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2017年上半期アジアサッカーまとめ・Jリーグ関連では圧倒的に話題豊富なタイ

2017.06.26

 6月も末に差し掛かり、2017年もいよいよ半分が過ぎ去ろうとしていますが、ここで、2017年のJリーグアジア戦略およびアジア各国のサッカー動静について、日本と関わるものを中心に振り返ってみたいと思います。

 この半年間、アジア各国で一番目立った動きを見せたのはタイでしょう。年明け早々にToyota Mekong Club Championshipで、メコン地域のクラブ王者決定戦を制したのを皮切りに次々と話題をかっさらってきました。

 何と言っても、タイ代表で、かつACLにも出場したチャナティップ・ソングラシン選手のコンサドーレ札幌への移籍発表です。

 この移籍に伴い、タイにおけるJリーグに関する露出がものすごく増えています。そして、現地の大手通信会社が運営する放送局True VisionsがJリーグの放送をはじめました。つまりJリーグのタイへの放映権が売れた、ということです。

 発表は年初に行われたが、所属するムアントン・ユナイテッドがACLに出場することもあり、ACLの敗退が決まってから、実際に移籍することになりました。つい先日、タイ人の日本語通訳とともに日本の空港に降り立った際には、人気テレビ番組「YOUは何しに日本へ?」の取材陣と遭遇し、期せずして(?)全国一般テレビ放送の電波に乗ったのも話題の裏返しとも言えるでしょう。

 当然ながら日本での話題よりも、地元タイでの話題のほうがはるかに大きく、チャナティップがコンサドーレの練習に初参加した様子が、インターネットでライブ配信されたときには、200万ユーザにリーチするなど、異常な注目ぶりとなっています。

 Jリーグプレシーズンの2月には、Jリーグがタイにおいて「Jリーグアジアチャレンジ・インターリーグカップ」と銘打ったトーナメントを主催し、鹿島アントラーズと横浜Fマリノスがタイのクラブチームと対戦しました。チャナティップの移籍の周りでもこれだけの事が同時に動いており、Jリーグがタイに力をいれていることがみてとれます。この「Jリーグアジアチャレンジ」は今後3年間にわたりJリーグとの提携国にて開催される予定になっていますが、来年の開催地はまだ発表されていません。

 ちなみにチャナティップは7月から選手登録予定とのことですが、J3鹿児島ユナイテッドにはひと足早く、「ヤー」ことシティチョーク・パソ選手が2月から加入しており、試合にも出場している。また、カンボジア代表のエースストライカー、チャン・ワタナカ選手も1月からJ3の藤枝MYFCに加入しています。

 昨年は、ベトナム人選手が水戸ホーリーホックや横浜FCに移籍をしたり、アビスパ福岡がベトナム代表と対戦、湘南ベルマーレが現地の大会に参加したりと話題に事欠かなかったベトナムですが、今年はいまのところあまり主だった話が出てきていません。サッカーメディア的には地味なニュースですが、昨年ベトナム航空のスポンサーシップで話題になった水戸ホーリーホックが、「ホーリーホック・スマートアグリ・プロジェクト」というIoT農業プロジェクトを開始し、茨城大学や、サン電子、キャノンマーケティングジャパンなどどいった大手企業とともに、国際ビジネスのプラットフォームとしてその役割を演じているのは要注目です。

 また来年はベトナム・日本が外交関係樹立45周年ということもあり、以前も周年事業としてビンズンFCとの交流を促進していた川崎フロンターレをはじめとした各クラブが何らかのアクションを起こすことは予想できます。今年ACLにも出場した川崎フロンターレは、この夏にはこのベトナムの地で行われる海外インターンシッププログラムにも後援しており、ベトナム始め、海外での活動に力をいれようとしています。

 中国・インドといった巨大市場を抱える両国にも日本サッカーに関する話題は少ない。中国クラブがACLで好成績を残しており、現時点においてもアジア東地区の4強を日本と二分している状況とは言え、莫大な移籍金や年俸でビックネームの選手や監督を獲得するというニュースにも飽食気味です。(日本に来るとなれば、大騒ぎになるような話ですが・・・) 逆に言うとそれだけ中国サッカーの発展ぶりを事実として受け入れてしまっている日本の状況が伺えます。

 インドではスーパーリーグの話でしょう。日本のサッカーファンが気が付かない間に、着々と拡大、発展を続けており、一国に2リーグあるということで一時期はFIFAからも睨まれていたスーパーリーグが、つい先日、FIFAから1部リーグとして公式にFIFAに認められました。(いままでのI-Leagueが2部という位置づけになる) 今後、下期にかけて諸々整備されてくるものと思われます。しかしながら、Jリーグとしては、中国やインドとの交流はまだまだこれからと言えます。

 ミャンマーではビジネス絡みが少し話題になりました。先日、大手新聞社でもとりあげられた横浜Fマリノスのアジアパートナー制度。スポンサーである協和医療機器社のミャンマー進出など、徐々にその成果が目に見えるようになってきています。加え、アルビレックス新潟ミャンマーが、現地の障がい者サッカーチームへの支援で、キリンホールディングスが買収したミャンマーブルワリー社とともに活動を行っています。

 アルビレックス新潟といえば、その海外拠点の本社があるシンガポールで、1部リーグ「S-League」で昨年の優勝の勢いをそのままに首位を疾走しています。同じくS-Leagueのゲイラン・インターナショナルFCと業務提携をした松本山雅FCも、ユースコーチを派遣しているものの、その他に主だった動きを見せていません。

 夏休みには、上記のフロンターレと同様、アビスパ福岡がシンガポールの地で、海外インターンシッププログラムを実施予定。(2月にはベトナムで実施済み)

 アジアのゲートウェイシティとも呼ばれる福岡が、今後どのように海外・アジアでの活動を増やしていくのかにも注目したい。

 そのシンガポールでは7月にICC(インターナショナル・チャンピオンズ・カップ)がはじめて同国で行われる。経済大国でありながらも、東南アジアにおいても「サッカー後進国」と呼ばれてしまうシンガポールだが、チェルシー、バイエルン、インテルという欧州強豪がこの地で東南アジアマーケティングの先陣を切る。

 最後に少しマレーシアサッカーの話題を。数人の日本人サッカー選手が所属するくらいであまり日本サッカー界的には話題に上らない同国のサッカーだが、今年2017年は、1997年の「ジョホールバルの歓喜」から20周年を迎えます。当時、日本代表サポーターで埋め尽くされた古びた地方の競技場だった「ラーキンスタジアム」は、4年前にオーナーに就任したジョホール州皇太子の影響で生まれ変わり、サッカークラブごと真新しくリニューアルされました。「ジョホール・ダルルタクジム」というクラブ、2月に行われたACL予備予選でガンバ大阪と対戦したことで知っている方もいるかもしれない。(このクラブは、コンサドーレ札幌とパートナーシップ契約をしています)

 今年の12月22日には、この記念すべきスタジアムに、当時の日本代表がはじめてワールドカップ出場を決めた、メモリアルギャラリーがオープンし、その開所を祝して、当時の日本代表選手たちが同じピッチに立ち、チャリティ・フレンドリーマッチを行うことになりました。日本のサッカーファンたちも、「聖地」として度々訪れる人が後を絶たないらしいが、また新たな巡礼スポットができる。まだ参加選手や監督が正式発表されていないが、今後続々と発表されていくことになるでしょう。今年は年末にジョホールバル観光するというも一興かもしれません。

文:四方健太郎
協力:アジアサッカー研究所

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