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王国ブラジル、世界王者スペイン撃破の意義…混沌とした新時代への突入

コンフェデ杯はブラジルの3連覇で幕を閉じた [写真]=FIFA via Getty Images

 まさに、祝祭だった。そして、祭りのはじまりは唐突だった。

 試合開始2分に、早くも怒号にも絶叫にもとれるような歓喜が爆発する。右サイドのフッキが上げたクロスからゴール前で混戦が生まれ、フレッジが倒れ込みながらシュートをねじ込む。泥臭いゴールながらも先制に成功したブラジルは、一気にスペインを飲み込みにかかった。

 7万人を越える観衆も、キックオフ前から開催国を後押しする。短縮された国歌斉唱の伴奏が終わっても、スタジアム全体によるアカペラは最後まで続き、ボルテージを極限まで高める。開始早々のフレッジによる先制弾に早くも狂喜乱舞し、ダヴィド・ルイスが驚異的なクリアを見せれば、割れんばかりの拍手を送った。

 圧倒的な声援を背にしたブラジルは、序盤でリードを奪うとともに、鋭い出足でスペインの選手に襲いかかる。しかし、決して観衆の作り出す熱情に浮かされるだけではなかった。

 前半終了時点でFIFAが弾き出したボールポゼッションは、ブラジルが41パーセントで、対するスペインが59パーセント。選手と観客からのハイプレッシャーを受けてもボールを失わないアンドレス・イニエスタを中心にスペインが盛り返しを見せようとすれば、張り合うことではなく、柔軟にカウンターへシフトすることで次々と絶好機を作り出す。若い選手が多いながらも、ただ単に勢いに任せたプレーではなく、彼我の差を見極めた老獪さで点差を広げていった。

 44分にネイマールが追加点、47分にフレッジがチーム3点目を挙げると、スタンドではいよいよ祝祭の色が濃くなる。3失点目には誰もが肩を落としたスペインを尻目に、パスが回れば「オーレ」の大合唱がスタジアムを包み込み、試合開始前の張り詰めた緊張感はいつのまにかに消え去り、戴冠までの時間を楽しむかのように時が流れていく。

 一方で、選手達の集中は最後まで途切れなかった。55分に微妙な判定で与えたPKも、セルヒオ・ラモスのシュートは枠を外れる。他のピンチもGKジュリオ・セーザルの好セーブもあり、スペインを最後まで沈黙させた。

 開幕から5連勝で史上初の大会3連覇を果たした今となっては、開幕前の不振は嘘のようである。スタジアムを埋め尽くした観客の情熱と勝利をつかむための堅実なサッカーで、世界王者のスペインを完膚なきまでに叩きのめした。2011年のコパ・アメリカ、昨夏のロンドン・オリンピックでは頂点に届かず、今回はホーム開催でもあった。喉から手が出るほど欲しかったはずのタイトル獲得である。今大会の実績、経験が若いチームにさらなる自信を与えることに間違いはないだろう。

 そして、王国が29試合続いた世界王者の公式戦無敗記録を止めたことで、世界のサッカーは再び混沌に包まれることになる。

 絶対的だと思われた王者が完敗を喫したことで、今後スペインと対する国々は過剰な畏怖を抱くことはなくなるだろう。それだけ、ブラジルが見せつけた王者攻略の糸口とその成果は意味深い。

 一足先にクラブシーンでスペインを主役の座から引きずり下ろしたドイツや、リオネル・メッシを擁するアルゼンチンなどの強国達は、新たな時代を作り出すための十分な実力を蓄えている。もちろん、決勝を迎えるにあたりPK戦にもつれた準決勝を戦った上で、休養日が1日少なかったスペインも、おいそれと時代の主導権を明け渡すとも思えない。

 そして、ブラジルである。彼らにも祭りが終わったことでの満足感、あるいは空虚感というものは皆無である。

 ルイス・フェリペ・スコラーリ監督は優勝を決めた直後の会見で、「我々はまだ道のりの途中にいる」と語り、再び開催国として迎える祭典へ思いを馳せた。

「来年のワールドカップは、より強く厳しい大会だと考えている。自信を持って突き進む、そのプロセスの最中なんだ」

 ブラジル人の熱に浮かれたような祭りは、ついに終焉を迎えた。混沌とした時代への突入と、1年後に控える新たな祭りに向けたはじまりの合図とともに。

文●小谷紘友

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