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続々と有望株が台頭するインテル…筆頭は17歳の“超万能型FW”エスポージト

将来を嘱望されるインテルのエスポージト [写真]=Getty Images

 PKを誘発したセバスティアーノ・エスポージトは、インテル・サポーターが陣取るゴール裏席に向かって雄叫びをあげた。チャンピオンズリーグ(CL)・グループステージ第3節、本拠地ジュゼッペ・メアッツァでのドルトムント戦。80分にアントニオ・カンドレーヴァからの相手DFライン裏へのフィードに抜け出し、マッツ・フンメルスとユリアン・ヴァイグルに挟まれながらも、ドリブルで果敢に縦への突破を図り、ペナルティエリア内でフンメルスのファウルを誘う。スピード、2人の屈強なDFに競り負けないフィジカル、そして、狡猾さを披露した一連のプレーだった。

「少し、ドリブルが大きくなってしまったけど、フンメルスの前に足を入れることができた。それでPKが獲得できた」。そのPKはラウタロ・マルティネスが失敗したが、エスポージトの能力をアピールするには十分だった。17歳と113日でのCL出場はクラブレコード。そのデビュー戦で、圧巻のプレーをできるのだから驚きだ。本来はU-17のカテゴリーでプレーする選手が、プリマヴェーラ(U-19)を飛び越え、トップリーグでプレーしている。ブラジルで開催されたU-17ワールドカップにも出場する可能性はあったが、アレクシス・サンチェスの負傷により、アントニオ・コンテ監督からトップチームに留まるように指示があった。今夏のプレシーズンマッチでも積極的にエスポージトを起用したコンテは「信頼するようなことがないまま彼をプレーさせていたのだったら、私は常軌を逸していたということだ」と、この17歳に全幅の信頼を寄せていることを明かした。

 インテルでの公式戦デビューは昨シーズン。3月13日のヨーロッパリーグ決勝トーナメント2回戦、フランクフルトとのセカンドレグだった。しかし、それ以前から、この若者はそれぞれのカテゴリーで異彩を放っていた。

■2つの転機

 生まれは2002年7月2日。カンパーニャ州ナポリ近郊のカステッランマーレ・ディ・スタービアで生を受けた。世界最古のコマーシャルソングともいわれる『フニクリ・フニクラ』が生まれた地であり、若干20歳でアッズーリの守護神として君臨するミランのGKジャンルイジ・ドンナルンマを輩出した地でもある。父、アゴスティーノも元プロサッカープレーヤーで、大成はしなかったものの、地元のプロクラブ、ユーヴェ・スタビアで試合に出場した実績がある。祖父、サルヴァトーレもまたセリエDでプレーした経験があり、現役引退後は、文学と哲学の教授として教鞭を執るほど文武両道の人だった。2歳上の兄、サルヴァトーレ(祖父と同名)はインテルを退団したものの、キエーヴォの主力としてプレー。U-20イタリア代表にも名を連ねる。そして3歳年下のピオもインテル下部組織に所属と、まさにサッカー一家だ。

 転機が訪れたのは、8歳のとき。地元でプレーしていた姿がブレシアの名スカウト、ロベルト・クレルチの目にとまる。クレルチは凄腕のスカウトマンだった。そう、あのアンドレア・ピルロを発掘した人物だ。エスポージトのプレーを見たクレルチは、試合後すぐに直談判。父親のアゴスティーノにはスカウトのアシスタントの職を与え、家族全員をブレシアに移住させようと説得した。

「妻と口論になったよ。子ども達は小さく、それに自分たちの人生を完全に変える選択だったから」とアゴスティーノは難しい選択を迫られたと回想するが、「それでも勇気を持って選択した。クレルチが正しかったということだ」誘いを受け入れた。ただ、その名伯楽は「セバスティアーノはサッカー選手としての本能的な動きを備えている」と語っていたが、昨年1月に75歳で他界。自ら発掘したダイヤの原石のプロデビューを見届けることは叶わなかった。

 二度目の転機はブレシアが財政難に陥った2014年。インテルが、当時12歳だった“天才少年”の存在を嗅ぎつけたのだ。エスポージトはイタリア有数の名門クラブに移ってもゴールを量産。U-15からは、各年代のイタリア代表に選出され、今ではすでにU-19で2020年欧州選手権予選のマルタ戦に出場を果たしている。プロとしての第一歩を踏み出した昨シーズンは、プリマヴェーラで3得点、U-17で16得点を挙げるなど、インテルの一員として公式戦31得点をマーク。U-17イタリア代表の試合でも14ゴールをマークし、1シーズンに57試合の出場でなんと45ゴールを記録した。サッカーとはこんなに簡単に得点できるスポーツなのかと思わせるほど、エスポージトは容易にゴールをこじ開けた。

エスポージト

[写真]=Getty Images

 しかし、これほどのゴールスコアラーだが、本人は生粋の点取り屋ではないと主張する。「FWとしてプレーするのは好きだ。だけど、自分はまずまずのテクニックを備えているから、トレクアルティスタ(トップ下)としてプレーして、ゴールをするよりもアシストする方が好きなんだ」。自ら突破してゴールを叩き込む術を持ち合わせていれば、FKからゴールを狙える技術も備える。ワントップ、セカンドトップ、トレクアルティスタ、左右両サイドのアタッカーと、攻撃的ポジションのすべてをこなす超万能型だ。

「小さいころ、手本としていた選手は、常にフランチェスコ・トッティだった」。ゴールを陥れるだけでなく、非凡なアシスト能力も擁していたトッティを確かに彷彿させる。となれば、期待がかかるのはその技術的な能力だけでない。トッティのような強烈なカリスマを持つ選手として、そしてチームのバンディエラとして成長して欲しいと、インテリスタは期待を寄せずにはいられないだろう。

■下部組織には多くの有望株が

アグメ

“ネクスト・ポグバ”と呼ばれるルシアン・アグメ [写真]=Getty Images

 インテルが抱える期待の10代はエスポージトだけではない。セリエA第12節のヴェローナ戦では、マティアス・フォンセカとエドアルド・ヴェルガーニがベンチ入りを果たした。前者は現役時代にカリアリ、ナポリ、ローマ、ユヴェントスなどで活躍したウルグアイ代表のゴールハンター、ダニエル・フォンセカの息子だ。父と同じセンターフォワードのポジションで、セリエAでデビューを狙う。そしてフォンセカのほかにもう一人、プロ選手として名を馳せた父を持つプレーヤーもいる。インテルに8シーズン所属したデヤン・スタンコヴィッチの息子、フィリップだ。MFとして活躍した父とは異なり、最後の砦、GKとしてプレーしている。

 エスポージトを筆頭に将来を嘱望される若手選手が多く出てくる要因として、クラブが下部組織を強化している背景がある。プリマヴェーラでは2016-17シーズン、グループCのレギュラーシーズンを2位で終えたものの、ファイナルステージを制覇。2部リーグ制が導入された17-18シーズンもレギュラーシーズンを2位でフィニッシュしたが、このシーズンもファイナルステージで優勝を果たし2連覇を成し遂げた。これで優勝回数はトリノと並び、最多9回を誇る。昨シーズンはレギュラーシーズンで2位、ファイナルステージで準優勝といずれもアタランタの後陣を拝したが、胸を張れるだけの成績は残している。トップチームが低迷しているミランとは雲泥の差だ。ミランは、昨シーズンのプリマヴェーラ1で16チーム中15位に終わり、プリマヴェーラ2に降格。インテルはこのカテゴリーでも宿敵に水をあけることに成功しているのだ。

 現役時代にピアチェンツァやアタランタ、ラツィオなどでプレーしたアルマンド・マドンナが指揮するインテル・プリマヴェーラには有望株が何人も控える。センターバックのミカエル・ントゥべ、サイドバックのロレンツォ・コロンビー二はU-19イタリア代表。U-17W杯でフランス代表の主将としてプレーしたMFルシアン・アグメは“ネクスト・ポグバ”と呼ばれるほどの逸材だ。また、同大会に臨むU-17イタリア代表には最多の5人を送り出した。ロレンツォ・モレッティ、ロレンツォ・ピローラ、ガエターノ・オリスターニオの17歳の3人はいずれもプリマヴェーラでの出場経験がある選手。さらに、大会中に小柄ながらも十分なインパクトを残したデニャン・ニョントは11月5日に16歳になったばかりだが、今シーズンすでにプリマヴェーラでゴールを決めており、UEFAユースリーグにも出場している。そのUEFAユースリーグでは、グループリーグでバルセロナやドルトムントを抑え、首位に立つ。2度の優勝を誇るバルセロナにはアウェイで3-0と快勝し、サプライズをもたらした。イタリア勢としての初優勝にも期待しないわけにはいかないだろう。ただ、まずはエスポージトのような選手をトップチーム送り込むことが優先されなければならないのは、このカテゴリーを戦うチームの難しさかもしれない。

文=佐藤徳和/Norikazu Sato

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