2013.11.18

「平均年齢24歳、世界ランク5位」若手タレント集団ベルギー代表の躍進の舞台裏とは?

若いタレントが躍動するベルギー代表は新たな「黄金期」を迎えようとしている

 さながら、プレミアリーグ選抜の様相である。

 チェルシーからはエデン・アザールを筆頭に、ケヴィン・デ・ブライネ、ロメル・ルカク(エヴァートンにレンタル移籍中)の3選手。マンチェスターの2チームには、ユナイテッドのマルアーヌ・フェライーニとシティのヴァンサン・コンパニが所属している。トッテナムのヤン・ヴェルトンゲン、ムサ・デンベレ、ナセル・シャドリやアストン・ヴィラのクリスティアン・ベンテケもそれぞれ際立った存在感を見せている。さらに驚きなのが現メンバーのほとんどが20代前半ということだ。14日行われたコロンビアとのテストマッチに出場した先発メンバーの平均年齢は24歳。まさにこれから黄金期を迎える若いタレント集団なのだ。

 日本代表が19日に対戦するベルギー代表(コンパニは負傷で招集外)は、同国史上最高と言えるタレントを揃え、黄金時代の到来に沸いている。ブラジル・ワールドカップの欧州予選では、グループAを無敗の首位通過。FIFAランキングでも5位と躍進を果たしたことで、堂々とワールドカップの第1シードに組み込まれた。

 チームを指揮するのは、2002年ワールドカップで日本相手に豪快なバイシクルシュートを叩き込んだマルク・ヴィルモッツ。少し太っちょになった英雄に率いられ、我が世の春を謳歌しているベルギーだが、実のところ国際舞台に進出したのは日韓ワールドカップ以来となる。

 極東でのベスト16進出から11年。短くない空白の時を経たが、カリスマ指揮官と黄金世代の夢物語は突如として生み出されたわけではない。現在の隆盛を紐解いていくと、ある1人の人物に突き当たる。

「ウクライナとポーランド共催の2012年の欧州選手権には出場できなかった。しかし、非常にいい若手のチームを作り上げることができた」

 現在の中核をなすメンバーを次々抜擢した、ジョルジュ・レーケンス前監督はそう語る。

 ただ、彼が率いた2010年5月からの2年間は、本人も認めるように、ベルギーが日の目を見ることはなかった。ユーロ2012の欧州予選では、最終節のドイツ代表戦で1-3と敗れて、グループAの3位に転落。土壇場でプレーオフ出場権をトルコ代表にかっさらわれる辛酸も嘗めた。結局、才能溢れる若手の登用も結果には繋がらず、2012年5月にクラブ・ブルージュの監督に就任するため、指揮官の座を当時のアシスタントコーチだったヴィルモッツに譲っている。

 記録はおろか、記憶にも残らなかったレーケンス政権下のベルギーは、当然ながら多くの批判も受けた。何しろ彼が批判覚悟の上で起用した選手達は、今でこそ世界に名だたるスターに成長したが、抜擢当時は期待の若手という域を脱していなかった。

「今、ベルギー代表は自信を持ってやっている。しかし、長い間、結果が出なかったためにチームは苦しんで自信が持てずにいた。批判も多かった。美しくて、いいサッカーをしていたが、効率が悪かったからね」

 ただ、「私はずっと信じ続けていたよ」という信念に基づいた選手起用は、奇しくもレーケンス氏が退任してから程なくして、見事な花を咲かせている。種を蒔いた本人も「現在、ベルギー代表には素晴らしいゴールキーパーがいて、ディフェンダーもワールドクラスだ。中盤の選手はタレントにあふれているし、フォワードは得点を決めることができる。それに、選手たちは大人になったね。国のためにプレーをしたいと考えている。チームワークも非常にいい」と、自身が収穫の時を迎えられなかった口惜しさを感じさせることなく、教え子の充実ぶりに称賛を送っている。

 ちなみに、空前のタレント輩出が重なっているベルギーだが、個性が輝く下地はあったようだ。同国の強豪、スタンダール・リエージュでプレーする日本代表GK川島永嗣は語る。

「リーグ自体も戦術というよりもどちらかと言うと、個の能力が意識されることも多いと思う。そういう土壌という意味では、個が育つには良い土壌なのかと」

 ベルギーでのプレーも4シーズン目を迎えた川島が、「リーグには若くて個性的な選手や能力の高い選手はいっぱいいる」というからには、今後もベルギーの勢いはしばらく続きそうだ。それでも、黄金世代の誕生からなる同国の勃興は必然だったわけではない。決して小さくない改革を断行した結果である。

 レーケンス氏もかつてのアシスタントの指導ぶりを称えながらも、ベルギー躍進の礎を築いた自負を垣間見せた。

「ヴィルモッツは代表監督にふさわしい。ベルギーをワールドカップ出場に導いたのは、ヴィルモッツであって私ではない。ただ、私や私の前任、ディック・アドフォカートは、ベルギー協会をよりプロフェッショナルな集団に変えたのだ。私たちが骨組みを作って、現在のパフォーマンスが発揮できるようになった。私は建築家のようなものだ。建築家は家を建てることはしない。ヴィルモッツの仕事ぶりは誇らしいね。”ディアブルス・ルージュス”(ベルギー代表の愛称で「赤い悪魔」の意)のパフォーマンスもだ」

 ベルギーは第1回大会を含め、ワールドカップに過去11度出場し、1986年のメキシコ大会ではベスト4に進出した紛れもない世界の伝統国である。ただ、歴史の長さがそのまま結果に繋がるほどサッカーの世界は甘くはない。

 国際舞台の勇姿は2002年を最後にぷっつりと途絶えたかもしれないが、彼らは11年にも及ぶ長いトンネルの中で、暗闇を照らすべく若き才能にかけてきた。結果を出せずに批判を浴び、檜舞台の出場を寸前で逃す苦い経験を経たことも、結果としては原石を輝かせるための研磨にもなった。

 あらゆる荒波にも動じずに信念を貫いた結果として、ベルギーは今、眩いばかりの黄金の光を放っているのである。

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