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【コラム】イブラ復帰騒動に終止符…ミラン復権のカギは“NEXTカカ”と中盤の補強

2018.12.11

復権を目指すミラン。今季はここまで4位につけている [写真]=Getty Images

 ズラタン・イブラヒモヴィッチを巡るミラン復帰騒動に、どうやら終止符が打たれたようだ。12月9日、レオナルドSD(スポーツディレクター)は、獲得を断念したことを明かした。

ミランには復帰しない。もし復帰していれば素晴らしい物語となっただろうが、実現はしないだろう。獲得を熟考し、彼も復帰を考えたが、最後には見送られることとなった」

 イブラヒモヴィッチの獲得が実現すれば、2011-12シーズン以来、6年半ぶりの復帰となっていた。2018年のシーズンは初挑戦のMLSで27試合に出場し、22ゴールと驚異の得点力。レベルの劣るリーグとはいえ、衰えを感じさせないパフォーマンスを見せた。10月に37歳の誕生日を迎えたが、この“傭兵隊長”の凄まじいパワーは、ミランでもまだまだ「使い物」になると認識されていたようだ。今夏にはゴンサロ・イグアインがミランに加わったが、これまで5得点と物足りない結果に終わっている。さらにはユヴェントス戦でPKを外し、終了前には退場処分を命じられたことで、イブラ待望論が強まった。

イブラヒモヴィッチ

噂されていたイブラヒモヴィッチの復帰は破談に終わった模様だ [写真]=Getty Images

 一方、懐疑的な声も聞こえていた。成長著しいパトリック・クトローネへの影響だ。公式戦63試合25得点の実績を上げてきた生え抜きの出場機会を奪い兼ねないというものだった。しかし、復帰が見送られた背景には財政的な問題があったようだ。レオナルドSDは財政問題に頭を悩ませている。「オーナーは補強に介入することを望んでいるが、遵守すべきルールというものがある。残念なことに、UEFAファイナンシャル・フェアプレーは難解なものとなった。理解するのが難しい。何ができるのか、待ち、理解しなければならない」
 
 イブラヒモヴィッチ復帰が見送られることになった一方で、ブラジルから21歳の新星、ルーカス・パケタが加入することが決定的となった。U-20ブラジル代表で10番を背負った逸材で、フラメンゴ下部組織からそのままトップチームでプロデビューし、今年はフル代表での出場も実現させた。すでにミラノ入りし、メディカルチェックを終えている。9日にはサンシーロで開催されたトリノ戦を妻のマリーア・エドゥアルダとともに観戦。パリ・サンジェルマン、リヴァプール、バルセロナといったビッグクラブも獲得に関心を持っていた中で、ミランを選択した理由をこう明かした。

「クラブの持つ歴史によって選んだ」

 ミランは、10-11シーズンを最後にスクデットから遠ざかり、13-14シーズン以来、チャンピオンズリーグ出場権すら得られない暗黒時代に陥っているが、今回は欧州の頂点に7度も輝いた歴史がモノを言ったようだ。おそらく“歴史”だけが威力を発したわけではないだろう。やはり、同胞のレオナルドSDの存在が大きかったのではないか。ミランで選手としても活躍し、監督も務めたレオナルドSDは、かつて強化部門のアドバイザー役として辣腕を振るった。カカ、チアゴ・シウヴァといったブラジル人プレーヤーをミランが難なく獲得できたことはこの男の存在が大きい。そして今回も、自身と同じ天才的レフティーの獲得に手腕を発揮した。フィニンヴェスト社からミランを買収した中国投資グループは実態がつかめず、疑わしさしかなかったが、レオナルドSDとレジェンド、パオロ・マルディーニがいるミランはどこか安心感がある。2人が存在するだけで健全さが感じられるといっても大袈裟ではないだろう。

 話をパケタに戻そう。すでにミラネッロも訪問したが、一旦はブラジルに帰国し、年明けに再びミラノ入りすることとなる。正式発表はその時になるようだ。イブラヒモヴィッチは財政的な面がネックとなり獲得が見送られたが、今回フラメンゴに支払う移籍金は3500万ユーロ(約45億円)もの大金になると推定される。背番号は39が濃厚で、ミラン史上、35人目のブラジル人プレーヤーとなる。

パケタ

ミラン加入が決定的と報じられているルーカス・パケタ [写真]=Getty Images

 今シーズンのセリエAは年内の29日まで試合が行われ、その後、冬季休暇に入る。ミランはリーグ戦が再開する直前の1月16日に、サウジアラビアでユヴェントスとのスーペルコッパを控えており、この試合がパケタの公式戦デビューとなる可能性が高い。華やかなテクニックを持ち、カカに匹敵するタレントと期待は高い。ただ、インテルに鳴り物入りで加入した同胞のガビゴール(ガブリエウ・バルボーサ)が欧州のスタイルに馴染めなかったこともあり、すぐに適応できるかは未知数だ。“テスト飛行”となるスーペルコッパでどれほどチームにフィットしたプレーを見せられるのか。まずはお手並み拝見といったところか。

 ミランは今一つ波に乗り切れないものの、第16節を終えて、かろうじて4位にしがみつくことができている。アレッシオ・ロマニョーリ、マッティア・カルダーラ、マテオ・ムサッキオの3人のセンターバックが離脱しており補強は必至に思われたが、右サイドバックが本職のイニャツィオ・アバーテがこのポジションに抜擢され、ラツィオ戦は3バックの右ストッパーとして、パルマ戦と古巣トリノ戦では4バックの中央の一角として出場。ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督の期待に応え、チームの緊急事態に救世主となるような気迫のこもったプレーを見せた。アバーテは32歳のベテランながら、初めてセンターバックを経験し、この歳で新境地を開拓することとなった。センターバックはアバーテの奮闘と、ロマニョーリがクリスマス前には復帰できる目処がついたため、補強の緊急性は薄れた感じだ。

 では、冬の移籍市場でミランはどのポジションの補強に動くのか。レオナルドSDは「中盤の選手に加え、FWを補強できれば、チームは改善されるだろう」と明かしている。やはり、ふくらはぎを手術し、最低でも3月までは復帰できない中盤の柱、ルーカス・ビリアの穴を埋めたいところだ。チェルシーからレンタルしているティエムエ・バカヨコがここ数試合で成長著しいところを見せているが、もう一つ質の高いプレーを見せることのできる選手の獲得が必要になる。

 有力候補は、チェルシーで出場機会を失いつつあるセスク・ファブレガスだ。イタリア紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、チェルシーは1000万ユーロ(約12億9000万円)から1200万ユーロ(約15億4000万円)で売却に応じるという。レオナルドSDも以前からセスク獲得に動いているようで、チェルシーが多少減額に応じることになれば、合意に至るとの見方もでている。また、セスクの獲得が失敗に終わった場合には、サッスオーロに所属するステファノ・センシの獲得に切り替えるものと見られる。セスクに比べるとネームバリューが落ちることは否めないが、11月のアメリカ代表とのテストマッチでイタリア代表デビューを飾っている23歳のプレーメーカー。1メートル68センチと小柄ではあるが、パリ・サンジェルマンでプレーするマルコ・ヴェラッティの後継者と期待される戦術眼の持ち主で、さらに化ける可能性は十分に秘めている。ともかく、ミランが中盤の選手の獲得に動くことは間違いないだろう。

 今冬のセリエAの移籍市場は1月3日に開幕し、18日に閉幕する。昨年までと比べ、約2週間少ない。例年よりも早くから活発な動きが見られることになるに違いない。

文=佐藤徳和/Norikazu Sato

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