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【W杯直前!サンクトペテルブルク発】ロシア・プレミアリーグが閉幕…W杯まで1カ月、現地情報をたっぷりと!

2018.05.19

[写真]=FC Zenit

 ロシア・プレミアリーグ第30節の全8試合が13日に行われ、今シーズンの全日程が終了した。2017-18シーズンは、5日に行われた前節でゼニトに1-0で勝利したロコモティフ・モスクワが、2004シーズン以来14年ぶり3度目のタイトルを獲得している。敵地でしかも目の前で優勝を決められてしまったゼニトの最終順位は5位。14-15シーズン以来のリーグチャンピオンを目指していたが、タイトル獲得は来シーズンに持ち越しとなった。

サンクトペテルブルク・スタジアムに隣接した新しい地下鉄の駅が開業

[写真]=FC Zenit

 そうした状況下で行われた13日のサンクトペテルブルク・スタジアムでのホーム最終戦は、試合以外にも多くの注目が集まっていた。まずは、この試合が2018 FIFAワールドカップ ロシア開幕前最後の試合であったということ。そのため、この日は無料のシャトルバスの運営やスタジアムのボランティアをサンクトペテルブルク市のW杯組織委員会が管理し、W杯に向けた予行演習を兼ねていた。スタジアム周辺やスタジアム内では、まだ慣れない感じはあるもののボランティアが楽しそうにイキイキと活動している姿が見受けられた。さらにこの日は、スタジアムに隣接する新しい地下鉄の駅の開業、空港と街の中心部から直接スタジアムまで行くことのできる無料のシャトルバスも初めて運行される日でもあった。

 地下鉄については、サンクトペテルブルクの地下鉄3号線(M3、緑色の路線)の終点が延長され、サンクトペテルブルク・スタジアムのすぐ真横に位置するノヴォクレストフスカヤ(英語表記:Novokrestovskaya)駅を含む2駅が新しく作られた。当初の予定では、4月29日のCSKAモスクワ戦で開業予定だったが、13日まで開業がずれ込んでいた。すでに皆さんもご存知のように、スタジアム建設然りこうした遅れは日常茶飯事になっている。感覚的にはすでに慣れてしまっているものの、今回はW杯前最後の試合ということもあり「本当に13日に開業するの?」という心配は少なからず持っていた。試合2日前に当日の公共交通機関の情報をチームからアナウンスする際、地下鉄開業の情報もきちんとその中に含まれていたのだが、個人的にはまだ80%程度の安心だった。そこで試合当日の朝は、残り20%の心配を払拭するため、新しいノヴォクレストフスカヤの駅を使用してスタジアムへ向かってみることにした。

[写真]=FC Zenit

地下鉄のマップ、車内アナウンス、無料シャトルバスもW杯仕様に

[写真]=FC Zenit

 実際に乗ってみた感想は、素直に「便利!」だった。新しいノヴォクレストフスカヤ駅を含む地下鉄3号線は、サンクトペテルブルクの街の中心部にあるネフスキー大通りから乗車することができる。本数も4~5分に一本程度運行されているので、あまり待たずに乗ることもでき、FIFAのFAN FESTも同じく3号線のネフスキープロスペクト(英語表記:Nevsky Prospect)駅にあり何かと便利である。駅に到着後もスタジアムまでの道順も分かり易く、案内してくれるボランティアも数多くおり、周りの海やハイウェイの景観を楽しみながら歩いて快適にスタジアムに向かうことができる。地下鉄車内や構内のマップ、車内アナウンスもW杯仕様に変更されており、20%の不安を余所にこのルートは意外と準備万端であった。

 加えて、当日はプルコヴォ空港とこちらも地下鉄3号線のマヤコフスカヤ(英語表記:Mayakovskaya)、地下鉄1号線のプロシャチ・ヴォスタニヤ(英語表記:Ploschad’ Vosstaniya)と接続駅から、スタジアムまで直通の無料シャトルバスも運行が始まった。13日の時点では、試合開始の3時間前から10~15分間隔で運行されており、スケジュールや滞在場所によってはこちらも便利に活用できるはずだ。運行情報や発着場所の情報は、サンクトペテルブルク地下鉄のウェブサイトやゼニトのウェブサイトでも確認ができるようになっている。

 こうした公共交通機関の準備に合わせ、主要な地下鉄駅やシャトルバスの乗車場所、W杯関連施設の位置を教えてくれる案内板が5月に入り至る所で設置されている。街中ではW杯関連の案内板が、大会本番が1カ月前に迫っていることを感じさせてくれる良い目印になっている。一方で、早速落書きされている看板や日々ちょっとずつ位置が変わる看板を見ながら街を歩いていると、良い意味でロシアらしさに溢れた大会になることも感じさせられる。

ゼニトの最終戦、監督退任、退団セレモニー、そして2018/19シーズンへの期待

[写真]=FC Zenit

 最後に少しだけ、13日に行われたゼニトの最終戦について触れたい。奇しくも先日自ら「今シーズン終盤のゼニトは見逃せない」と記事を書き、本当に最終戦まで話題に事欠かないシーズンとなった。見逃せなかった出来事の一つは、勿論ロベルト・マンチーニ監督の退任である。

 ここ数ヶ月様々なメディアで取り上げられていた話題であるが、公式な発表は一切なく最終戦の当日を迎えていた。この日も実際、試合開始の約3時間前になって初めて退任の発表があり、そこからチーム内でリリースの対応を行った。当然、その報せはすぐにファンの耳にも届き、スタジアムアナウンスでスターティングメンバーと共に監督の名前が読み上げられると、大ブーイングとなって返って来た。この反応は、多くのサポーターが監督に大きな期待を寄せていたことへの裏返しであった。監督の去就に関しては3月末に行われたファンミーティングでも、本人不在の中多くの質問が出るなど大きな関心事になっていた。加えて、シーズン後半戦は途中加入の選手が結果を出せない一方で、レンタル移籍をした選手がゼニトとの試合でことごとく結果を出すという、何とも皮肉な状況が起きていたのも事実であった。こうした背景もあり、監督の去就に関してはシーズン後半を通じて、なかなかセンシティブな話題となっていた。

[写真]=FC Zenit

 監督退任が報じられていると同時に、シーズン最終戦ということもあり、スタジアム内では幾つかの特別な企画が動いていた。元ロシア代表で2007年11月からゼニトに所属し今シーズン限りでの退団が決まっているヴィクトル・ファイズリン(公式戦229試合出場26ゴール)の退団前最後のサイン会、今シーズンのサンクトペテルブルク・スタジアムでの公式戦総観客動員数100万人突破を記念したイベント、来シーズンの新ユニフォームのお披露目兼プレゼント企画など。さらに、試合後にはファイズリンと共にこちらも今シーズン限りでの退団が発表されていた元イタリア代表のドメニコ・クリシートの退団セレモニーも盛大に行われた。2011年6月から所属しているクリシートは、ゼニトで公式戦224試合出場20ゴールを記録。主将としてもチームを牽引し続けたプレーヤーである。試合前から元ゼニト所属の選手たちからビデオメッセージが届き、セレモニーでも多くのファンからの熱いエールが送られ、如何に沢山の人々から愛された選手だったかが分かる時間であった。

[写真]=FC Zenit

 さて、肝心の試合はと言うと、クリシートとファイズリンを最高の形で送り出そうと来シーズンの新ユニフォームに身を包んで戦ったチームは、前半3得点、後半3得点のゴールラッシュで6-0と快勝。特に、直近発表されたW杯に臨むロシア代表の予備登録メンバーにも選出されているアレクサンドル・エロヒンが4得点と大暴れし、W杯での活躍も期待せずにはいられないプレー内容であった。この日の勢いそのままに、来シーズンこそは14-15シーズン以来のリーグチャンピオンを奪還してくれることだろう。これで17-18シーズンの全日程が終了したチームは、オフを挟んでW杯に出場する選手を除くメンバーで6月中旬から来シーズンに向けて再始動する予定である。

[写真]=FC Zenit

 ゼニトからは、ロシア代表の予備登録メンバーに7名(内事前キャンプには5名が招集)、アルゼンチン代表の予備登録メンバーに1名の選手がすでに選ばれている。他にセルビア代表での選出も期待されている。ロシア代表を始めとしたゼニトの選手のW杯での活躍にもぜひ注目をして欲しい。

Welcome to サンクトペテルブルク!

 サンクトペテルブルク・スタジアムでの17-18シーズンの最終戦も終わり、5月末にはスタジアムもW杯の運営チームの下で稼働し始める。公共交通機関、ボランティア、スタジアム運営の予行演習も終え、あとはこの街も世界中からやって来るサッカーファンを迎え入れるのみとなった。街で様々な人に話を聞いてみると、W杯の試合がこの街で見られることも勿論だが、期間中世界各国からやって来る人々と知り合い、仲良くなれることを心より楽しみにしている人も多くいた。W杯観戦にロシアに来られる皆さんは、白夜シーズンのサンクトペテルブルクまでぜひ足を延ばし、サッカーだけでなく、美しい街並みと芸術で彩られたこの街を堪能してくれることを願うばかりである。

文=井ノ口孝明

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