2019.12.11

衝撃のミラン移籍とまさかの復帰を経て…ユーヴェのリーダーへと成長を遂げたボヌッチ

1998年にローマに語学留学し、同市内のアマチュアクラブ、ロムーレアの練習に参加。カルチョだけでなく全てのアッズーリをこよなく愛し、日伊協会会報誌『CRONACA』では、イタリアに特化したスポーツ記事を連載中。2017年11月『使えるイタリア語単語3700(ベレ出版)』を共同執筆。イタリア語検定協会事務局員。日伊協会にて4月より『カルチョで旅するイタリア』が開講。

 11月19日、ユヴェントスのイタリア代表DFレオナルド・ボヌッチが、クラブと新契約を締結した。従来の契約は2023年6月30日までとなっていたが、2024年6月30日まで新たに1年間の延長を結び、37歳までユーヴェに残留することが可能となった。また、現在550万ユーロ(約6億6000万円)の年俸も750万ユーロ(約9億円)まで増額されることとなるようだ。

■衝撃的だったミラン移籍とまさかの復帰

ボヌッチ

[写真]=Getty Images

 2017年7月20日、ボヌッチのユーヴェ退団はまさに青天の霹靂だった。しかも、あろうことか移籍先が宿敵の一つ、ミランというのだから、誰もが仰天した。移籍金は4200万ユーロ(約50億円)。マッシミリアーノ・アッレグリ監督との軋轢が移籍を推し進める要因となったが、多くの人が公式発表を疑ったことは間違いない。カルチョ・メルカートは何でも起こりうるものだと思わせる移籍劇だった。

 ミランではカピターノにも任命され、もはや老貴婦人のユニフォームに袖を通すことは二度とない、断じて許されないと思われた。ところが、その1年後の8月2日、今度は唖然とさせる“事件”が起こる。ユーヴェ復帰だ。マッティア・カルダラとゴンサロ・イグアインのトレードに加え、3500万ユーロ(約42億円)が支払われ、ボヌッチは再びユーヴェの一員となった。男を下げる移籍劇だった。

 ビアンコネロに詫びを入れ、減給を申し入れたとはいえ、信頼は地に落ちた。それでもボヌッチは、アッレグリ監督によって重宝された。それは双方のわだかまりは解消されたという証だった。ボヌッチの後釜となるものと期待されたベネディクト・ヘヴェデスは負傷続きでまったく使いものにならず、ダニエレ・ルガー二とメディ・ベナティアの二人もボヌッチの後継者となるまでのパフォーマンスを見せることはできなかった。ユーヴェ復帰を希求するボヌッチとその後釜を埋めきることができなかったクラブとの思惑が一致し、かくしてボヌッチは再びユーヴェの一員としてプレーすることが許されることとなったのである。

 ボヌッチのミラン移籍は決して“罪”ではないが、ティフォージにとってみれば、それ以上の許し難い裏切り行為であった。しかし、この1年の彼のプレーをみれば、十分に悔い改めたと見てもおかしくない。クラブへの忠誠も誓い、猛省した。今ではもう誰も、ミラン移籍の“黒歴史”を語るものはいない。それどころか、カピターノのジョルジョ・キエッリーニが不在の中で腕章を巻きつけ、ピッチの上でリーダーシップを発揮。クラブにとって必要不可欠な存在と呼ばれるまで信頼を回復させた。

ボヌッチ

[写真]=Getty Images

 今シーズンはセリエAの14試合とチャンピオンズリーグの5試合にフル出場。まさに不動のセンターバックだ。また、9月からの代表戦でもEURO予選の6試合すべてでピッチに立ち、チームの無敗突破にも尽力した。キャップ数も95試合と歴代9位まで浮上し、キエッリーニの103試合に迫る勢いだ。アッズーリでもユーヴェと同様にキエッリーニの代役として主将を担う。若手が多いチームをけん引する姿もすっかりと板についた。

 もともとケガには強く、2010年のユーヴェ加入以来、年間のリーグ戦出場数は最も少なくて29試合と、計算の立つ選手である。この10年では、ユーヴェで最も長くピッチに立った選手で、2位キエッリーニの2万2366分、3位ジャンルイジ・ブッフォンの2万2196分を上回る2万3147分間プレーしている。ユーヴェ入団直前の2009-10シーズンには、バーリで全38試合にフル出場という離れ業までやってのけている。キエッリーニが故障を多く繰り返しているだけに、指揮官にとってこれ以上頼りになる存在はいないだろう。

■最大の強みは…

ボヌッチ

[写真]=Getty Images

 ボヌッチの最大のストロングポイントは、対人能力でも高さでもなく、試合中の読みでもない。彼の突出した能力は、ずばり前線へのフィードだ。現在のCBには最終ラインからゲームを構築する技術が求められるが、その点においてボヌッチは世界でも指折りの選手ある。

 EURO2016、ベルギー代表とのグループステージ初戦。世界ランキング首位に立つ相手に不利が予想されたが、アッズーリはエマヌエーレ・ジャッケリーニのゴールで先制した。このとき、GKと最終ラインの間へ絶妙なピンポイントパス放ったのは誰だったか。そう、ボヌッチだ。フリーの状態ならアンドレア・ピルロのような正確無比のフィードを配給することができるのだから、相手のFWは、うかうかとはしていられない。さらに、背後のスペースをケアされた場合は高速の楔をFWに当てることもできる。相手からしてみれば、全く厄介なCBだ。ジョゼップ・グアルディオラ監督が高く評価するのも十分に納得がいく。

 足元の技術に優れる理由は、もともとは中盤の選手だったことに起因する。「守備的MFからCBに移れと言われたときは困惑したよ。だけど、幸運でもあった。ヴィテルベーゼのベッレッティ(15歳から19歳のカテゴリー)でプレーしていたとき、(カルロ)ペッローネ監督がこう言ったんだ。『素晴らしいクオリティーを持っているが、それをCBで活かさなければならない。エレガントで、ボールを奪うタイミングが良く、ポジショニングに長け、テクニックがある。君は新しいネスタだ』ってね。監督の言葉を信じたよ」とコンバートした当時をこう振り返る。

■芽生えたリーダーとしての自覚

ボヌッチ

[写真]=Getty Images

 こうしてモダンCBの先駆けのボヌッチが誕生することになった。しかし、辛辣な意見を述べる指導者もいる。イタリアの重鎮、ファビオ・カペッロだ。ミランに移籍したものの、思ったように結果を出せなかった2017年12月にこう話している。「足元の技術はイタリアのCBで最高の選手。世界でも3本の指に入る。しかし、守り方をわかっていない。本質的な大きな問題を抱えている。彼にとってユーヴェはうってつけの環境にある。なぜなら3バックで守っていたからだ。4バックではとても苦労している」と苦言を呈した。手厳しい指摘の通り、ボヌッチは確かに対人ディフェンスに優れているとは言い難い。

 だが、それは過去のものとなりつつある。昨シーズンも4バックで多くを戦い、戦友のアンドレア・バルザーリが去り、マウリツィオ・サッリが新監督に就任した今シーズンも、キエッリーニ不在の中で4人の守備陣の中心選手として君臨する。新加入のマタイス・デ・リフトがややセリエAの環境に馴染むのに苦しんでいるとはいえ、チームは最少失点を誇っている。守備のメンタリティーがアッレグリ時代とドラスティックに変わり、攻撃的なチームにシフトチェンジした中、リーグ屈指の守備を維持できているのはボヌッチの功績が大きいからに違いない。

「これまでやってきた守備とは完全に変わった」とボヌッチも守りの意識改革を明かす。「これまでのやり方が正しいなどと考える必要はない。過去のものは一度リセットしなければならない。何が正しく、やってきたことが結果をもたらすなどと考えるべきではない。別のやり方でだって結果を出すことは可能なんだ」と強調する。

 2年前のミラン移籍がボヌッチのキャリアに蹉跌をきたしたことは確かだが、同時にボヌッチを一回り大きく成長させたことも間違いない。キエッリーニが長期負傷離脱の中でリーダーとしての自覚が芽生えたこともチームにとっては思わぬ収穫だ。年が明けてそのキエッリーニが復帰すれば、チームの戦力が増すこととなる。腹心の友であり、最良のパートナーでもあるキエッリーニがピッチに戻れば、これからさらにアップグレードするボヌッチを見ることができるはずだ。

文=佐藤徳和/Norikazu Sato

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