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遅きに失した延期の決断、選手にも感染拡大…問われるセリエA会長の責任

4月3日までの延期が決まったが、さらなる延長も懸念されるセリエA [写真]=Getty Images

 イタリアのセリエAが非常事態に陥った。ユヴェントスは11日(現地時間、以下全て)、ダニエーレ・ルガー二が新型コロナウイルスに感染したことを発表。翌日12日には、吉田麻也とチームメイトのマノーロ・ガッビアディーニも感染したことが明るみに出ており、セリエAのチーム内にも感染が広がっている。

 WHO(世界保健機関)が、「パンデミック(世界的大流行)と表現できる判断に至った」としていたが、屈強な選手たちも無関係ではなかった。むしろ、日々激しいトレーニングを行なっているアスリートは、一般の人たちも感染のリスクにさらされた状態にある。強度の高い長時間のトレーニングは、一時的ではあるが回復期に免疫機能を低下させることが分かっている。「オープンウィンドウ」と呼ばれるほど、無防備な状態となってしまうのだ。ただ、幸いなことに、2人は陽性反応が出ただけで、症状は現れていない。イタリアは感染者が激増しているだけに、”強行的”に開催された3月8日と9日の6試合は、延期すべき、いや、しなければならなかった。8日の最も早い時間に行われたパルマ vs SPALは、試合開始直前に両選手たちが、ロッカールームに戻り、開催延期の可能性が伝えられた。ヴィンチェンツォ・スパダフォーラ・スポーツ相が、試合の延期を要請。選手協会(AIC)のダニエーレ・トンマージ会長も、ストライキの実施をちらつかせて、延期を訴えたからだ。

 だが、レーガ・セリエAはそういった声を聞き入れず、パルマ vs SPALは75分遅れでキックオフとなった。このため、ルガー二が所属するユヴェントスはインテルと、ガッビアディーニのサンプドリアはヴェローナと試合を行い、前者はベンチ入りし、後者は後半16分までプレー。イタリアは政府が感染予防として、握手やハグ、そしてキス(頰と頰を合わせる行為)をすることを避けること、人との距離を1メートル以上とること、という政令が出されていたが、接触が激しいサッカーには無意味なものだった。ゴール後も、試合後も、普通に抱擁や握手がされていたことは避けられたことかもしれないが……。

8日に行われたインテル戦で抱き合うユヴェントスの選手たち [写真]=Getty Images

 このため、ユヴェントスとサンプドリアだけでなく、その対戦相手であったインテルとヴェローナの選手たちも隔離されることとなってしまった。「サッカー選手は大金を稼いでいるのだから、こういった状況でもサッカーをして楽しませるべき」というファンの意見は稀で、大半は「今すぐリーグを停止すべき」というのが一般的な声だった。「責任を転嫁するのではなく、政令を出すべき」とコメントし、試合の開催を決断したレーガ・セリエAのパオロ・ダル・ピーノ会長の責任は重い。

9日のサッスオーロ対ブレシア戦では、入場者に健康チェックを実施していた [写真]=Getty Images

 イタリアは経済活動が機能停止状態となっている。世界で最も世界遺産が多く登録されている観光大国であるが、通常は連日観光客で賑わうローマのコロッセオやミラノのドゥオーモも人影が全くない。当初は、イタリア北部のロンバルディーア州とヴェネト州に限り移動制限が発令されたが、感染者、死者に歯止めがかからず、10日からイタリア全土に拡大されている。3月11日18時までに1万2462人が感染、そのうち死者は827人と中国につぐ世界で2番目の多さとなっており、1045人が完治している。イタリアは、日本と同じように高齢者社会が形成され、多くの老人が犠牲者となっている。また、医療現場も医師や看護師の数が慢性的に不足しており、病院がパニック状態になっている。さらに、検査を多く行なったことで、院内感染を引き起こしたようだ。

11日のコロッセオの様子 [写真]=Getty Images

 前回のコラムで書いたように、スキンシップが多いことなど、感染拡大の要因は様々考えられるが、ロンバルディーア州の州都ミラノをはじめとして、中国人も多く、中国からの帰国者が、新型コロナウイルスを持ち込んだ可能性も指摘されている。イタリア人は社交的で、多くの人数で食事を行なったり、兎にも角にも”つるむ”のが好きな国民だ。夜になれば、中心街に赴き、恋人や友人と、意味もなく、目抜き通りを往来する。それだけに、移動制限が必要なこの新型コロナウイルスは、イタリア人にとっては非常に厄介な感染病でしかない。

 そういったこともあって、サッスオーロのフランチェスコ・カプートは、9日のブレッシャ戦でゴールを挙げた後に「すべてよくなる。家にいよう」とメッセージをテレビカメラの前に掲げた。また、ユヴェントスのレオナルド・ボヌッチをはじめとして、多くの選手がインスタグラムに「距離を取りながら団結」と投稿し、連帯を強調しながら、人との接触を避けるように呼びかけている。

  現時点で、セリエAを含め、イタリアのプロスポーツの開催は4月3日まで中止となっているが、選手に感染者が出たことで、さらに延期となる可能性は避けられなくなってきた。この政令は、国内大会に限ったもので、国際大会は含まれていないが、ヨーロッパリーグ決勝トーナメント2回戦セカンドレグでインテルとミラノで対戦する予定だったヘタフェのアンヘル・トーレス会長は対戦を断固拒否。この試合と、セビージャ vs ローマが延期となった。そして、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦、ユヴェントス vs リヨンも延期が決まっている。

 プレミアリーグのレスターの選手にも感染者が出ており、欧州カップ戦の停止も時間の問題となっている。今年、6月には欧州選手権が行われることとなっているが、こちらも開催が危ぶまれてきている。皮肉なことに、今年の大会は、UEFA60周年記念の特別大会として欧州13か国での分散開催。移動が多くなるだけに、開催のリスクは一段と高く、本当に行うことができるのかもはや不透明だ。仮に欧州選手権が中止(あるいは延期)となった場合、セリエAは5月2日に再開し、6月もリーグを行ういう案も浮上している。

 となると、当然、来季のスタートにも影響が及ぶことになり、容易には決められない。スクランブルにある今季に限り、優勝プレーオフ、降格プレーアウトの導入も検討されているが、各クラブはこれに否定的だ。今後、さらに選手だけでなく、スタッフや審判員の感染者が増えることも十分に予想される。セリエAが負のスパイラルから抜け出すにはまだ時間がかかりそうだ。

文=佐藤徳和/Norikazu SATO

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