2018.09.05

UEFAネーションズリーグがいよいよ開幕! 欧州が試みる新たな大会が意味するものとは?

新設されたUEFAネーションズリーグのトロフィー [写真]=Getty Images
スポーツジャーナリスト、編集者、翻訳家。『サッカーダイジェスト』誌、英『PA Sport』通信、『UEFA.com』を経てフリーに。世界中に幅広いネットワークを持ち、様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

 今年9月、UEFA加盟国によるナショナルチームのリーグ戦、「UEFAネーションズリーグ」が幕を開ける。全く新しいこの大会は、フットボールシーンをどう変えるのだろうか?

代表戦に光を当てる新しい試みがスタート

UEFAネーションズリーグのロゴ [写真]=Getty Images

 代表戦の価値をより高めるために……。それがネーションズリーグ発足の大きな理由である。

 ワールドカップとユーロのないシーズン、欧州の代表戦線に関心を持つ人は少ない。特に近年はチャンピオンズリーグやプレミアリーグの隆盛により、人々のフットボールへの欲求はクラブレベルでほぼ満たされるようになった。CLやプレミアのビッグクラブのほうがクオリティは高く、移籍動向への興味も尽きない。そして多くのクラブの監督は代表戦に選手が呼ばれることを好まず、ファンもメジャートーナメントが近づかないかぎり、代表の試合に特別な興味を示さない。親善試合なんて、あってもなくても同じ。そう考える人は少なくない。

 UEFAはこの状況を深刻に捉え、2011年から議論を重ねてきた。そして2014年3月の総会で、ネーションズリーグの発足を満場一致で可決。記念すべき第1回大会は18-19シーズンに始まり、最初の試合は9月上旬に予定されている(以降、W杯とユーロのない2シーズンごとに開催。第2回大会は20-21シーズンとなる)。

 UEFAに加盟する55協会の代表チームがUEFAランキングによって、A~Dの4つのリーグに分けられ、各リーグの中でさらに4つのグループに振り分けられる。トップレベルのリーグAと次点のリーグBには12チーム、リーグCには15チーム、リーグDには16チームが入り、それぞれ3、4チームで構成される4グループが出来上がる。グループステージ(2018年9月~11月)ではそれぞれがホーム&アウェーで対戦。リーグAの4つの首位チームが最終ラウンドへ進出し、準決勝と3位決定戦、決勝(すべて2019年6月)を戦う。リーグB以下のそれぞれ4つの首位チームは翌シーズンに上位リーグに昇格し、最下位チームは降格する。

W杯さながらの好カードが並ぶ

2018-19シーズンのUEFAネーションズリーグ組み分け

 今年1月に行われた組み合わせ抽選の結果、激戦必至の好カードや死のグループがいくつも生まれている。リーグAは当然、どのグループもハイレベルなものとなるが、特にグループ1(フランス、ドイツ、オランダ)とグループ4(クロアチア、イングランド、スペイン)に注目が集まりそうだ。なにしろ、初戦からとんでもない対戦が組まれている。いきなりドイツ対フランス、イングランド対スペインと、W杯の決勝でもおかしくないようなカードが並ぶ。しかも真剣勝負だ。

 またリーグBにも、先のW杯で健闘したロシアとスウェーデンに実力国トルコが挑むグループ2がある。ボトムレベルのリーグDまで、各チームはレベルの近い相手と勝ち抜けや昇降格を懸けて対戦するため、試合が白熱するのは間違いない。

 つまり、親善試合で感じられなかった熱が感じられることになる。試合の日程は、もともと組まれていたフレンドリーマッチのスケジュールと入れ替わるだけなので、試合数も選手の負担も増えない。各国代表は継続的な強化を図れるため、全体的なレベルアップも見込める。なんだか、いいことばかりみたいだ。

 しかし物事には、良い面とそうではない面がある。例えば、常に結果が求められることにより、若手やニューカマー、戦術やシステムの新オプションを試す機会が減るのではないか、という意見がある。ただ、それも指揮官の腕の見せどころと捉えることもできるから、重大な懸念とは言えない。

 多くの人が首を傾げているのは、それとは別のところにある。ネーションズリーグ自体の着地点は、真剣勝負を重ねた末に欧州最強国を決めることだ。しかし、それと同時にこの大会はユーロ本大会の出場権争いも兼ねている。その手法に批判の矛先が向かっているのだ。

ユーロの大会価値が下がるという懸念

ポルトガルの優勝で幕を閉じたユーロ2016 [写真]=Getty Images

 ネーションズリーグのグループを制したチームは、ユーロ出場権を懸けたプレーオフに参加できる。各リーグ、4つのグループ首位チームがミニトーナメントを行い(決勝ラウンドと同じように)、最後まで勝ち抜いた4チームがユーロ本大会への切符を手にする。つまり、A~Dの4リーグから必ず1チームずつがユーロ本大会に進むことになる。アンドラやルクセンブルク、マルタ、コソヴォ、ジブラルタル、リヒテンシュタインといった小国によって構成されるリーグDからも、ユーロ出場国が誕生する。

 一方でユーロ予選もこれまでどおりに行われるため(2019年3月から)、正規ルートで本大会出場を決めたチームがネーションズリーグのグループで首位になった場合、グループ2位のチームが繰り上げでプレーオフに参加することになる。

 普通に考えれば、リーグAとリーグBに所属する代表チームは、正規ルートで予選を突破する可能性が高い。そうなると、プレーオフに出場する16チームは中小国ばかりになることも予想される。それほど間口を広げていいのだろうか。ユーロの格式を貶めることになりはしないか。そんな批判が展開されているわけだ。

 でも個人的には、ユーロ2016から参加チームが24カ国に増えた時点で、その手の意見はあまり意味をなさなくなったと感じている。2年前のフランス大会では初出場4カ国のうち、アイスランド、北アイルランド、スロヴァキアがグループを突破し、アルバニアだけが早期敗退に終わった。つまり、アウトサイダーが驚きを提供する可能性はある。

 ニュートラルなファンにとって、それは最もワクワクする瞬間の一つだ。先のロシアW杯でも、そんなシーンを楽しんだ人はたくさんいただろう。

 日本代表など、欧州以外の代表チームが欧州勢との強化試合を組みにくくなることは確かに残念だ。それでも一人のフットボールファンとして、欧州各国代表による熱戦が多く見られるようになることを、僕は喜びたい。

文/井川洋一
スポーツジャーナリスト、編集者、翻訳家。『サッカーダイジェスト』誌、英『PA Sport』通信、『UEFA.com』を経てフリーに。世界中に幅広いネットワークを持ち、様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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