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【コラム】今季も不振を抜け出せないインテル…サポーターとの絆にもほころび

2017.05.16

試合序盤にスタジアムから立ち去るインテリスタ [写真]=Getty Images

 20年近くセリエAの取材をしているが、14日のインテル対サッスオーロ戦で初めて目にした光景に、我が目を疑った。

 前半22分過ぎ、熱狂的なインテリスタの指定席“クルヴァ・ノルド”から、どんどん人がいなくなっていったのだ。2階席最前方の柵には次の横断幕が掲げられた。「Visto che il nostro sostegno non ve lo potete meritare. Oggi vi salutiamo e ce ne andiamo a mangiare」(我々のチームを支える気持ちは、あなたたちには値しないんだ。今日はみなさんにさよならと挨拶して、ランチに行くことにします)。痛烈な皮肉を込めた内容だった。

 試合開始前からサポーターが観戦をボイコットして空席を目立たせることはこれまでに何度かあったが、試合途中で観戦放棄をするという新しい形の悲しいパフォーマンスだ。すでにインテリスタが、チームへの怒りを超えてあきらめの心境に差し掛かったことを表していた。試合開始が昼の12時半キックオフだった点もうまく利用した。それもそのはず、3月12日のアタランタ戦以降、インテルは勝ち星を挙げていない。2カ月以上のスランプはいくら何でも長すぎる。

 クラブは7日のジェノア戦後、ステファリ・ピオリ監督を解雇した。しかし、今シーズンあとわずか3試合を残しての“電撃解雇”に、一体何の意味があるのか。ショック療法といえども、ヨーロッパリーグ出場権獲得がほぼ不可能になった選手たちに無力感を与えただけだったのではないか。これで選手たちが目を覚ますという効力を、クラブ側は本気で信じていたのか。全く理解できない。

 そして迎えたサッスオーロ戦での前半、インテルの選手たちには全く覇気がなく動きもバラバラ。あのインテルの一員としての自信と誇りはどこにいってしまったのだろうか。自信が喪失し、目標やモチベーションを取り戻せない哀れな選手たちだった。

 後半から出場し、得点をマークしたイタリア代表FWエデルは試合後、「もはや個人的に誰の責任かを問うている場合じゃない。チームに残りたい選手、移籍したい選手はそれぞれその意向をクラブに伝えるべきだ。すべてを明確にしなければ」と厳しい口ぶりだった。また、元スロヴェニア代表GKサミール・ハンダノヴィッチも「2011年からここにいてサポーターとの関係は変わらない。僕らはいつも7、8位に留まり彼らに我慢を強いている」と冷静に分析した。大改革が必要だ。

 第34節のナポリ戦でスペイン代表FWホセ・カジェホンへの痛恨の“アシスト”を献上した日本代表DF長友佑都は、自身のツイッターで「犯罪者扱いされる」と不満を爆発させた。一方、第35節のジェノア戦でPKを失敗したイタリア代表MFアントニオ・カンドレーヴァは、公の場で「インテルはもっといい成績を残せたはずだ。ネガティブな一年だった。インテリスタに謝罪する」と正直に否を認めた。

 勝利あるのみのセリエAではクラブ、選手たちとサポーターの絆は強くも脆もろくもなる。個人的には、長友には何らかの形でナポリ戦のミスを挽回してから、ツイッターで本音をつぶやいてほしかった。負け犬の遠吠えにしか聞こえず、虚しさだけが残ってしまった。

文=赤星敬子

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