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セリエAに挑戦する19歳のブラジル人FWに見る海外挑戦の意義

2014.02.26

2011年のU-17W杯で日本と対戦した際、川口尚紀と競り合うアドリアン [写真]=LatinContent/Getty Images

 本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人

 セリエA第25節、インテルカリアリの取材に行った。もちろん先発出場したインテルDF長友佑都がお目当てだったが、対戦相手カリアリのある選手に目が行った。

 背番号32のアドリアン。4-3-3を敷くカリアリにおいて、3トップの真ん中に位置する彼は、鋭い動き出しと、強引なドリブル突破を披露していた。彼を初めて見たのは、2011年のメキシコU-17ワールドカップでのことだった。U-17ブラジル代表の10番を背負い、エースストライカーとして、彼はとてつもない存在感を放っていた。

 準々決勝では日本代表と激突。破竹の快進撃で勝ち進んでいた94ジャパンの前に、彼は大きく立ちはだかった。当初は中央で強引な突破を見せていたが、日本の中央の守備が固いとみるや、一気にサイドに流れ込み、圧倒的なボディーバランスを駆使したドリブルで、右サイドバックの川口尚紀アルビレックス新潟)を手玉に取り、ブラジルに流れをもたらした。

 2-0で迎えた60分、左サイドでボールを受けると、対峙した川口を強烈なクイックフェイントで交わすと、「まさかここからこのコースを打って来るのか!?と驚いた」とDF岩波拓也ヴィッセル神戸)が語ったように、角度のきつい場所から、左足でゴールニアサイド上の僅かなスペースを、強烈なシュートで突き通し、結果として決勝点となる3点目を奪った。

 圧倒的なキレとパワー。このシーンは彼のずば抜けた能力が凝縮されたものだった。ここしかない場所を正確なプレーで射抜き、日本の守備を一瞬にしてゼロにしてしまった。このときの衝撃は凄まじいものであった。

 アステカスタジアムで行われた3位決定戦では、ドイツに3-4で敗れたブラジルだが、アドリアンは圧巻の2ゴールを叩き込み、得点ランキング3位に輝いた。

 あれから2年半後、試合会場のジュゼッペ・メアッツァで彼のプレーを目の当たりにし、非常に懐かしい気持ちになると共に、若干19歳の彼がセリエAで奮闘している姿を見て、早く彼と同年代の日本の若手が同じような舞台で活躍する姿を見たいと思った。

 アドリアンは今年1月に、ブラジルのフラメンゴから加入したばかり。当初は実力が不安視されていたようだが、今では高い身体能力と個の破壊力を買われ、先発起用されている。若くして海外に飛び出し、成長速度を速めているアドリアン。日本の若い才能もぜひ彼に続いてほしいと思う。

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