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広州恒大、アトレティコ、インテル…サッカー界に増加するアジア人大富豪資本

2014.10.10

広州恒大の試合を観戦するオーナーのジャック・マー氏(右) [写真]=ChinaFotoPress via Getty Images

 2014年9月19日にニューヨーク証券取引所に上場し、時価総額が2285億ドル(約25兆円)に達し、米ネット通販大手アマゾン・コムを上回った。上場により約250億ドル(約2.5兆円)にのぼる資金を手にした中国ネット業界の巨人アリババ。この企業を実質的に率いるのが、アリババを創設し、世界最大級のB2Bサイトに育てた会長のジャック・マー氏だ。同氏は現在、ソフトバンクの取締役を務め、日本の孫正義氏とも縁深い存在である。

 中国国内で、通販サイト「淘宝網(タオバオ)」や「天猫(Tモール)」を手掛けているアリババは、今年6月、中国最大のクラブ「広州恒大」の株式を50%取得することで合意、株式取得額はおよそ1.92億ドル(約197億円)にのぼると中国の国営メディアで報じられた。その後、クラブは名称を「淘宝網」を想起させる広州恒大淘宝へと変更、さらに8月には20社の投資家を招き入れ、さらに270億円を調達することを明らかにしている。

 広州恒大は、昨年、名指揮官マルチェロ・リッピのもと、中国のチームとして初めてアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制している強豪だ。アリババによる買収劇以前も、ドルトムントから元パラグアイ代表FWルーカス・バリオスを引き抜き、今年1月には元イタリア代表FWアレッサンドロ・ディアマンティを獲得していた。

 その広州恒大における、「アリババ効果」は早速現れている。7月には、パルマ、ミランなどで活躍した元イタリア代表FWアルベルト・ジラルディーノを約6億1000万円で獲得し、マーケットの話題をさらった。今後も、世界有数の資金をもとに、アジア圏最大のクラブとして台風の目となっていくだろう。

 アリババにとってこの買収は、自社の商取引サイトに安定的に利用者を呼び込み、引き留めるのが狙いだ。中国国内におけるスマートフォン市場が急速に成長するなか、PCでの利用がメインであるアリババにとってモバイルでのユーザー獲得は急務になっている。

 同市場にはチャットアプリ「WeChat」を運営するテンセントという強力なライバルも存在しており、市場攻略はアリババと言えど簡単な話ではない。すでにアリババは、動画共有サイトの株式を取得するなど、積極的に娯楽分野へ進出している。

 だが、アリババのオーナーであるマー氏にとっての狙いはそれだけではない。

 10月6日には、中国不動産大手のワンダ・グループ会長であり、2013年に中国国内の長者番付で1位となった王健林氏が、アトレティコ・マドリードに資本参加することが明らかとなった。また、最近ではシンガポールの投資家ピーター・リム氏がバレンシア買収を内定、インドネシアの大富豪エリック・トヒル氏がインテルの会長に就任しているのは記憶に新しい。

 自社のマーケティングに活用できるだけではなく、クラブを所有することはこれら大富豪自身のステータスを高めることにつながっている。マー氏もその一人と言えるだろう。そして、今後もこのトレンドは止まりそうにもない。

 Jリーグでは、現在外資の参入が規制されており、このような大富豪がクラブオーナーに就任することはないが、個々のクラブ経営は決して芳しいとはいえない。国内リーグの活性化や、安定的な経営基盤をつくるためにも、海外資金を呼びこむことは現実的手段である。外資参入解禁に対する圧力も一層拍車がかかることだろう。

(記事/ZUU online)

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