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楢﨑正剛氏が語るコパ・アメリカ「周りも殺気立っているし、プレーしている選手はもっと殺気立っていた」

2019.06.17

2018シーズン限りで現役を引退した楢﨑氏は現在、名古屋グランパス クラブスペシャルフェローを務めている

 1999年、日本はコパ・アメリカのパラグアイ大会に招待出場し、1分け2敗でグループステージ敗退という成績に終わった。当時23歳だった楢﨑正剛氏はこの大会で2試合にゴールマウスに立っている。

 あれからちょうど20年、再びコパ・アメリカに挑む日本代表を楢﨑氏はどのように見ているのだろうか。“本気の南米”と戦った当時の想いやそこから得た経験、大会に挑む選手たちへのメッセージなどを聞いた。

インタビュー・文=武藤仁史
写真=AFLO,Getty Images

■プロレスの会場みたいな“男臭い”感じ

99年のコパ・アメリカで当時23歳だった楢﨑氏は2試合に先発出場した [写真]=AFLO

――1999年コパ・アメリカ・パラグアイ大会は楢﨑さんにとってフル代表としては初めての国際大会でした。どういう大会したいというイメージはありましたか?

初めて大きな大会に出るということですごく楽しみでしたね。98年のフランス・ワールドカップが終わって次のW杯に出場したいと意気込んでいたので、自分にとってはその第一歩という気持ちでした。

――コパ・アメリカに日本が招待されることは初めてでしたが、南米に行って一番印象に残っていることはありますか?

大会前にアルゼンチンで合宿をして、ボカ・ジュニアーズのユースチームと練習試合したんですよ。それが本当に強かった。上手いし、激しいし、結果は引き分けだったと思いますが内容は完全に負けていました。アルゼンチンのクラブのユースでこんなに強いのに、これからコパ・アメリカで代表チームと試合するのは本当に怖かったです(笑)。

――ペルーとの初戦は先発で出場しました。結果は2-3で敗れましたがどのような印象でしたか?

めちゃくちゃシュートが飛んできたことしか覚えてないですね(笑)。ずっと攻められていたイメージです。

――当時の映像を見ましたが好セーブを連発していました。

結構止めていたと思うんですけど、ニアを抜かれて失点したのがすごく悔しかったですね。シュートを蹴る身体の向きと視線とは逆の方向に飛んできて反応できなかった。

――それは相手のミスキックではなくて。

ミスキックではないですね。たぶん狙っていたと思います。

――スタジアムの雰囲気などはいかがでしたか?

雰囲気は独特でしたね。ネットがゴール裏に張り巡らされていてサッカーというよりプロレスの会場みたいな“男臭い”感じでした(笑)。

――対戦相手のペルーは大会直前にキリンカップで来日しています。メンバーもほとんど変わっていませんでしたが、日本で対戦した時と違いはありましたか?

全く違いましたね。上手くて強いし、ブラジル代表かと思うくらい強力でした。

――第2戦はホームのパラグアイに0-4で完敗を喫しました。楢﨑さんは出場しませんでしたが見ていてどうでしたか?

会場の雰囲気も含めてすべて圧倒されていた記憶があります。点が入っていくたびに日本が自信を失い、相手はお祭り騒ぎのような状況でした。

――2試合を終えて内容も結果も圧倒されての連敗となりましたが、選手のモチベーションの部分ではどうでしたか?

当時のチームは、まだ立ち上げたばかりで予選グループを突破して上位を目指すような段階でもなかったのでそこまで落ちてはいなかったですね。もちろん、恥ずかしい戦いはできないと思っていましたが。ですので、チームの結果以上に個人的にアピールしていかなきゃという気持ちで戦っていました。

――最後のボリビア戦では再び先発出場して勝ち点を獲得しました。この試合でも楢﨑さんは活躍されていました。

見せ場はたくさんあったと思います(笑)。ただ、失点したフリーキックは狭いサイドを破られてしまったので自分の中では決められてはいけないゴールでした。失点直後に秋田(豊)さんにも怒られましたし(笑)。

――試合をして感じた南米の選手との差はどこにあったと思いますか?

本気で戦うことの違いですかね。周りも殺気立っているし、その中でプレーしている選手はもっと殺気立っていて、ものすごいプレッシャーの中で戦っているんだなという感じはすごくありました。

――改めて楢﨑さんにとってコパ・アメリカはどんなものでしたか?

学ぶことが多かった大会ですね。ペルー戦とボリビア戦の失点じゃないですが、何が起こるか分からないということは教訓となりました。自分が予測がつく場面でもそれに頼ってはいけないんだと。チームとして結果は出せませんでしたが、個人的にはこの大会で得た経験をポジティブなほうへつなげられたと思います。

■“衝撃”を受けることを次につなげてほしい


――大会全体について伺います。南米のGKについてどんなイメージを持っていますか?

国によってイメージが違いますね。ウルグアイの(フェルナンド)ムスレラみたいに細身のGKもいれば、パラグアイとかチリはあまり大きくないけど俊敏なGKみたいな。選手のレベルで言ったら今はブラジル代表のレベルが飛び抜けていますよね。

――――アリソンとエデルソンですね。

どちらも今世界でトップといわれていますからね。ブラジルは近年GKレベルが一気に上がった印象です。昔は「代表に良いGKがいない」ってブラジルのキーパーコーチがよく嘆いていたんですが(笑)。

――最後に今回のコパ・アメリカに出場する日本代表について伺います。99年当時と日本と南米の差は縮まっていると思いますか?

日本も成長しましたが、南米の国々も成長しているので……なかなか縮められていないのではないかと思います。

19歳の大迫について楢﨑氏は「若いわりに落ち着いている」と高く評価している[写真]=Getty Images

――今回のメンバーはオリンピック組が中心です。19歳の大迫敬介選手はコパ・アメリカで出場すれば楢﨑さんと川口能活さんの記録を超えてGK最年少代表出場記録となります。

そういう選手が出てきたのはいいことだと思います。大迫君は名古屋でやった試合しかじっくり見ていませんが、止めるところをしっかり止めていたし、若いわりにベテランのような落ち着いたプレーをしていた印象ですね。

――若い代表チームがウルグアイ、チリ、エクアドル相手にどこまで通用するか未知数ですが、当時23歳で大会に参加した先輩として何かアドバイスはありますか?

僕もそうでしたが“衝撃”を受けることを次につなげてほしいですね。プレーのスピードや考えるスピード、潰されるタイミングとか日本でいつもやっていることと違う感覚を得られるので、それをこれからのキャリアに生かしてもらえればと思います。

By 武藤仁史

元WEB『サッカーキング』副編集長

元サッカーキング編集部。現在は編集業を離れるも、サッカー業界で活動中。

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