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【インタビュー】お父さんコーチ必見!チームが劇的にレベルアップする“倉本流メソッド”の秘密とは…!?<後編>

2018.12.30

倉本和昌氏:スペインと日本での指導経験を元に、独自の育成メソッドを確立。「指導者育成コーチ」として活動する

 自らを“指導者育成コーチ”と名乗る人がいる。倉本和昌さんは、育成年代のコーチたちを指導することで、日本サッカーのレベル向上に貢献しようとしている。

 高校卒業後、単身スペインへ留学。バルセロナ、ビルバオで指導者キャリアをスタートさせ、8年間にわたり本場の指導を肌で学んだ。27歳で帰国すると、そのノウハウを活かして湘南ベルマーレ、大宮アルディージャと、Jリーグクラブの育成年代を指導して経験を積んだ。

 その過程で、倉本さんはスペインで学んだスキルに独自の方法論を加えていった。育成年代の指導にはチーム強化と、人間形成の双方が求められる。それらの課題を、倉本さんは脳科学や心理学などの学術的なアプローチを取り入れた育成メソッドで解決していく。

 2019年1月、FROMONE SPORTS ACADEMYでは倉本さんを講師に招き、セミナーを開催する。小学生年代の指導でお困りのお父さんコーチや、より質の高い指導を志すアマチュアのコーチなど、「個人の育成」と「チームの強化」を両立させたい指導者の方々には必見の内容となっている。

──倉本さんは現在、「サッカーコーチのコーチ」として活動していらっしゃいます。指導者を教えようと考えた理由は?

倉本 Jクラブのアカデミーで子供たちを教えてきて、気づきがたくさんあったんですね。それでも、自分ひとりで教えられる子供の数は限られている。一度に指導できる人数は20人が限界じゃないですか。その指導を20人のコーチが教えることにすれば、400人の子供に影響を与えられる。自分が何をして生きていきたいか、サッカーだけじゃなくて人生を何のために生きるのかと考えたとき、これは僕の使命だと思ったんです。「サッカーコーチのコーチ」として、できるだけ多くの人の指導力をアップさせる。そのために生きているんだって。

──それはやはり、育成の現場レベルで経験を積んだことによって、わかってきたことなんですかね。

倉本 いろんな指導者の方とお会いすると、みなさん同じようなことで何年も悩んでいたりするんですよね。「試合に出られなかった選手のモチベーションが上がらない。どうしたらいいですか?」とか、「わがままな選手をどう扱ったらいいのかわからない」とか。みなさん、本当に同じような悩みを抱えている。それは僕自身も経験したことで、今までいろんな場所で指導してきましたけど、必ず同じような問題が出てくるんです。ぐるぐると同じ問題にずっと悩んできて、それを解決したいと思ったときに、脳科学や心理学を勉強したんですね。そしたら、結果が出ることがわかった。脳科学や心理学まで踏み込まないと人は変わらないんですよ。それをみなさんにも知ってほしいんです。

──育成年代の指導法には、まだ足りない分野や考え方があるということですね。

倉本 悩んでること自体が苦しいし、その人が幸せじゃないですからね。そういう悪循環を救おうと思ったんです。最近になって、体罰の映像がSNSなどで拡散されて、問題になったりしますよね。でも冷静になって考えると、体罰をしたい指導者なんていないと思うんですよ。つまり、教育するうえで熱の出し方を間違えている。情熱があって、その子を何とかして変えようとしているのに、やり方がわからないから体罰になってしまう。

──体罰以外にいろいろな方法があるのに、指導者がそれを知らないと。

倉本 そうです。自分が同じようにやられてきたから、それが正しいと思っているのかもしれませんが、だとしたら選択肢がない状態ですよね。子供を変えるための選択肢が強制力しかないと思っている。それ以外に方法があると知っていれば、体罰なんか選ばないと思うんです。ただ知らないだけだと。これはサッカーに限らず、スポーツ全般にも言えるんですけど、育成年代の指導者は「スポーツはこんなに子供の成長にいいものなんだ」と証明しなきゃいけないと思います。なのに、そうじゃない部分が出すぎている。だから、おかしいと思ったことはおかしいと言い続けたいと思っています。

──日本の育成年代の指導において、具体的にどの辺に課題があると感じていますか?

倉本 長くスペインにいた身としては、戦術的なトレーニングが圧倒的に少ないと感じますね。要するに、目で見て、認知して判断する練習が少ない。サッカーのプレーには「認知・判断・実行」という3つのプロセスがあるんですが、その中で「認知」と「判断」の2つにアプローチすることがほとんどない。そこに重要性を感じていないんですよね。だから、認知や判断を促すトレーニングをすると、最初はみんなノッキングを起こすんです。

──「認知」して「判断」する。言い換えると、「試合中に自分で判断して動ける」ということですね。よく耳にする課題です。

倉本 そうですね。だけど「自分で決めて動け」と言ってるだけではダメですから。コーチが促してあげないと、なかなかできるようにはなりません。ただ、日本の子供たちが持っているポテンシャルとか、最後までやり抜こうとする力とかはすごいと思いますよ。能力の高い子はたくさんいます。なのに、小さい頃からダメだと言われすぎていて、自己肯定感が持てずに自信がないんです。人に褒められても「いやいや、自分なんて」と否定してしまう。自分のことが嫌いな選手は、いい選手にはならないですよね。

──今後はどういったコーチが必要になってくるとお考えですか?

倉本 僕は「世界に通用する日本人指導者」というテーマを掲げています。これを定義すると、主体的で、クリエイティブに、戦術的に解決できるコーチ。この3つがあれば、言葉の問題はあるにせよ、海外でもやれると思うし、たとえ失敗しても、そこでどうしたらいいか考えられる。それは人として生きていくためにも大事なことですよね。そういうコーチにならないと、いい選手は育てられないと思うんです。その定義に合った、「世界に通用する日本人指導者」がたくさんいれば、チャンピオンズリーグでプレーできる日本人選手が50人はいくと思っています。だから、まずはいい指導者が1,000人以上は育ってほしい、というのが僕のビジョンなんですよ。

──実際に、指導者を育成する6カ月の講座も開いていらっしゃいますよね。どんなことを話しているんですか?

倉本 大きなテーマは3つあって、人としての考え方、そしてマネジメント、対人関係ですね。どうアプローチすれば他人との関係や接し方が変わるのか、ということです。もちろん実際のトレーニングの話もしますし、ゲームモデルの作り方も話します。実際に受講された方のチームで、どうやってゲームモデルを作れるかというところまで、踏み込んでお手伝いしています。机上の空論ではなくて、僕が実際に使ってみて、効果が出たものを選んでいます。

──サッカーの指導論も興味深いですが、「人としての考え方」というのは、コーチ自身が自分をどう捉えるか、ということですよね。

倉本 子供が「オレなんてダメだ」と思っている状況では、コーチが何を言ったってダメなんですよ。自分を否定しているわけですから。それに指導者が気づいてあげないと、何も変わりません。指導法にとらわれていたら、「この子は今、どういう状態なのか」ということに気づかないでしょう。そう考えると、最終的にはコーチ自身の内面が問題になってくるんですよ。

──このFROMONE SPORTS ACADEMYのセミナーでは、どういったことを伝えたいと考えていますか?

倉本 コーチの方々が思っていることはシンプルだと思います。「今、チームにいる子供たちの力で試合に勝つ」ですよね。では、勝つチームとはどんなチームなのかと言うと、関係の質、思考の質、行動の質、結果の質が好循環で回っているんです。その質を上げるために、僕が経験したことを詳しくお伝えします。だから次の日からすぐに使えます。それから、「戦術」という言葉に対する拒否反応と誤解を解く、というのが一番のテーマです。「戦術」という言葉を説明してくださいって言われるとみんな困るんですね。それをもっと簡単に捉えてもらいたいです。

──おもしろそうですね。「戦術」がうまく教えられずに悩んでいるコーチは多そうです。

倉本 もちろん、僕が言っていることがすべて正しいわけではありません。僕自身も「サッカーコーチのコーチ」として、まだまだ向上していく過程です。なので、受講者の方の悩みにハマるような解決策だったらどんどん使ってもらいたいし、もし使えなかったら、どこが良くなかったのかも教えてほしいですね。僕自身もいろいろ試して、検証していきたいので、積極的にコミュニケーションを取りたいです。一方通行じゃなく。同じサッカーの仲間ですから、一緒にサッカーを良くしていきたいと思っています。

インタビュー前編はこちら


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