FOLLOW US

勝負の鍵を握るのは11メートルの戦い? W杯におけるPK戦のデータをおさらい

2018.06.30

日本がコロンビア戦で得たPKの場面 [写真]=Getty Images

 30日から決勝トーナメント1回戦がスタートする2018 FIFAワールドカップ ロシア。“一発勝負”のトーナメント戦において、様々なドラマを生み出してきたのがPK戦だ。そこで今回は、イギリスメディア『BBC』がまとめたW杯におけるPK戦のデータを紹介する。

<1>PK戦の歴史
 国際サッカー連盟(FIFA)がワールドカップにPK戦を導入したのは1978年大会から。初めてのPK戦は、1982年大会の西ドイツ対フランス(5-4で西ドイツ勝利)だった。以後、前回の2014年大会までに26回のPK戦が行われている。

PK戦

1982年大会の西ドイツ対フランスのPK戦 [写真]=Getty Images

<2>PKの成功率
 これまで実施された26回のPK戦で、選手たちが蹴ったPKの総数は「240」。そのうち成功数は170回で、成功率は70.8パーセントとなっている。データ会社『Opta』によると、もっとも成功率が高いのは、GKから見て左側、それも低めに蹴られたキックだという。一方で、成功率が低いのは、真ん中の低め。成功率は58パーセントまで落ちる。GKが最初から立っている場所に決めるのは、やはり難しいということだろう。

<3>鍵は高め
 前述のとおり、真ん中の低めに蹴られたPKの成功率は6割に満たない。しかし、同じ真ん中でも、高めに蹴られたボールは止められにくい。W杯で、真ん中の高めに蹴られたPKは15本すべてが成功に終わっているそうだ。同じく左右の高めに蹴ったボールも、90パーセント以上の確率で成功している。

 ただし、このデータはあくまで、「ボールがゴールの枠内に飛んだ」という前提のもとに集計されたもの。1994年大会決勝でバーの上に飛んだ有名な1本、イタリアのFWロベルト・バッジョが蹴ったキックのように、高めを狙ってゴールの枠を外すというケースは珍しくない。実際、W杯のPK戦でゴールの枠外に飛んだキックは9本ある。

ロベルト・バッジョ

バッジョがPKを外した場面 [写真]=Getty Images

<4>5本に1本はGKがセーブ
 W杯のPK戦で失敗に終わったキックは、70本を数える。そのうち、GKによるセーブは49本で、20.5パーセントを記録。つまり、5本に1本はGKがストップしている計算になる。PKはキッカーばかりに注目が集まるが、GKにとっても腕の見せどころだ。なお<3>で、ゴールの枠外に飛んだキックが9本あると紹介したが、ポストやバーに当たって失敗したキックも12本ある。

<5>PK戦の最強国/最弱国
 これまでPK戦を最も得意としてきたのはドイツ。過去4度あったPK戦で全て勝利を収めている。勝率100パーセントというだけでなく、過去18本中17本成功(94.4パーセント)と、世界一の勝負強さを誇っている。ただし、今大会はすでにグループステージ敗退が決定している。一方、複数回のPK戦を戦った国で、最も成果を挙げられなかったのは“PK弱小国”としてお馴染みのイングランド。過去3戦3敗と一度も勝ったことがない。日本は2010年の南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦でパラグアイとPK戦を戦い、3-5で敗れている。

▼W杯のPK戦データ
*ロシア大会のベスト16進出国のデータに限る
*左から「国名、PK戦の勝利数/PK戦の回数、(勝率)」

・アルゼンチン 4/5 (80パーセント)
・ブラジル 3/4 (75パーセント)
・フランス 2/4 (50パーセント)
・ポルトガル 1/1 (100パーセント)
・ベルギー 1/1 (100パーセント)
・スウェーデン 1/1 (100パーセント)
・ウルグアイ 1/1 (100パーセント)
・スペイン 1/3 (33パーセント)
・スイス 0/1 (0パーセント)
・日本 0/1 (0パーセント)
・メキシコ 0/2 (0パーセント)
・イングランド 0/3 (0パーセント)

<6>PKは先攻有利
 キッカーにとって、PKはやはり“メンタル”がモノを言う。状況別の数字を見ると、それは一目瞭然だ。主要大会のPK戦を調査する英国の機関によると、コイントスで決める「先攻」、「後攻」の場合、「先攻」のチームが勝つ確率は60パーセントに達するという。また、「先攻」の選手たちのPK成功率が73パーセントであるのに対して、「後攻」の成功率は69パーセント。2010年大会でパラグアイに破れた日本代表が「後攻」だったことからも、説得力のあるデータだと言える。

<7>“8人目”のキッカーに要注意
 W杯のPK戦を分析すると、正規の10本(先行5本と後攻5本)の中で、最も成功率が低いのは全体の8本目(58パーセント)。つまり「後攻チームの4本目」で、このキッカーに重圧が掛かる場面が多いことがわかっている。次に成功率が低いのは全体の10本目。後攻チームの5人目のキッカーで、60パーセントという数字が出ている。平均値が71パーセントであることを考えると、かなり低いと言える。

 なおW杯のPK戦で、両チームが5本ずつ蹴って決着がつかなかったのは2試合だけ。初のPK戦となった、1982年大会の準決勝、西ドイツ対フランス(両チーム6人ずつ蹴って、西ドイツが5-4で勝利)。そして、1994年大会の準々決勝、スウェーデン対ルーマニア(両チーム6人ずつ蹴って、スウェーデンが5-4で勝利)である。

<8>GSではPK乱発
 ビデオ・アシスタント・レフェリー制(VAR)が初めて導入された今大会は、グループステージの48試合で24本のPKが発生。参加国が「32」となった1998年のフランス大会以降では、2002年大会の15本を大きく上回る最多記録となった。本稿では、延長戦を終えたあとに行われる“PK戦”のデータを紹介しているが、これまで以上にPKに大きな注目が集まっているのは間違いない。

VAR

今大会から導入されたVAR [写真]=Getty Images

(記事/Footmedia)

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO