2015.07.08

ジェラード、ランパード、ピルロ…なぜスター選手はアメリカを目指すのか?

ジェラード
7月からMLSのLAギャラクシーに加入するジェラード [写真]=Getty Images

 7月になり、いよいよスティーヴン・ジェラードが正式にロサンゼルス・ギャラクシーの一員となった。元リヴァプールの英雄はすでにLAへと渡り、本拠のファンに“お披露目”されている。早ければ7月11日のクラブ・アメリカ戦でデビューする見込みだ。

 6月末にロサンゼルス国際空港へ到着したジェラード一家は、早速パパラッチのカメラのフラッシュに出迎えられた。だが、意外にもファンは10人程度しか集まっておらず、サインを求めたのはリヴァプールやイングランド代表のシャツを着た人ばかり。どこか寂しい気もするが、ギャラクシーのファンも“スター上陸”にはもう慣れっこなのかもしれない。

 それもそのはず、ギャラクシーに限らず、今のMLSには豪華絢爛なスターがそろう。カカ(オーランド・シティー)やセバスティアン・ジョヴィンコ(トロント)、ダビド・ビジャ(ニューヨーク・シティー)は3月の開幕からすでにゴールを連発しているし、4カ月遅れで渡米してきたフランク・ランパード、さらにはユベントスを退団して「違う刺激やモチベーション」を求めたアンドレア・ピルロも、これからビジャのチームメートになる。

 デイヴィッド・ベッカムが去り、ここ1年でもティエリ・アンリやランドン・ドノヴァンが引退し、ティム・ケイヒルも中国に新天地を求めたが、そんな影響を感じさせない勢いが、MLSにはみなぎっている。

 なぜ、スターたちはアメリカを目指すのか。生活環境がよく、クラブの組織や給料も悪くない。それでいて欧州よりもリーグの競争力が劣るであろうアメリカで、キャリア晩年を優雅に過ごせる。これが一般的なイメージだろうか。

 NYレッドブルズで活躍するブラッドリー・ライト・フィリップス(元イングランド代表MFショーンの義弟)はこう証言する。

「ここに来て最初の2週間でもう帰りたくないと思った。アメリカの気候やライフスタイルが素晴らしいからだ。毎週のように、電話で英国の選手から『そっちに行きたい』と言われるよ」

 また、アメリカという地への憧憬も理由のひとつかもしれない。たとえば、昨年12月に英2部イプスウィッチをクビになったアイルランド代表DFショーン・セントレジャーはオーランドのトライアルを受け、今年からMLSでプレーしている。そしてつい先日には、歌姫テイラー・スウィフトとの2ショット写真をSNSに掲載して英国中を驚かせた。つい半年前は2部で戦力外だった無名の選手が、カカと並んでプレーし、世界的セレブと出会えるのだ。そんな“アメリカンドリーム”に憧れる選手が多くいても不思議はない。

 ジェラードの場合も、新居は西海岸のリゾートビーチ、マリブの高級マンション(資産価値32億円、1年半で賃料2億円!)に決まっている。曇り空のマージーサイドでしか暮らしたことがない男が、太陽が輝く異国の地で生活し、娘たちを育ててみたいと思う気持ちは理解できる。それに、故郷では満足に外食すらできなかったという彼も、セレブばかりのLAでなら人目を気にせずレストランで家族と食事を楽しむこともできそうだ。

 ただし、MLSではプレッシャーを感じることなく気楽にプレーできる、という認識は改めた方がいい。それを警告するのは、「MLSの“特別指定選手”には常に大きな重圧がある」と語るギャラクシーの主将ロビー・キーンだ。

 MLSはサラリーキャップ制を導入し、選手個々の年俸やチームの年俸総額に上限を定めている。だが、ベッカム加入を機に、各クラブ最大3人までサラリーキャップが適用外になる“特別指定選手”枠が設けられた。推定年俸600万ドル(約7.5億円)と、プレミア時代と比べれば劣るもののMLSでは破格の給料を受け取るジェラードもこれに該当する選手。だからこそ失敗は許されない。特別指定選手はチームを勝利に導くだけでなく、クラブとリーグの“広告塔”でなければいけない。欧州リーグとはまた違った精神的負担を強いられることを理解しているキーンは、ジェラードが“キャリアの余暇”を過ごせるとはみじんも思っていない。

 さらにキーンはこう続ける。

「多くの人々はキャリアの最後を過ごすために、休暇を満喫するために選手がここへやってくると思っている。だが、そうではない。ここはとてもタフなリーグ。ベッカムが去った後も水準を保ち続けているし、今後5~6年で大きな、大きなリーグになりえると思っている」

 20年前、世界最高のリーグだったセリエAからジャンフランコ・ゾラやジャンルカ・ヴィアリ、ルート・フリットがイングランドに活躍の場を求め、新鮮な風を吹かせたことがプレミア人気を押し上げる一因となった。前出のブラッドリー・ライト・フィリップスは、今のMLSとかつてのプレミアリーグに類似点を見出す。

「(プレミアと)同じ方向に進んでいるように感じる。たくさんのレジェンドたち、誰もが愛する選手たちがやってきている。何かが起こりそうな気がしているよ」

 ESPNの調査によれば、MLSは12歳~17歳の層にかなり支持されており、NFLやNBAには及ばないものの、実はMLBとは同等の人気を誇るという。リーグの新規参入組であるNYシティーも、ここまで1試合平均およそ3万人もの観客動員数を記録しており、ランパード&ピルロ加入でさらに盛り上がりそうだ。

 サッカー不毛の地と言われがちなアメリカだが、MLSは未来ある立派な成長産業であり、もはや単なる選手の「老人ホーム」ではない。

 もちろん、ジェラードやランパード、ピルロらもこうした事実は見聞きした上で移籍を決断しているはず。彼らのアメリカ挑戦は、れっきとした新しいチャレンジなのだ。

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