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加速するタイ人選手のJリーグ移籍の動き―チャナティップの次にJクラブへやって来るのは誰だ―

2017.12.16

チャナティップ(上)に続き日本へやって来るタイ人選手は誰なのか。(下段、左から)トリスタン・ド、ティーラシン・デーンダー、ティーラトン・ブンマータン

北海道コンサドーレ札幌で目覚ましい活躍を見せるタイの国民的スター、チャナティップ。その存在がタイ人選手のJクラブ移籍を加速させようとしている。チャナティップに続き日本へやって来るタイ人選手は誰なのか。その候補選手に迫る。

文=本多辰成
写真=ゲッティ イメージズ

■国民的スターの活躍

タイの国民的スター、チャナティップ・ソングラシン。所属する北海道コンサドーレ札幌で絶大なインパクトを残している


 2012年から「アジア戦略」を推進してきたJリーグにとって、今年は節目のシーズンとなった。戦略のスタートから重視してきた国であるタイ出身のJリーガーがついに誕生したからだ。

 何と言っても7月にムアントン・ユナイテッドからの期限付き移籍で北海道コンサドーレ札幌に加入し、タイ人初の選手となったチャナティップ・ソングラシンのインパクトは絶大だった。加入以来、ほとんどの試合でスタメン出場。確かな技術と素早く的確な判断で攻撃の起点となり、残留争いをするチームにあって欠かせない存在となった。「アジア戦略」を背景にやって来たチャナティップだけに、その能力に懐疑的な見方も少なからずあったはずだが、単にマーケティング目的で送り込まれた選手ではないことをピッチで証明した。Jリーグと札幌が「アジア戦略」の命運を懸けて獲得に力を注いできたタイの国民的スターの順調な滑り出しは、他のJクラブのタイ人選手に対する見方にも大きな影響を与えるに違いない。

 実際、東南アジアからのJリーガー誕生に尽力しているJリーグ国際部の小山恵氏は、その点についてすでに変化を感じ始めているという。「チャナティップの活躍と『提携国枠』によって、これまでタイ人選手にそれほど興味を示していなかったクラブも含めて関心が高まっているのを感じます。ティーラシン、ティーラトン、トリスタン・ドーといったトッププレーヤーには多くのクラブが興味を示しています」

 チャナティップがJ1で戦力となることを示し、さらに今シーズンから設けられた「提携国枠」によってタイ人選手は日本人と同じ扱いで試合に出場できることから、各クラブのタイ人選手への関心は確実に高まっているのだ。

■注目のタイ人選手たち

左から、トリスタン・ドー。ここ数年、評価を高めつつあるタイ代表の右サイドバック。タイとフランスのハーフ。ティーラシン・デーンダー。2010年代に入ってから「東南アジア最高の選手」と評されてきた万能ストライカー。ティーラトン・ブンマータン。Jリーグ移籍のうわさが常にあり、今シーズンもC大阪が興味を示しているという報道が


 チャナティップが切り開いた道を進み、次にJリーグへやってくるタイ人選手は誰なのか。小山氏が挙げたティーラシン・デーンダー、ティーラトン・ブンマータン、トリスタン・ドーの3選手は以前からJクラブにマークされてきた存在。3人ともムアントン・ユナイテッドの所属で今シーズンのAFCチャンピオンズリーグを戦っており、チェック済みのJクラブも少なくないだろう。
 
タイ代表の10番を背負うティーラシンは、2010年代に入ってから「東南アジア最高の選手」と評されてきた万能ストライカー。2014年にはスペイン1部のアルメリアへ期限付きで移籍し、スペインリーグでプレーした初のタイ人選手となっている。

 20代前半の頃のスピードはなくなったが、29歳となった現在も質の高い老練なプレーを見せている。今シーズン、ACLの決勝トーナメントで対戦した川崎フロンターレの鬼木達監督は「チャナティップ以外で印象に残った選手は?」というタイメディアからの質問に対して即答で彼の名前を挙げ、「他の選手とは質が全く違う」と言い切った。

 高い技術と精度の高い左足でタイ代表の左サイドバックを任されるティーラトンも、ブリーラム・ユナイテッド時代からACLでJリーグ勢を苦しめてきた。特に2015年にガンバ大阪を相手に見せたフリーキックとコーナーキックからの直接ゴールは衝撃的だった。Jリーグ移籍のうわさは常にあり、今シーズンに入ってからもセレッソ大阪が獲得に興味を示しているという報道がされた。さらに、フランスとのハーフ選手でタイ代表の右サイドバックを務めるトリスタン・ドーも近年評価を高めている。今シーズンのACLでは、ホームでの鹿島アントラーズ戦で試合終了間際に右サイドを駆け上がって決勝点をアシストした。

 だが、タイのトップ選手たちのJリーグ入りには依然として障害も存在するとあるエージェントは指摘する。「トップ選手たちはタイで3000万円ほどの年俸をもらっていますし、移籍金も安くない。Jクラブとしては、それだけの金額を出すなら計算のできる日本人やブラジル人などを取った方がいい、となる可能性もあるでしょう。そう考えると、タイ人のJリーグ移籍は若手からというのが現実的かもしれません」

 すでに今シーズン、共にU-23タイ代表である18歳のシティチョーク・パソと20歳のジャキットが、それぞれ鹿児島ユナイテッドとFC東京u-23でJ3を戦っている。FC東京やC大阪などは提携するタイのクラブから継続的に若手選手を練習生として受け入れてもいるだけに、才能あるタイの若い選手をJ3から育てていくという流れが生まれる可能性も考えられる。

 いずれにせよ来シーズン以降、タイ人選手のJリーグ移籍の動きが加速することは間違いないだろう。

By サッカーキング編集部

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