FOLLOW US

CL決勝でカミラ・カベロが歌い上げた『FAMILIA』のスピリット 一方でOPセレモニーの課題も

2022.06.24

チャンピオンズリーグ決勝前、パフォーマンスを披露したカミラ・カベロ [写真]=Getty Images

 サッカーとポップミュージックをどちらも愛する者ならば、チャンピオンズリーグ(CL)決勝のオープニングセレモニーに、どこかもどかしさと期待が入り混じった複雑な感情を抱いている人は少なくないのではないか。

 人気ミュージシャンにとって、その視聴者数においても影響力においても史上最大の晴れ舞台であるアメリカンフットボール『スーパーボウル』のハーフタイムショーを目標として、CL決勝という全世界が注目するイベントの重要な付加価値として、このオープニングセレモニーを発展させていこうと欧州サッカー連盟(UEFA)は目論んでいるのだろう。ちなみに、CL決勝のオープニングセレモニーとスーパーボウルのハーフタイムショーは、ともに『ペプシ』社がスポンサードをしている。

22年に行われたスーパーボールの様子 [写真]=Getty Images

 CL決勝でミュージシャンのパフォーマンスによるオープニングセレモニーが行われたのは、2016年のサン・シーロ(ミラノ)でのアリシア・キーズが初めて。続いて、2017年のミレニアム・スタジアム(カーディフ)でのブラック・アイド・ピーズ、2018年のオリンピスキ・スタジアム(キーウ)でのデュア・リパ、2019年のエスタディオ・メトロポリターノ(マドリード)でのイマジン・ドラゴンズ。2020年はパンデミックの影響で行われず、2021年のエスタディオ・ド・ドラゴン(ポルト)ではマシュメロがセレーナ・ゴメス、カリードをゲストに迎えてバーチャルパフォーマンスを行った。

 こうして見ると、決勝開催地と出演ミュージシャンの関連性がまったくないことに気付かされるが、それはポップミュージックにおいて依然として英語圏のミュージシャンが強い影響力を持っていること、そしてオープニングセレモニーが現地スタジアムの観客よりも中継をテレビで見ている視聴者に向けられていることの表れだろう。

 そういう意味では、今年スタッド・ドゥ・フランス(パリ)で行われた決勝、リヴァプールvsレアル・マドリードのオープニングセレモニーの舞台に立ったカミラ・カベロは、現在の国籍はアメリカとはいえ、キューバのハバナで生まれ、両親のルーツがメキシコとキューバであるという点で、これまでで最もサッカー・カルチャーに近いコミュニティの出自を持つミュージシャンだった。実際、彼女は幼少期から頻繁にテレビで家族とともにサッカー中継を見ていたという。

スタッド・ドゥ・フランスで行われたCL決勝 [写真]=Getty Images

 そんな彼女が、そのものずばり『ファミリア』と名付けられたニューアルバムをリリースしたばかりのタイミングで、オープニングセレモニーに登場したのは、“カミラ・カベロのストーリー”としては必然をともなっていたと言えるだろう。当日にメドレー形式でパフォーマンスされたのは、いずれも空前のグローバルヒットとなった代表曲の『セニョリータ』と『ハバナ feat. ヤング・サグ』、続いてニューアルバム『ファミリア』から『バン・バン feat. エド・シーラン』と『ドント・ゴー・イェット』の計4曲。

 真っ白な衣装に身を包んだカミラ・カベロは、赤と黄色に分かれたドレスのダンサーたちと情熱的なパフォーマンスを繰り広げ、冒頭ピッチ上で形作られていた「HOLA」(こんにちは)の人文字が、「FAMILIA」(家族)の文字へと変化して大団円を迎えた。カミラ・カベロが最新アルバムでテーマとして掲げていた“家族の繋がり”というメッセージは、世界で最も多くの人に親しまれているスポーツであるサッカーの頂点、CL決勝のピッチにも相応しい、シンプルに力強く響くものだった。

 赤と黄色のダンサーの衣装、スペイン語のメッセージということで、レアル・マドリードのスペインに寄りすぎた演出という見方もあるのかもしれないが、今回のパフォーマンスのモチーフとなったのはメキシコ南部の都市、オアハカのカーニバルだという。英語にスペイン語を混じえたリリック、今回のために特別に施されたレゲトン風のビートを強調したリミックスと、英語圏のアーティストやカルチャーに偏重してきたオープニングセレモニーの短い歴史において、カミラ・カベロは一石を投じたと言っていいだろう。

 もっとも、すでに多くの報道がされているように、当日の会場の外側では、(UEFAが主張するところ)多くの偽チケットが出回ったことをきっかけに大きな騒動が起こっていた。結果、キックオフの時間が予定よりも30分以上遅れることになり、痺れを切らしたサポーターたちはカミラ・カベロのパフォーマンス中も、ゴール裏で応援歌を歌い続けたり、ブーイングが飛ぶという事態となった。テレビ中継からはそこまでの混乱した様子は伝わってこなかったが、「オープニングセレモニーが現地スタジアムの観客よりも中継をテレビで見ている視聴者に向けられていること」がもたらした災難だったとも言えるかもしれない。

 準決勝セカンドレグが終わって、決勝に進出する二つのクラブが決まるのは、たった数週間前のこと。オープニングセレモニーに相応しいスーパースターをそこからブッキングするというのは現実的ではないし、どちらかのクラブに寄ってしまうわけにもいかない。ファイナルが開催されるスタジアムには、ファイナルに進出した二つのクラブに配分されたチケットを持ったサポーターのほか、当然のように地元の観客も多く押し寄せる。そう考えると、やはりファイナルの開催地と出演ミュージシャンと関連性を深めていくことが、今後のUEFAに突きつけられた課題なのではないだろうか(とはいえ、来年の開催地はイスタンブールなのでそれもなかなか難題なのだが)。いずれにせよ、今年のCL決勝におけるカミラ・カベロのオープニングセレモニーは、その充実したパフォーマンス内容においても、それがもたらした問題提起においても、記憶に残るものとなった。

文=宇野維正

カミラ・カベロ、>CL決勝でのパフォーマンス楽曲ミュージック・ビデオ

●セニョリータ

●ハバナ feat. ヤング・サグ

●バン・バン feat. エド・シーラン

●ドント・ゴー・イェット

CL決勝でパフォーマンスした最新&代表曲が入ったプレイリスト

最新アルバム『Familia|ファミリア』再生&視聴音源

1.ファミリア
2.セリア
3.サイコフリーク feat. ウィロー
4.バン・バン feat. エド・シーラン
5.ラ・ブエナ・ビダ
6.クワイエット
7.ボーイズ・ドント・クライ
8.アスタ・ロス・ディエンテス feat. マリア・ベセラ
9.ノー・ダウト
10・ ドント・ゴー・イェット
11.ローラ feat. ジョトゥエル
12.エヴリワン・アット・ディス・パーティー

カミラ・カベロ日本公式サイト

【PR】UCLはWOWOWが独占配信!
いつでも楽しめるオンデマンドがおすすめ!

WOWOWオンデマンド


「WOWOWオンデマンド」とは、テレビやBS視聴環境がなくてもWOWOWのコンテンツを月額2,530円(税込)で楽しめるサービス。まずは1カ月間の無料トライアルで視聴体験ができるからおすすめです。

  1. UCLは全試合ライブ&見逃し配信、UELも注目試合をライブ&見逃し配信!
  2. 「WOWOWオンデマンド」なら、いつでもどこでも好きなデバイスで視聴可能!
  3. スポーツ、映画、音楽、ドラマなど幅広いコンテンツが堪能できる!

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO