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【現地記者に聞く】ボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合で見えたセネガルの強みと弱点

2018.03.30

ワールドカップで日本のライバルとなるセネガルは3月27日にボスニア・ヘルツェゴビナと親善試合を行った [写真]Getty Images

 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表のロベルト・プロシネツキ監督(49)は、我々の代表チームに取ってこれまでにないほど優秀な指揮官だ。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は母国の代表を率いるプロシネツキに、すぐにでも電話をかけて助言を求めることになるだろう。

 現役時代に旧ユーゴスラビア、クロアチアの代表選手として2度のワールドカップ出場経験があるプロシネツキは、今年1月にボスニア代表の監督に就任。2年後に開催されるユーロ2020出場を目指し、3月のインターナショナルウィークでブルガリア、セネガルと国際親善試合を行った。

 では、プロシネツキは母国の大先輩であるハリルホジッチに何を示すことができるのだろうか?

今年1月からボスニア代表を率いているプロシネツキ監督 [写真]=Getty Images

 美しさのかけらもなく、退屈なステレオタイプを好きだという人はあまりいないが、サッカーの世界ではそういう表現がぴたりと当てはまるチームが出てくることがある。セネガル代表は力強さがあり、スピードに溢れ、機動力のあるチームだ。しかし同時に、攻守において重大な欠点を持つチームでもあった。

 セネガルのアリュー・シセ監督は、ボスニア戦で流動的な3-4-3システムを試すことにした。ワイドな位置に選手を置いて相手のディフェンスラインを広げることで、ストライカーへのパスコースを作れると考えたのだ。これは悪くないアイデアだった。セネガルにはスピードのある選手が何人かいるし、ボスニアのようなさほどDFにスピードがない対戦相手には有効な手段だ。実際、試合開始から15分程度はそれがうまくいっていた。しかし、ボスニアの選手たちがそれに慣れてくるとセネガルは弱点を露呈し始めた。

 この試合のサディオ・マネ(リヴァプール)がセネガルのベストプレーヤーでなかったことは誰の目にも明らかだった。シセ監督はマネを2人のストライカーの間に置くことで相手の守備に穴を空け、中盤と前線のつなぎ役を担えると考えた。しかし、これは部分的にしか成功しなかった。イドリッサ・ゲイェ(エヴァートン)やケイタ(モナコ)、シェイフ・クヤテ(ウェストハム)らの不在の影響もあったかもしれないが、マネには荷が重すぎる役割という印象だった。

ボスニア戦では本領発揮に至らなかったセネガルのマネ [写真]=Getty Images

 マネは高い位置で攻撃的な役割を与えられていたにもかかわらず、中盤のあらゆるところに顔を出すことで、アタッカーとしての鋭さを失っていた。セネガルで最も危険な選手であるはずが、87分までのプレーでシュートを1本も打てずに終わっている。セネガルはボールを保持していたにもかかわらず、相手の守備を打開する明確なアイデアがなく、ボスニア守備陣の周りを右往左往するだけだった。また、忍耐強くチャンスを待つこもできず、枠内シュートはわずか1本に終わっている。

 3ー4ー3システムでは、MFとDFが高い位置を取ることで簡単に2ブロックを作ることができる。守備時にはカリドゥ・クリバリ(ナポリ)の指示で、5ー3ー2にシフトすることもあった。クリバリは最終ラインの中央で実力を発揮。セネガル守備陣の中では間違いなくベストプレーヤーだった。また、シセ監督はボールを奪った後のトランジションで自分のチームが強さを発揮できることを再認識したはずだ。選手がエネルギーを失ってしまった60分までは、極端に高い位置を取って非常に積極的なプレッシングゲームを行っていた。

 しかし、この高い位置でのプレッシングが両刃の剣であることも証明してしまった。セネガルはボールを奪うと非常に危険なチームになるが、戦術と守備における規律がないため、対戦相手のウインガーに広大なスペースを与えてしまう。ボスニアはそこを完璧に突いた。セネガルのプレスから逃れるパターンを見つけてからは、シンプルにサイドを変えてセネガルの守備を崩し、後半にはゴールネットを揺らすところまでいった。主審には認められなかったが、明らかにゴールだった。

 この試合がシーズン中に行われたこと、何人かの重要な選手が不在だったこと、シセ監督にとってはテストの場であったことなど、考慮すべき点はある。もちろん、そういう状態でも高い位置からのプレッシングとトランジションがうまくいけば、試合の局面によっては非常に危険なチームになる。しかし、全体として見ればセネガルのパフォーマンスは完璧と呼ぶには程遠いものだった。やはり戦術的な規律と創造性の欠如は大きな問題だ。

 ハリルホジッチ監督は同胞に連絡を取ってこの情報を得ることになるだろう。

取材・文=サシャ・イブルーリュ

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