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【アジア最前線:タイ #8】新型コロナウイルスの影響が深刻化するタイリーグ…2部クラブでは給与の未払いが発生

2021.02.01

[写真]=Getty Images

新型コロナウイルス感染急拡大で再びのリーグ中断

 タイリーグは1月に入って今シーズン2度目となるリーグ戦の延期を発表した。タイ国内は新型コロナウイルスの感染抑止に成功してきたものの、昨年12月から一気に感染が全土に拡大しているためだ。

 タイリーグの2020年シーズンは、予定どおり昨年2月14日に幕を開けた。しかし、2月末の第4節を終えたところで、タイ保健省が新型コロナウイルスを「危険感染症」に指定。それを受けてタイリーグは無観客で試合を開催していくことを一旦発表したが、まもなく全試合を一定期間延期すると決定した。当初はタイの旧正月である4月の連休明けに再開される見込みだったが、新型コロナウイルスを取り巻く状況は世界的に深刻化していき、結果的にはJリーグよりも2カ月以上も遅れて9月中旬に再開を迎えた。

 中断期間にはリーグの「秋春制への移行」という大胆な決定が下され、2020年シーズンとして始まったリーグ戦は2020-21シーズンとして年をまたいで開催されることに。さらに、4部リーグまで存在していたカテゴリーも再構成を余儀なくされ、3部と4部を統合した「新3部リーグ」が誕生した。新型コロナウイルスの影響による中断は、タイリーグに歴史的な変化をもたらした。

 再開後は順調に日程を消化していたものの、昨年12月にミャンマーからの外国人労働者による大規模な集団感染がタイ国内で発生。それを機に感染が全土に急拡大し、タイリーグもリーグ戦の続行が困難な状況になってしまった。1月4日には、1月に開催予定であった1部と2部の全試合延期が決定。3部に関してはリーグ戦を昨年末の時点で打ち切り、昇格をかけたプレーオフのみを開催すると決めた。

 秋春制へと変更された段階でも、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場チームの決定方法がイレギュラーな形になるなど混乱が生じた面があった。そして今、再びのリーグ戦延期によってタイリーグにおける新型コロナウイルスの影響は深刻度を増している。

2月にリーグ再開予定も、各クラブの財政難は深刻化

 本来であれば、2020年シーズンは昨年の2月から10月まで開催される日程だった。それが大幅に延びたことによって各クラブの経費は予定外に増えている。その上で試合も通常どおりには行われていないため、収入は減少。2020年シーズンまでタイリーグの放映権を取得していたタイの大手メディア『TRUE』からの放映権料も満額は支払われていないという状況もあり、リーグ、そして各クラブは財政的に厳しい事態となっている。

 特に規模の小さなクラブではその影響がすでに表面化しており、日本人の滝雅美監督が率いる1部のラヨーンFCでは、選手やスタッフへの給与が2カ月間ストップしている状況だ。事態を受けて滝監督は1月半ばから一時的にチームのトレーニングを中止し、クラブとの話し合いを続けている。2部リーグ以下でもラヨーンFCと同様にかなり厳しい財政状況に陥っているクラブが相当数存在すると思われる。

 タイリーグでは今のところ、Jリーグで実施されているような新型コロナウイルス禍における特別なクラブ救済措置は行われていない。このまま状況が好転しなければ、今後は存続の危機を迎えるクラブが出てくる可能性を否定できないだろう。

 タイリーグでは多くの日本人選手がプレーしているが、現在は新しい日本人選手のタイ移籍が困難な状況となっている。昨年9月のリーグ戦再開前には丸岡満がBGパトゥム・ユナイテッドに加入したものの、12月の移籍可能期間には国外からタイリーグのクラブに加入する日本人選手はいなかった。

 現在、タイリーグは2月6日に再開する方向で調整が進んでいる。全試合が無観客で開催される予定で、新型コロナウイルスの感染が拡大している地域ではホームゲームを中立地で開催するなどの措置も取られる見込みだ。3月末までに残り14節を詰め込む過密日程となるため、1試合の選手交代を5人まで認めるなどの特殊ルールも設けながら、なんとか日程を消化していく。

 再開後の試合が予定どおりに行われれば、今季のACL開幕前にはリーグ戦が閉幕する。だが、中長期的に懸念される問題も多く、「コロナ禍」との戦いはタイリーグにおいてもまだまだ続きそうだ。

文=本多辰成

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