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王者の惨敗、開催国の意地、VAR、追放、賭け、乱入…ロシアW杯で起きた16の出来事

2018.07.17

[写真]=Getty Images

 16日、4年に1度の祭典が幕を閉じた。6月に開幕した2018 FIFA ワールドカップ ロシア。今大会も約1カ月に渡る戦いの最中で様々なドラマが誕生した。そこで、覚えておきたいロシアW杯で起きた16の出来事をおさらいする。

写真=ゲッティイメージズ

■主役が見せた貫禄のハットトリック


大会2日目、ヨーロッパ王者のポルトガル代表が登場。初戦で実現したスペイン代表とのビッグマッチでは、クリスティアーノ・ロナウドが格の違いを見せつけた。開始4分に自らが獲得したPKを冷静に決めて、早くも今大会初ゴールをマーク。同点とされた44分には左足で強烈なシュートをねじ込み2点目を記録。極め付きは2-3とリードを許した88分、自ら受けたファールでフリーキックを獲得する。これをロナウド自らがシュートを放つと、華麗な弾道を描いたボールはゴールに突き刺さった。ワールドカップ初戦、さらに、レアル・マドリードのチームメイト、バルセロナのライバルたちが名を連ねるスペインを相手にハットトリックを達成してみせた。

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■アルビセレステの大苦戦


ロナウドと同じく今大会の主役候補と目されていたアルゼンチン代表のリオネル・メッシ。しかし、注目度の高さとは裏腹に大苦戦を強いられることに。初戦のアイスランド戦では、メッシのPK失敗が響き1-1のドロー。続く2戦目はクロアチア代表の組織力の前にメッシは完全に孤立。0-3の完敗を喫し、グループステージ敗退の危機に追い込まれた。3戦目のナイジェリア代表との試合は、メッシに今大会初ゴールが生まれるもPKで一時同点に。86分にマルコス・ロホの決勝ゴールでかろうじて今大会初勝利を挙げた。1勝1分1敗でグループ2位に滑り込み、アルゼンチンサポーターの間では、「奇跡」とお祭ムードとなった。しかし、決勝トーナメント1回戦でフランス代表に敗れ、ベスト16敗退。メッシは1得点で大会を去ることとなった。

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■主力FWが1試合で代表チーム追放


アルゼンチンを相手に3発快勝を収めるなど、グループステージ3連勝で首位通過を決めたクロアチア代表。戦績だけ見れば順風満帆だが、裏ではとある事件が起きていた。同国代表だったニコラ・カリニッチは初戦のナイジェリア戦でベンチスタート。後半にはウォーミングアップを行い途中出場に備えた。しかし、ズラトコ・ダリッチ監督が出場を命じると、背中の状態が良くないことを理由にプレーを拒否したのだ。ダリッチ監督によると、開幕前のブラジルとの親善試合や練習でも同様のことがあったという。結果、カリニッチは追放される形で代表チームから離脱した。ワールドカップはベンチメンバーを含め各チーム23名の選手が登録されるが、グループステージ第2戦(アルゼンチン戦)からクロアチアは22名でプレー。なお、開幕後に選手の入れ替えはできないため、クロアチアは決勝トーナメントも22名での戦いを余儀なくされた。

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■前回大会王者が3大会連続でGS敗退


今大会最大の波乱といえば、ブラジルW杯王者のドイツ代表がグループステージ敗退となったことだろう。初戦のメキシコ戦では、相手の高速カウンターに対応できず失点すると、攻撃陣も不発に終わり0-1で敗戦。続くスウェーデン戦は終了間際、トニー・クロースの直接FKが決まり、辛勝を収める。決勝トーナメント進出へ、第3戦は勝利が最低条件となる韓国戦。しかし、プレッシャーからの焦りかゴールを決められない時間が続く。すると、後半アディショナルタイムにコーナキックから失点。後がないドイツはキーパーのマヌエル・ノイアーも前線に上がりゴールを狙うも、ボールを奪われると無人のゴールへ流し込まれ万事休す。FIFAランキング1位の前回大会王者は1勝2敗のグループ最下位で大会を去った。前回大会王者がグループステージで敗退するのは、2010年のイタリア代表(ドイツW杯優勝)、2014年のスペイン代表(南アフリカW杯優勝)に続き、3大会連続となった。

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■南米の雄に4年越しのリベンジ!


悪夢の大敗から4年、日本代表は再びワールドカップの舞台でコロンビア代表と相対した。本戦2カ月前の監督交代や強化試合での不振など、日本は多くの不安要素を抱えていた。迎えたワールドカップ本戦、グループステージ初戦の相手は2014年ブラジルW杯で完膚なきまでに叩きのめされたコロンビア。強力攻撃陣を擁する南米の雄との対戦を前に、日本の前評判は「圧倒的不利」との見方が強かった。しかし、日本はこの逆境を覆す。前半3分、コロンビアのカルロス・サンチェスがエリア内でハンドを犯しPKを獲得。さらに、サンチェスが一発退場となりコロンビアは10人に。このPKを香川真司が冷静に決めて日本が先制。前半終了間際にフリーキックを決められ同点とされるも、コーナーキックから大迫勇也が決めて再びリードを奪う。日本はこのリードを守り切り、試合は2-1で終了。前評判を覆し4年前のリベンジを果たした。

●日本、コロンビアを破り白星発進! 香川PK弾&大迫決勝点で4年前の雪辱

■決勝T進出への賭け 物議を醸した“パス回し”


グループステージ第2戦のセネガル戦で勝ち点1を獲得した日本代表は、第3戦でポーランドと対戦。引き分け以上で自力突破、敗れた場合は同時開催の試合でセネガルが勝利を収めるか、コロンビアが勝った場合はセネガルとの得失点差や総得点、フェアプレーポイントでの争いになる、という状況だった。スタメン6人を入れ替えた日本は前半からチャンスを迎えるも、59分に失点し先制されてしまう。その後、宇佐美貴史に代えて乾貴士を投入するなど、同点ゴールを狙った。しかし、74分にコロンビアが先制したことでゲームプランがガラッと変わる。このまま両試合が1-0で終わればフェアプレーポイントにより日本の突破が決まる状況となったため、3枚目の交代カードで長谷部誠を投入。長谷部を中心にリスクを冒さずパスを回しで時間を経過し、タイムアップを迎えた。結果、セネガルがコロンビアに0-1で敗れたため、フェアプレーポイントの差で日本はグループ2位通過を果たした。しかし、ボール回しの最中はスタンドからは大ブーイングが飛び交った。また、セネガルが同点に追いついた場合、敗退の可能性もあっただけに、他力でのグループステージ突破は物議を醸した。

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■ネイマールのオーバーリアクションに非難殺到


メッシ、ロナウドと並び大会前から注目されていたブラジル代表のネイマール。しかし、話題となったのは持ち味の華麗な足技ではなく、ファールを受けた際の振る舞いだった。グループステージ第2戦のコスタリカ戦、ネイマールはエリア内でファールをアピールすると、審判はPKの判定を下す。しかし、今大会から導入されたビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)によってシミュレーションの判定が下され、PKが取り消された。VARによってPKが取り消されたのは史上初のケースだった。同時に審判を欺こうしたシミュレーションが批判を呼んだ。さらに、決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦では、相手DFに足首を踏まれ際の痛がり方が「大袈裟すぎる」「演技じゃないのか?」など、オーバーアクションを疑う声が殺到し、さらに大きな批判を集めることとなった。

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■VAR導入で過去最多のPK数を更新


今大会では、初の試みとしてビデオ・アシスタント・レフェリー制(VAR)を導入。ドイツのブンデスリーガを始め、欧州各国で続々と実践導入されているVARは、試合中に審判の死角でラフプレーが行われたり、誤った判定を防ぐため主審をサポートすることを目的に導入された。大会3日目のフランス代表対オーストラリア代表の一戦で初めて利用されると、グループステージのイラン対ポルトガルではVARによって2度のPK判定が下された。この時点で大会中のPK数は20となり、ワールドカップの最多記録を更新した。レフェリーが得点シーンなどをビデオで確認することができるためミスジャッジが減る一方、これまでファールとされなかったコンタクトに対する判定が厳しくなったと、システムに対する不満の声も多く上がった。

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■“赤い悪魔”との壮絶なる打ち合い


2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を果たした日本は1回戦で、FIFAランキング3位のベルギー代表と対戦した。スコアレスで前半を折り返すと、日本は原口元気のゴールで先制。続け様に乾貴士が追加点を上げ2点のリードを奪う。しかし、69分に1点を返されると、74分には同点ゴールを許してしまう。このまま延長戦突入かと思われた後半アディショナルタイム、日本のコーナーキックからベルギーはカウンターを発動。自陣ゴール前から10秒以内で日本ゴールを陥れ、勝ち越し弾を決めて見せた。このゴールの直後、試合は終了。日本は2-3で惜敗を喫し、またしてもベスト8の壁を破ることはできなかった。それでも、海外メディアが同試合を今大会のベストマッチに挙げるなど、日本の健闘に対し多くの賞賛が寄せられた。

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■4度目の正直でイングランド代表がPK戦初勝利


決勝トーナメント1回戦、イングランド代表はコロンビア代表と対戦した。試合はイングランドがハリー・ケインのPKで先制するも、後半アディショナルにジェリー・ミナが値千金の同点弾をマークしコロンビアが追いつく展開に。試合は延長戦でも決着はつかずPK戦に突入。コロンビアは4人目のマテウス・ウリベ、5人目のカルロス・バッカが失敗。対するイングランドは4人が成功させ、接戦をものにした。過去3度のPK戦全てで敗れてきたイングランドだったが、4度目の正直で歴史的な“初勝利”を手にした。

●イングランドが“4度目の正直”でPK戦を制す! コロンビア下し3大会ぶり8強

■開催国の意地 ロシア代表がベスト8進出


FIFAランキングは出場チーム中最低の70位。ワールドカップ開幕前の親善試合は7試合未勝利。ホスト国ながら全く期待されていなかったロシア代表。「弱い開催国」というレッテルを貼られ、開幕前はグループステージ敗退まで危惧された。それでも、開幕戦でサウジアラビア代表に5-0の大勝スタートを飾ると、続くエジプト代表との第2戦も3-1で勝利。3戦目のウルグアイ戦こそ敗れたものの、2位で決勝トーナメントに進出し、ホスト国の面目を保った。決勝トーナメント1回戦ではスペイン代表と対戦。オウンゴールで先制されるもアルテム・ジュバのPKで同点に追いつく。1-1のままPK戦に突入すると、GKイゴール・アキンフェエフが大活躍。2本のPKをストップしロシアは48年ぶりのベスト8進出を果たした。

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■アザール&クルトワがフランス代表の戦術に不満を漏らす


準決勝ではフランスとベルギーが対戦。サミュエル・ユムティティのゴールでフランスが1-0で勝利を収めた。試合後、フランスの戦術に対し、エデン・アザールとティボー・クルトワが不満を漏らした。アザールは「失望している。フランスは後半ずっと守備的にプレーしていた。でも僕はあんなフランス代表の一員として勝つくらいならばベルギー代表の一員として負けた方がいい」とコメント。さらに、クルトワは「僕たちの前にいたチーム(フランス)は、とてもよく守っていた。ウルグアイ戦の時でも同じだった。その時はフリーキックからゴールを奪った。今日はそれがコーナーキックだった。今日のような試合をしてベルギーが勝てなかったことは、サッカーをしていて恥ずかしいことだ」と皮肉を口にした。なお、クルトワは3位決定戦の直後、フランスを批判した自身のコメントを謝罪している。

●「フランス代表として勝つくらいなら…」敗れたベルギーFWアザールが失望
●GKクルトワ、仏代表の守備的戦術を批判「彼らの強みは守ること」
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■タフで勝負強いクロアチアが見せた“プラス1試合”の奮闘


グループステージではアルゼンチン代表に3-0で勝利するなど、3連勝で首位通過を決めたクロアチア代表。しかし、決勝トーナメントは死闘の連続だった。1回戦ではデンマーク代表とのPK戦に勝利。準々決勝では開催国のロシア代表を相手に、またしてもPK戦を制し、20年ぶりの準決勝進出を果たす。決勝進出を懸けたイングランド代表との一戦は、前半に先制を許す苦しい展開となる。それでもイヴァン・ペリシッチのゴールで同点に追いつくと、3試合連続の延長戦に突入。延長前半にはマリオ・マンジュキッチのゴールで勝ち越し、2-1で勝利を収めた。決勝トーナメント3試合連続で120分間プレー。プラス90分と1試合分多い時間を要しながらも、気付けば同国史上初となる決勝戦へと駒を進めた。

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■母国の対決に豪華OBが粋な賭け


準々決勝、スウェーデン代表とイングランド代表の一戦を前に両国のレジェンドが、SNS上でとある「賭け」を行ったことが話題となった。元スウェーデン代表のズラタン・イブラヒモヴィッチが、自身のインスタグラムを更新し、元イングランド代表のデイヴィッド・ベッカム氏にメッセージを送った。「やあ、デイヴィッド・ベッカム。もし、イングランドが勝ったら、俺は世界中のなんであっても君が望むディナーを奢るよ。でも、もしスウェーデンが勝ったら俺が欲しいIKEAの商品を何でも買ってくれよ。いいかい?」。試合はイングランド代表が2-0で勝利。すると今度はベッカム氏がインスタグラムのストーリーで、イングランドのユニフォームを着たイブラヒモヴィッチの合成写真と共に「再び誰かがウェンブリーにやって来るようだ」というメッセージを投稿。イブラヒモヴィッチも「行くよ。おめでとう」と反応し、賭けに敗れたことを認めた。

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■フィナーレに水を差した乱入劇


フランス代表とクロアチア代表の顔合わせとなった決勝戦では、女3人と男1人がピッチ内に乱入する事件が起きた。4人は警備員らに拘束され、試合は一時中断する事態に。乱入したのはロシアのウラジミール・プーチン大統領を批判するパフォーマンスを続けてきたパンクバンド「プッシー・ライオット」。過去にはプーチン大統領の再選に対する抗議活動としてロシアの大聖堂で無許可のゲリラライブを行うなど、過激な反体制活動を行ってきた。4人は警察官のような姿でピッチ中央付近まで到達し、選手とハイタッチを交わした者もいた。大会運営が称賛されてきた今大会のフィナーレで、初めて警備が出動する事態となった。

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■黄金時代を予感させる20年ぶりの栄冠


今大会の決勝戦では、20年ぶり2回目の優勝を目指すフランス代表と初の決勝進出を果たしたクロアチア代表が激突した。試合は18分、アントワーヌ・グリーズマンがフリーキックからクロスを供給すると、クロアチアのオウンゴールを誘いフランスが先制。その後、一度は同点に追いつかれるも、グリーズマン、ポール・ポグバ、キリアン・ムバッペのゴールで突き放し、自国開催の1998年大会以来となるワールドカップ制覇を果たした。アルゼンチン戦でのスーパーゴールなど大活躍を見せたベンジャマン・パヴァールをはじめ、ウスマン・デンベレ、コランタン・トリッソ、トマ・レマルらは20代前半、決勝戦でゴールを決めたポール・ポグバやレアル・マドリードでも主力のラファエル・ヴァランは25歳になったばかり。さらに、最優秀若手選手賞に輝いたムバッペにいたっては19歳。今大会のメンバー23名の平均年齢は25.57歳と、フランスには才能と将来性にあふれる選手たちが揃っている。ロシアW杯は“レ・ブルー”の黄金時代を予感させる大会となった。

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