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【コラム】キーワードは「ケーヒルを止めろ」 オーストラリアのサッカーを一変させる“天敵”に要警戒

2016.10.10

日本戦でこれまで8試合5ゴールを記録しているオーストラリア代表FWケーヒル [写真]=Getty Images

 なんだかんだ言って、最も警戒しなければならないのは、やはりあの男だ。

「ロングボールを多用していた形から、ボールをつなぐ形が増えたと思う。シャドーの位置や2列目からも速い選手が飛び出してくるし、中盤にも試合を作る選手が多い。今までで一番難しい試合になるのは間違いないですね」

 10月11日にFIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選で対戦するオーストラリアの印象について、日本代表のディフェンスリーダー吉田麻也(サウサンプトン)はこう語った。

 オーストラリアと言えば、これまではフィジカルの強さにモノを言わせ、ロングボールを多用してパワープレーを仕掛けてくる印象が強かった。

 ところが2013年にアンジェ・ポステコグルーが代表監督に就任して以降、オーストラリア代表はポゼッションスタイルを志向するようになった。「4-3-3」のインサイドハーフを務めるアーロン・ムーイ(ハダースフィールド/イングランド2部)とトム・ロギッチ(セルティック/スコットランド)は、ポステコグルー体制の象徴的な存在で、彼らを中心にショートパスとコンビネーションで崩すスタイルを仕掛けてくる。

 オーストラリアがボールを支配し、日本が縦に速い攻撃でカウンターを狙う展開となるのか。それとも互いにボールを保持するべく中盤で激しく潰し合うのか――。

 敵将・ポステコグルーが「接戦になるのではないか」と公式会見で予想したように、いずれにしても試合が拮抗した中で進んでいくのは間違いないだろう。

 そんな試合展開で警戒しなければならないのが、オーストラリアの選手交代だ。過去の日本戦8試合で5ゴールをマークしているティム・ケーヒルが“スーパーサブ”としてベンチに控えているのだ。

 今年で37歳となる“日本キラー”は、今回の試合会場となるエティハド・スタジアム(ワールドカップ予選使用時の名称はドックランズ・スタジアム)をホームとするメルボルン・シティと今夏に契約を交わしたばかり。イングランドなどで長らくプレーしていた英雄が母国でプレーするのは、シドニー・ユナイテッドのユース在籍時以来、実に19年ぶりのことになる。

 Aリーグは開幕して間もないことから、ケーヒルはまだAリーグデビューを果たしておらず、“ホーム”のエティハド・スタジアムで公式戦を戦うのは今回が初めて。つまりスーパースターにとって地元でのお披露目が、この日本戦となるわけだ。

 ただでさえ日本戦にめっぽう強いのだ。拮抗した試合展開の中で、この男がピッチサイドに姿を現せば、スタジアムは割れんばかりの歓声に包まれるに違いない。

 しかも、オーストラリアはケーヒルの投入とともにスタイルを一変させる。彼が持つの空中戦の強さを生かすため、それまでのショートパスをつないで攻めるスタイルから以前のようにパワープレーに切り替えてくるから極めて厄介だ。

 もっとも日本の守備陣もケーヒルを最警戒人物として認識している。

「FWは選手交代の多いポジション。それに対して短時間で特徴を捕まえて対応していかなければいけない。(ケーヒルとは)過去に何回かやっているので、どういうプレーヤーかは分かっている。うまく対応していきたい」と森重真人(FC東京)が対戦イメージを含まらせれば、吉田も「(ケーヒルは先発出場じゃなかったとしても)残り15分くらいから必ず出てくると思う。もう彼には得点させたくない。彼がいかに危険な選手かはみんな理解していると思うので、まずはいいクロスを上げさないこと。あとはペナルティボックス内での戦いも大事になってくる」と警戒心を強めている。

 キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)が「客観的に見て、このアウェーのオーストラリア戦が一番厳しい試合になる」と予想した最終予選最大の山場。ケーヒルを止めずして、日本代表が笑顔で試合を終えることはない。オーストラリアのサッカーにスイッチを入れる“天敵”への対応が、大一番の行方を左右することになりそうだ。

文=飯尾篤史

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