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王者ドイツの衝撃的な敗退、チームが噛み合わなかった3つの要因とは?

2018.06.29

ビルト紙「言葉がない」、エクスプレス紙「失脚」。ドイツ各紙が母国代表の衝撃的な敗退を一面で報じた [写真]=Getty Images

 ワールドカップのグループリーグが終了し、決勝トーナメントに進む16カ国が決定した。その中にドイツの名前がないのは、ここまでで最大のサプライズだろう。前回王者であり、優勝候補の一角だったドイツの敗退は大きな衝撃を呼んだが、すでに一部の選手からは、チームが大会前からいくつかの問題を抱えていたことを明かしている。「ブラジル大会のチームにあった情熱が、このチームには感じられなかった」。4年前、20歳でワールドカップを経験したMFユリアン・ドラクスラーはそう語っている。

 チームが噛み合わなかった要因の1つは、「スカウティングのミス」だ。グループリーグ初戦でメキシコに敗れた直後、FWトーマス・ミュラーは敗戦をこう振り返った。「普段のメキシコなら、前線からプレスを仕掛け、ボールを持っていない選手にもプレッシャーを掛けてくる。それが今日は(ジェローム)ボアテングと(サミ)ケディラをわざとフリーにして、自陣深い位置から、僕らのボールロストを待っていた。戦い方を変えてきたんだ。前半はかなりダメージを与えられた」

 DFマッツ・フンメルスも同様のコメントを残した。「カウンターに対する準備がうまく行っていない。チームメートにはずっと言っているんだけど、他の選手たちに届いていないようだ」。これらの言葉からは、チームが思うように機能していないことが分かる。特にメキシコ戦は試合前のスカウト分析が大きく外れ、修正に時間がかかった。この0-1の敗戦が、結局はグループリーグ敗退につながってしまった。

 2つ目の問題は「チーム内序列の崩壊」だろう。象徴的なのはGKの人選。主将を務めたGKマヌエル・ノイアーは、所属するバイエルンで負傷のためほぼ1シーズンを棒に振った。一方で、GKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンはバルセロナの守護神として、リーガ・エスパニョーラ優勝に大きく貢献した。

 にもかかわらず、ワールドカップまでほとんどプレーしていなかったノイアーが変わらず正GKとなったことで、代表選考の基準の公正さに疑問符が付けられてしまった。2006年から長期政権を築いてきたヨアヒム・レーヴ監督への信頼が、こうした判断によって揺らいでいたことは否めない。大会前にドイツ国営放送『ZDF』が行ったアンケートでは、56パーセントがテア・シュテーゲンを正GKに推していた。

 3つ目は「ピッチ外の問題」だ。ワールドカップへの準備が始まろうとしていた5月、トルコの大統領選を控えていたレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がイングランドを訪問した。そのタイミングで、プレミアリーグでプレーするトルコ系ドイツ人のMFメスト・エジル(アーセナル)と、MFイルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・C)が大統領と面会し、ユニフォームを渡した姿を写真に収められた。

 2人の選手にとっては、自身のルーツでもある国の大統領を表敬訪問したにすぎなかった。しかし、独裁的なエルドアン政権下のトルコは、現在のドイツ政府と複雑な関係にある。そのため、ドイツ国内ではこの面会が問題視され、批判を浴びる結果となってしまった。ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイアー大統領が直々に両選手と会談して事態の収集に動いたものの、大会直前の親善試合ではギュンドアンがドイツサポーターからブーイングを浴び続け、ベンチで涙する姿も報じられた。

「世界王者はとりわけ注目を集める存在だ。サッカーと関係のないことにも注意を払わないといけない」。MFトーマス・ミュラーは、6月29日にロシアから帰国した際、報道陣にそう話している。ピッチ外の問題がチームに及ぼす影響が予想以上に大きかったことがうかがえる。「今回の件は外部の人々にとって、格好の攻撃の的となってしまった。僕らはその代償を払わされた」。

 ドイツ代表のマネージャーを務めるオリバー・ビアホフ氏は、すでに今大会の分析を進め、選手やスタッフたちとのミーティングも行っているという。また、ビアホフ氏はレーヴ監督とも連絡を取り、監督人事についても来週末には結論を出すと明言。ドイツに黄金期を築いたレーヴ監督の去就がどうなるのか、注目が集まっている。

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