの終盤で、さらにスピードとパワーに満ちたマッチアップを繰り広げた両者。そのバトルは非常にハイレベルで、気持ちと気持ちのぶつかり合いには、清々しさをも覚えた。

「攻撃が壮に通用しなかった。クロスを上げようとしても、質が甘かった。特徴を出し切れなかった。チームとしても、個人としても凄く悔しい」(吹ヶ)

「攻め上がっても徳喜を抜けなかった。センタリングもブロックされたし、悔しさが残ります」(藤谷)

 共に自ら下した評価は『負け』だった。だが、お互いがこう判断するのは、自らに高いレベルの要求を課し、さらなる成長を欲しているからであり、お互いを認め合っているからこそ。

「壮はいつも先に行く。自分が(サニックス杯で)U-17日本代表に入ってホッとしたというか、自信がついたけど、アイツは一つ上のU-19日本代表に選ばれた。悔しいし、次の対戦は必ず勝ちたい」(吹ヶ)

「徳喜には負けたくない一心で必死に走った。次の対戦は絶対にやらせないし、チャンスを作りたい」(藤谷)

 両者の対決は試合結果同様にドローに終わったが、素晴らしいライバル関係が生み出す相乗効果がそこにはあった。彼らのバトルがハイレベルになればなるほど、彼らが同じユニフォームを身にまとう可能性は高くなる。そう日本代表のブルーのユニフォーム。それまでどれくらいのバトルがあるのだろうか。そのバトルと共に進んで行く彼らの『成長物語』にこれからも注目していきたい。

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