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【コラム】心身ともに充実するC・ロナウド…「自然体」で世界一の高みへ

2018.06.22

スペインとのW杯初戦でハットトリックを達成したC・ロナウド [写真]=Getty Images

 試合終盤に巡ってきたFKのチャンス。残り時間はあと数分で1点のビハインド。この切羽詰まったシチュエーションで、あれほど味方に期待感を、相手に恐怖を抱かせる選手がほかにいるだろうか。

 ワールドカップの独特の雰囲気も、初戦の緊張感も、エースとしての重圧も、今のクリスティアーノ・ロナウドは全く意に介していないようだ。グループステージ屈指の好カードとなったポルトガルスペインの大一番、ポルトガルのエースが今大会の初ゴールを挙げるのに5分とかからなかった。4分に自ら得たPKを決めてチームに先制点をもたらすと、追いつかれた後の44分に勝ち越し点をマーク。そして逆転を許して迎えた88分にFKを直接叩き込んでチームを敗戦の危機から救ってみせた。

スペイン戦の88分、起死回生のFK弾を決めたC・ロナウド [写真]=Getty Images

 大会の主役候補として期待される選手が、期待どおりに主役を演じるのがどれだけ難しいかはこれまでの歴史が証明している。同じく主役候補と期待されたリオネル・メッシやネイマールがスロースタートを切ったことも、C・ロナウドのすごさをいっそう際立たせた。続くモロッコ戦でも豪快なヘディングシュートで決勝点を挙げて早くも通算4ゴール。とにかく「役者が違う」と言うしかない。

 レアル・マドリードでは前人未到のチャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げ、自身は6大会連続の得点王を獲得。9シーズンで公式戦438試合450得点と試合数を上回るペースでゴールを量産してきた選手にとっては、今回の活躍も“通常運転”なのかもしれない。

 ただし、ことW杯においては過去3大会の出場でわずか3ゴール。チームの成績も4位に食い込んだ2006年大会をピークに、2010年大会はベスト16、2014年大会はグループステージ敗退と右肩下がりだ。まだ若手だった12年前はともかく、直近2大会はエースとして大会に臨み、失意のまま大会を去った。C・ロナウドにとってW杯での活躍は、華々しいキャリアに唯一欠けているラストピースと言える。

 もっとも、成熟した今のC・ロナウドに過剰な気負いは感じられない。遮二無二ドリブルを仕掛けるわけでも、強引にシュートを打つわけでもない。あくまで自然体で、淡々と自分の役割を全うしているように見える。初戦のFKの場面で見せた驚異の集中力、おなじみのゴールセレブレーション、そしてプレーの合間で見せる何気ない笑顔。その一挙手一投足に心身の充実がうかがえる。「自然体」のC・ロナウドにけん引されたポルトガルが、このまま頂点に駆け上がったとしてもなんら不思議はない。

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