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オッズ“201倍”の大躍進、PKの明暗、ゴール記録…ワールドカップ準々決勝を総括

2022.12.11

準々決勝4試合にそれぞれのドラマ [写真]=Getty Images

 熱戦が続くFIFAワールドカップカタール2022も佳境を迎え、ベスト4が出揃った。「アルゼンチンvsクロアチア」、「フランスvsモロッコ」の準決勝も楽しみだが、その前に4試合とも死闘となった準々決勝の戦いを振り返っておこう。

■堅守のモロッコが大躍進

[写真]=Getty Images

 モロッコの勢いが止まらない。グループステージでFIFAランク2位のベルギーを2-0で退けて36年ぶりに決勝トーナメントに勝ち上がった彼らは、ラウンド16でスペインをPK戦の末に下して同国史上初のベスト8に進出。そして現地時間10日に行われた準々決勝のポルトガル戦では1-0の完封勝利を収め、アフリカ勢として初めてW杯でベスト4に入った。

 彼らの戦いの基盤となっているのは、統率の取れた守備だろう。今年8月にワリド・レグラギが監督に就任して以降、同指揮官の元では今大会を含めて8試合でわずかに1失点。それが、今大会のグループステージ第3戦のカナダ戦で喫したDFナイフ・アゲルドのオウンゴールだ。彼らは921分間で1点しか奪われていないのである。

 準々決勝のポルトガル戦では、それまで4試合とも先発出場していた4バックのうち2名がケガで欠場し、キャプテンのロマン・サイスも試合中に負傷交代。それでも彼らの堅守が揺らぐことはなく、見事に勝利を収めてアフリカの歴史を塗り替えて見せた。

■201倍からベスト4

[写真]=FIFA via Getty Images

 大会前、英国ブックメーカー『ウィリアムヒル』社の優勝オッズでモロッコは23番目(32チーム中)という低評価だった。彼らの優勝オッズは201倍。3戦全敗でグループステージ敗退となったカナダ(151倍)よりも低かったのだ。それでも下馬評を覆し、名だたる強豪を退けてベスト4まで勝ち上がってきた。

■エトーの予想的中?

 現役時代にバルセロナで活躍した元カメルーン代表FWサミュエル・エトーは、今大会前に大胆な予想をしていた。出場したアフリカの5チーム(モロッコ、セネガル、チュニジア、カメルーン、ガーナ)が全てグループステージを突破すると予想したのである。

 そしてベスト4にはモロッコ、セネガル、カメルーンのアフリカ勢3チームが勝ち上がり、最終的にはカメルーンとモロッコの決勝戦になることを予想した。これは予想というよりも、むしろ願望なのだが、モロッコの躍進によって彼の“予言”が注目を集めている。というのも、エトーはモロッコの勝ち上がりを的中させているのだ。

 現カメルーンサッカー連盟会長は大会前、モロッコがグループステージを1位通過すると予想。そしてラウンド16でスペイン、準々決勝でポルトガルを倒すことまで予想していた。さらに準決勝ではフランスを退けると予想しており、そこでも彼の予言が的中する可能性がある。ちなみに、それ以外の予想は見当外れもいいところ。彼の予想ではカタールがベスト8に入っていたのだ。

■PK戦の明暗

[写真]=Getty Images

 準々決勝の残り3試合は、完全に“PK”の実力差が結果に現れた。

 クロアチア対ブラジルでは“90分以降に強い”クロアチアの底力が存分に発揮された。準優勝に輝いた2018年大会から数え、クロアチアはW杯の決勝トーナメントで6試合を戦っているが、そのうち5試合が延長戦に突入。90分内での決着となった前回大会の決勝ではフランスに敗れたが、延長戦までもつれた残りの5試合は全て勝ち上がっているのだ。そのうち4試合がPK戦。今大会もラウンド16の日本戦に続き、準々決勝のブラジル戦もPK戦の末に勝利を収めた。これでW杯のPK戦は4戦全勝。ドイツと並び、PK戦の勝率100パーセント記録を4試合まで伸ばしている。

 アルゼンチンもPK戦でオランダを退けた。アルゼンチンは、これがW杯で歴代最多となる6度目のPK戦。そして歴代最多の5勝目を挙げたのだ。彼らのPK戦での唯一の敗戦は、2006年ドイツ大会の準々決勝。その時の相手は、PK戦における“絶対王者”のドイツだった。PK戦は運の要素が強いはずだが、間違いなく優劣がつき始めている。

 イングランドもそのPKに泣かされた。フランスとの準々決勝では試合中に2本のPKを獲得。エースのハリー・ケインが1本目を沈め、ワールドカップで歴代最多となる通算4本目(18年に3本、22年に1本)のPKによるゴールを決めた。しかし同選手は、1点ビハインドで迎えた84分に2本目のPKをバーの上に大きく外してしまい、チームもそのまま1-2で敗れることに。W杯の歴史において、1試合のうちにPKで成功と失敗の両方を経験した選手は、1990年大会のチェコスロバキア代表のミハル・ビーレクに続いて史上2人目だという。

 イングランドが“PK”を外して敗退するのはお馴染みの光景だ。彼らはワールドカップとEUROを合わせて「PK戦」の戦績は2勝7敗。ガレス・サウスゲイト監督も現役時代に、1996年の欧州選手権でPKを失敗して敗退した経験があるのだ。

■ゴール記録

[写真]=Getty Images

 2本目のPKを決めることができなかったケインだが、1本目のPKによる得点がイングランド代表での通算53ゴール目。これでウェイン・ルーニーが持つ同国の歴代最多ゴールに並んだことになる。しかも、ルーニーが115試合で達成した記録に、わずか80試合で追いついて見せたのだ。

 対するフランス代表FWオリヴィエ・ジルーも、イングランド戦での決勝点が代表通算53ゴール目だった。同選手は、既にティエリ・アンリが保持していたフランス代表の歴代最多ゴール(51点)を抜き去って記録を更新中だ。

 ブラジルでは、ネイマールが準々決勝のクロアチア戦で代表通算77ゴール目をマークした。チームは惜しくもPK戦の末に敗れたが、これでペレの持つ同国の歴代最多ゴール記録に並んだことになる。

 モロッコのFWユセフ・エン・ネシリも新記録を打ち立てた。ポルトガル戦での打点の高いヘディングによる決勝ゴールが、W杯での自身通算3ゴール目。同国のワールドカップにおける歴代最多ゴールを更新したのだ。

 アルゼンチンのFWリオネル・メッシも偉大な記録に並んだ。オランダ戦のゴールが自身のワールドカップ通算10点目。これでガブリエル・バティストゥータが持つW杯におけるアルゼンチン人選手の歴代最多ゴール記録に並んでおり、準決勝以降で記録更新に期待が寄せられる。

 さらにメッシはDFナウエル・モリーナのゴールをアシストしており、これでワールドカップの決勝トーナメントで通算5アシスト目。ペレが持っていた4アシストの記録を更新してみせた。

 そしてメッシはW杯の歴代最多出場記録の更新も確実視されている。今回のオランダ戦が通算24試合目の出場となり、ドイツの英雄であるローター・マテウスが持つ25試合まであと1試合に迫っている。ケガさえなければ、準決勝で世界記録に並び、決勝戦、もしくは3位決定戦で新記録を打ち立てることになる。

(記事/Footmedia)

By Footmedia

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

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