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【セリエA開幕展望】ミラン 目標はかつての”黄金期”も進まぬ補強戦略 本田にとっては苦難のシーズンか

2016.08.19

 昨シーズンのミランはシニシャ・ミハイロヴィッチ監督の下、3シーズンぶりのチャンピオンズリーグ(CL)出場権確保を目標としてリーグ戦に臨んだ。しかし、セリエA開幕から波に乗ることができずに中位をさまようと、2016年4月にクラブOBのクリスティアン・ブロッキ氏へ監督交代。それでも状況は最後まで変わらず、7位でシーズンを終えた。結局、目標としていたCL出場権はおろか、ヨーロッパリーグ出場権も逃してしまい、3季連続で欧州カップ戦への復帰が叶わなかった。

 今夏は遂に中国投資グループへのクラブ売却が合意に達し、ミランの歴史に新たなページが刻まれる。フィオレンティーナなどで手腕を発揮してきたヴィンチェンツォ・モンテッラ新監督の下、クラブがどこまで復権できるのか。ロッソネーリは重要なシーズンを迎えることになる。

ヴィンチェンツォ・モンテッラ

ミラン復権を託されたモンテッラ監督 [写真]=Getty Images

■ここまで目立った補強はなし

 6月末にそれまで候補として挙げられていた人物ではなく、サンプドリアを率いていたモンテッラ氏が新監督に就任したミラン。早くに指揮官を決めてチーム作りに動き出すところまではよかった。しかしその後、シルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長の心臓手術、入退院などでクラブの売却が遅れたのが痛かった。何人もの中国人実業家、企業グループの名前がメディアを賑わせたもののなかなか正式契約とはいかず、資金力がものをいうメルカート(移籍市場)で完全に出遅れた。早々に獲得できたのはペスカーラで1部昇格の立役者となったFWジャンルカ・ラパドゥーラぐらいだ。

ジャンルカ・ラパドゥーラ

新戦力のラパドゥーラは未だに別メニュー調整が続く [写真]=Getty Images

 昨シーズン、セリエBで30ゴールを決めて得点王に輝いたこのラパドゥーラは、残念ながらプレシーズン・マッチで全くプレーしていない。それどころかミラノ郊外の練習場ミラネッロでも全体練習に参加しておらず、ずっと別メニューで調整を続けているという。つまり、コンディション的には完全に出遅れているのだ。7月上旬の入団会見の際も足首と腱に問題を抱えた状態で、痛みをこらえる様子が見られた。ペスカーラの大黒柱として昇格プレーオフまで死力を尽くして戦い抜いたその疲れと、完全に故障が治らないまま移籍加入した影響だろう。与えられた背番号9のユニフォーム姿は、まだ一度もピッチで披露されていない。本人は27日に行われるセリエA第2節のナポリ戦で招集されることを目標にしているというが、クラブにとっては大きな誤算だろう。

 新加入のDFレオネル・バンジョーニにも同じくコンディションが整っていないため、完全復帰の目途はたっていない。唯一の前向きな獲得をしたと言えるのは、センターバックのグスタボ・ゴメスだろうか。ただG・ゴメスも100パーセントの調子で試合に出られるところまで体ができていない。シーズン序盤戦はフルメンバーで試合に臨むことは難しそうだ。

カルロス・バッカ

退団報道から一転して残留濃厚となったバッカ [写真]=Getty Images

 一方でミランを退団する方向でウェストハムなどと移籍交渉を詰めていたカルロス・バッカは、結局ミランに残ることになった。昨シーズンのリーグ戦でチームトップの18ゴールをマークしたエースの残留は、モンテッラ監督にとっても喜ばしいニュースと言えるだろう。

■新指揮官がどこまでクラブを立て直せるか

 ヨーロッパのトップレベルから離れて久しいミラン。モンテッラ監督が掲げた「黄金期のミランへの復活」という目標は、かなり難度が高い。同監督にとっては初のビッグクラブでの采配となる。ミランは大きな補強もなく、選手は昨シーズンとほとんど変わっていない。3トップがそれぞれ爆発的にゴールを挙げれば話は別なのだが……。ここ3、4年、ミランは何人もの監督を取っ替え引っ替えに試してきたが、結果を残せた者はいなかった。与えられた駒でモンテッラ監督がクラブをどこまで立て直せるか。ここまでプレシーズン・マッチの結果は決して悪くはない。調子に波のあるエムバイェ・ニアンがコンスタントに点を決め、バッカが昨シーズンと同様にゴールを決められるのなら、上位浮上の可能性も出てくる。

ミラン

指揮官が目標とするのは、かつて黄金期を誇った頃のミラン [写真]=Corbis via Getty Images

■本田に出場機会はあるのか

 ミラン在籍4年目を迎える本田圭佑は、8月10日に行われた変則マッチのTIMカップのセルタ戦で、今シーズン初めて先発出場した。3トップの右サイドというのが本田に与えられたポジションだ。バッカをセンターにした両サイド、スソ&ニアンのコンビと、本田&ルイス・アドリアーノの2人では、プレシーズン・マッチでプレー機会の多かったスソ&ニアンの方が「機能している。流れがスムーズだ」というのが大半の見方だ。セリエA開幕前最後の練習試合、ドイツでのフライブルク戦では、スソが筋肉疲労、ニアンは右太ももの痛みのため、大事をとって遠征メンバー参加が見送られた。このフライブルク戦で本田は3トップの右サイドで先発し、L・アドリアーノのゴールをアシストした。それでも、現状では本田がレギュラーポジションを獲得することは難しいと言わざるをえない。

本田圭佑

TIMカップで今季初めて先発出場した本田圭佑 [写真]=Getty Images

 本田はユーロ2016やコパ・アメリカなどに参加したわけでもないが、オフで疲れが十分に取れなかったのか、7月まで本格的な体調ではなかったようだ。コンディション作りが遅れているというものだった。その間、本田のライバルであるスソは、ゴールを決めるなど得点力をアピールした。

 モンテッラ監督は21日のトリノ戦に向けて、スソとニアンのコンディションを見極める最終段階に来ている。ミランは欧州カップ戦にも出場せず、セリエとコッパ・イタリアだけが公式戦となる。試合数が少なければプレーする時間も限られてくるため、本田にとって厳しいシーズンのスタートとなりそうだ。

文=赤星敬子

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