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入団時の「優勝宣言」は成就せず…その悔しさを糧に、来季は欧州CLで暴れ回る|菅原由勢(AZ/DF)

2020.04.27

AZで躍進を続ける菅原[写真]=Getty Images

 新型コロナウイルス感染拡大によって、欧州サッカー界は3月中旬から公式戦が止まっている。ベルギーがいち早くリーグ終了を決めたのに続き、24日にオランダも2019-20シーズン・エールディヴィジの打ち切りを正式発表した。

 今季はリーグ優勝クラブを決めず、降格および昇格もない。2020-21シーズンの欧州カップ出場権に関しては、アヤックスがチャンピオンズリーグ(CL)予選最終ラウンドから参戦。25試合終了時点で勝ち点56で並んでいたAZは予備戦2次ラウンドから参戦することが決まった(UEFAの承認を経て正式決定する)。

 とはいえ、1980-81、2008―09シーズンに続く3度目のタイトル獲得が見えていたAZにしてみれば、ビッグチャンスを逃す形となったのも事実。同クラブで1年を過ごした菅原由勢はツイッターで「優勝のチャンスがあり、あのチャンピオンズリーグがかかっていた中での発表。チームとしても悔しいし、個人としてもレギュラーをつかめたわけじゃないけど、サッカー人生の中で最も濃いシーズンだったのは間違いない」と複雑な胸中を吐露した。名古屋グランパスから新天地に赴いた昨夏、「優勝したい」とチームメイトの前で公言していただけに、中途半端な終わり方になってしまったのは悔しさが募るところだろう。

 それでも、今季リーグ16試合出場2ゴールというのは欧州移籍1年目の若手にとって悪くない数字。ヨーロッパリーグ(EL)にも参戦して、マンチェスター・Uやリンツなど他国の強豪クラブとも真っ向からぶつかり合う経験もした。ポジションも本来の右サイドバックだけでなく、右MFや右ウイングでも起用され、プレーヤーとしての幅も確実に広げた。そこは前向きに捉えていいはずだ。

「オランダに来てから高いポジションをやるようになって、サイドバックの動きを見ながら攻撃に変化をつけられるようになってきたなと感じます。相手を観察しながらサッカーができるようになったとも思うし、成長を実感しています。ただ、もう少し守備のところでぶつかり合うとか、球際でマイボールにするところのうまさが必要。ただ強くいくことだけがいいとは思えないので、もっと頭を使いながら守れたらいいですね」と、昨年10月のPSV戦の時も熱っぽく語っていた。

 貪欲に高みを追い求める姿はU-17、U-20ワールドカップに参戦していたころから全く変わらない。日本人離れした明るさとアグレッシブなメンタリティを前面に押し出したからこそ、オランダでもいち早く戦力に加わり、優勝争いを経験することができたのだろう。

「『適応するのが早いね』といろんな人に言われます(笑)。それは僕自身の性格による部分ももちろんあるけど、それ以上にAZのチームメートやスタッフが快く接してくれたことが大きいですね。非常にいい対応をしてくれて、何も困ることがない。サッカーに集中できる環境を作ってくれることが一番。電車に乗ってどこかに行ったり、美しい街並みを眺めたり、周りの人に親切にしてもらったりと、生活面も楽しめています。ピッチ上でもすごく自由を与えてもらっています。サッカーはボールを持ったらゴールを目指すスポーツ。規律がある中で自由も尊重されているので、自分らしくプレーできています」

 移籍から4カ月が経過した時点で菅原は充実感をみなぎらせていたが、頭抜けた適応力は間違いなく今後の強みになる。まだ19歳のマルチプレーヤーはAZにとどまることなく、さらに高いレベルに飛躍できる。そのポテンシャルを彼自身、しっかりと確認できたことも今季の収穫だと言っていい。

 オランダでは日本代表にも名を連ねる堂安律板倉滉、東京五輪代表でリーダー的存在を担う中山雄太らと共にしのぎを削った。1年後に延期された東京五輪を経て、いずれは日本代表としてワールドカップに出場したいと考えている菅原にとっては、一つの基準が見えたことだろう。中でも堂安の存在は大きかった。彼との直接対決を経て、自分に何が足りないかを感じる機会を持てたのは、今後への確かなプラスになるはずだ。

「堂安選手はボールを持つと怖さがあるなと感じたし、そういう怖さがあるのがA代表の選手だと思います。PSVは他のポジションにもA代表の選手がいる。彼らと同じピッチに立ち、ぶつかり合った自分もA代表に入れるチャンスがあるってことだと思う。すべては自分次第だと思うし、先を見据える前に1試合1試合の結果が後々の結果につながってくる。そう考えて目の前の一日をしっかりとやっていきたいですね」

 オランダで堂安と初めて敵として戦った日の思いは今も変わっていないはず。その経験を糧にして、まずは来季に備えることが肝要だ。「EL、優勝争い、すべてのモノを来季に繋げて、さらに高い舞台へ」とツイッターに記した通り、混迷の2020年にエネルギー蓄えて、来季はリーグとCLの両方で暴れ回り、輝ける未来を切り開いてほしいものである。

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