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“悪夢”覚めるか…名門ミラン復活への道 強化は外様からレジェンド、経営は中国人からファンドに

2018.08.18

新生ミランの未来はいかに… [写真]=Getty Images

 ミランの新時代は、ロッソネロのDNAを持つ者の手で……。

 中国人オーナーとインテルOBである外様フロントに牛耳られていた15カ月を経て、名門復活はかつて数々の栄光をもたらしたOBたちの手に委ねられた。クラブ創設から119年目のシーズン、今度こそミランは復活の足がかりをつかむことができるだろうか。

 変革の夏、クラブは激動の波に揉まれた。

 昨シーズンのセリエAを6位で終えたミランは、今シーズンのUEFAヨーロッパリーグ本選出場権を得ていた。だが、UEFAはミランの収支状況がFFP(ファイナンシャル・フェアプレー)制度に著しく違反しているとして、6月に出場権剥奪という鉄槌を食らわせた。

 とりわけ問題視されたのが、リー・ヨンホン会長(当時)が買収時に担保とした中国国内の個人資産の不透明さで、マルコ・ファッソーネCEO(当時)が春から続けてきた働きかけも聞き入れられることはなかった。

リー・ヨンホン前会長(中央)、右がファッソーネ前CEO [写真]=Getty Images

 彼らはすぐさまTAS(スポーツ仲裁裁判所)に処分撤回を求めて控訴したが、見通しは暗かった。有利な判決を引き出すには、ミランの財政状況が改善方向にあると証明しなければならない。

 だが、国際ビジネス界での実績や有力なコネを持たないリー会長がトップの座に入る限り、ミランの財政信用度は低いままだ。買収時に米国ヘッジファンド『エリオット』社から3億ユーロ(約380億円)超もの高利融資を受けているリーの返済能力は随分前から疑問視されていた。

 TAS裁定を待つ間、リー会長の下には複数の富豪からクラブ買収の打診があったが、不可解にも彼はそれらを突っぱねている。

 本拠地であるサンシーロに顔を出したのは数えるほどで、肉声を発することも稀な中国人オーナーを支持するミラニスタは皆無に等しかった。彼は“裸の王様”だった。

 “チャイニーズ・ミラン”が事実上終焉したのは、7月6日のことだ。

『エリオット』が立て替えていた増資分3200万ユーロ(約40億円)の返済期限をリー・ヨンホンが破ったことで、融資元の同社は抵当権を発動。担保となっていた“ミランの経営権”は、ヘッジファンドの下へ移譲されたのだった。

 果たして、そこからの『エリオット』の動きは迅速だった。

 UEFAとTASに3~5年の中期的投資計画を提示し、クラブ財政基盤の安定を確約。加えて、国際ビジネス界で信用度ある人物を新会長に就けることも保証した。この手の交渉術こそ、生き馬の目の抜く金融界で知らぬ者なしの彼らが最も得意とするところだ。

 7月20日、TASが新経営陣の申し出と処分撤回を認め、今シーズンのEL出場が確定すると、それまでの停滞感がウソのようにミランを取り巻く事態は一気に動き出した。

新会長となったスカローニ氏 [写真]=Getty Images

 翌日には、クラブ第25代会長として国際金融ビジネス界の大物パオロ・スカローニ氏が就任した。

 ロスチャイルド投資銀行の副会長職を本業とする彼は、昵懇の仲である『エリオット』社総帥ポール・シンガー氏からリー時代のミラン最高役員会議に、お目付け役としてすでに送り込まれていた。イタリア北部のビチェンツァ出身であるスカローニ氏は、かつて故郷クラブの会長職も務めたほどサッカーに理解があり、ミラン元会長シルヴィオ・ベルルスコーニ氏とも旧知で、自身「ミラニスタである」と公言している。

 彼と『エリオット』の息のかかった新役員たちは、経営会議から正式にリー前会長以下4人の中国人メンバーを追い出すと、彼らが招いたファッソーネCEOとマッシミリアーノ・ミラベッリSDも即時解任した。

 新会長らは賢明にも己の役目をクラブの財政健全化に定め、チームの建て直しは現場の哲学をよりよく知る者に委ねる判断を下した。それが、レオナルド・ナシメント・ジ・アラウージョ、通称レオナルドのTD(テクニカル・ディレクター)招聘だった。

ミランに“復帰”するレオナルド [写真]=Getty Images

 選手とフロント、そして監督としてロッソネロに仕えた稀有な人材であるレオナルドは、まず現指揮官であるジェンナーロ・ガットゥーゾの留任を確約した。巷にあったチェルシー前監督アントニオ・コンテ招聘の噂を一蹴し、2人の間にあった過去の確執も「昔の話だ」と解消。すべてはミラン再建という難事業にともに挑むためだ。

 そして、レオナルドTDと『エリオット』は、ミラン再建の意志が本物であることを示すために、とっておきのカードを切った。レジェンド中のレジェンドOBであるパオロ・マルディーニを招聘したのだ。

 9年前の現役引退以来、伝説の“カピターノ”は古巣と距離を置いてきた。チャイニーズ・ミラン時代に一度断ったフロント入りを決めたのは、「レオナルドとの友情がベースにあったからだ」とストラテジー・ディレクター就任会見で語った。

 古巣復帰から間もない8月11日、サンチャゴ・ベルナベウでのレアル・マドリードとのプレシーズンマッチに同行したマルディーニに、CL3連覇チームの主将セルヒオ・ラモスが頭を垂れたシーンが話題を呼んだ。指揮官ガットゥーゾも「マルディーニがロッカールームに入った瞬間、場の空気が変わる」と早くも引き締め効果があることを明らかにした。欧州サッカー界における“マルディーニ”という名前が持つ影響力は今も絶大だ。

セルヒオ・ラモスにトロフィーを渡すマルディーニ [写真]=Getty Images

 マルディーニは今後、レオナルドの右腕としてトップチームと育成部門、移籍市場の分野で働くことになる。

『エリオット』の資金バックアップを受けるようになったミランは、今夏の移籍市場でひとまず8100万ユーロ(約100億円)をつぎ込んだ(※8月15日時点。移籍最終日の17日にディエゴ・ラクサールとサムエル・カスティジェホも獲得)。就任会見で「FFP規定遵守は市場での絶対条件」と強調したレオナルドTDだが、蓋を明けてみれば、攻めの補強で戦力のブラッシュアップを図った。

 昨年鳴り物入りで加入し、初年度から主将を務めたイタリア代表DFレオナルド・ボヌッチに対しては、古巣ユヴェントス復帰への意志が固いと見るや慰留に固執せず、即座にFWゴンサロ・イグアインとDFマッティア・カルダーラの獲得交渉に切り替え、成立に導いたレオナルドTDの判断と手腕は流石という他ない。

ゴンサロ・イグアイン

夏の補強の目玉となったイグアイン [写真]=Getty Images

『エリオット』の支援を受けるミランは当面の間、資金繰りに困ることはないだろう。ただし忘れてはならないのは、『エリオット』の本業がサッカークラブ経営ではなく、“利益追求”にある点だ。

 この先、ミランが好成績を上げ、売上等の企業業績が上向きとなり市場での評価が上がれば、ミランの経営権を別の第三者に転売したり、株式上場して売りに出すことは十分に考えられるシナリオとして覚えておく必要があるだろう。

 ミランはスクデット争いからもCLからも遠ざかり、この2年で2度もオーナーが変わった。

 マルディーニは古巣再建のためのキーワードとして「忠誠と誇り、そしてミラン愛」を掲げた。

「レオナルド×マルディーニ×ガットーゾ」というレジェンドOBトリオ体制が、ミランの新時代を牽引する。自らの手で栄光を勝ち取ってきた彼らが、2シーズン連続6位という現状に満足しているはずがない。

 彼らの一挙手一投足には、歴戦の英雄だけが持つ自信と決意が漲っている。

 ミラニスタたちに興奮するな、と言うのは無理な相談だ。

文=弓削高志

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