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【コラム】新天地で得た手応え…“ハリルの秘蔵っ子”宇佐美、11月の代表復帰はあるか?

2017.10.30

新天地デュッセルドルフで確かな手応えを感じている宇佐美貴史 [写真]=Bongarts/Getty Images

 10月24日のDFBポカール2回戦。今シーズン、ブンデスリーガ2部首位を独走中のデュッセルドルフは、1部のボルシアMGをホーム・エスプリアレナに迎えていた。

 フリードヘイム・フンケル監督が「支配率は70対30とか、80対20くらいになるけど、相手より走るところで負けるな」と指示した通り、彼らは格上相手に善戦し、前半を0-0で折り返した。だが後半開始早々、相手の攻撃の軸を担うトルガン・アザールに手痛い一発を浴び、ビハインドを強いられる。

 迎えた68分、「4-3-2-1」の左FWに位置していたペニト・ラマンに代わってピッチに送り込まれたのが、33番をつける宇佐美貴史だった。8月末にアウクスブルクから電撃移籍し、6試合出場(先発2試合)2ゴールという数字を残している日本人アタッカーは、久しぶりの1部相手のゲームに意欲満々だった。

 登場後すぐの時間帯は足元でボールを受ける場面が目立ったが、右サイドバックのユリアン・シャウェルテのクロスにヘッドで飛び込んだ74分の得点機に象徴される通り、シンプルにゴールに向かう形も徐々に見せ始める。他の攻撃陣と流動的にポジションを変えながらチャンスを作ろうとする姿はガンバ大阪時代を彷彿させた。アウクスブルク時代は頭の上をボールが超えていくようなスタイルに苦しみ、自分らしさをまるで出せなかった彼にとって、新天地のスタイルはかなり理想に近い。最終的にこの試合は0-1で敗れてポカール上位進出は叶わなかったが、宇佐美の中では「やりたいサッカーに近いものができている」という手応えが大きかったようだ。

「ここまで2カ月くらいやってきて、先発組の一歩手前のところまでは来ていると思う。同じサイドのポジションに入っているペニトも僕とはタイプが全然違いますし、共存ができるかなと。裏に抜けてくれるから、僕の中ではそこを使うイメージはできていますし、むしろ一緒にやって流動的に動きながら自分たちの時間を長く作れる気がします。そういう意味でもここに来たかいがありましたね」と宇佐美はしみじみと語っていた。

 チームの戦力としては認められているが、まだレギュラーを手にしていないため、11月のブラジル(リール)・ベルギー(ブルージュ)2連戦に挑む日本代表に復帰できるかどうかは微妙な情勢だ。5月から6月の欧州組合宿とシリア戦(東京)に帯同した後、4カ月間代表から遠ざかり、2018 FIFAワールドカップロシア出場権を獲得した8月のオーストラリア戦(埼玉)も間近で見ることはできなかったが、代表への思いは依然として強い。

宇佐美貴史

代表復帰は叶うか… [写真]=Getty Images

「加わりたい気持ちのみですよ。でも、お呼びがかからなければ行けない場所ですから。移籍したのも、(代表復帰のために)試合に出なきゃいけないっていう気持ちがあったから。今はゆっくりではありますけど、少しずつ段階を踏んでいってるかなと感じています」

「その後、代表の選手とは全く連絡を取ってません。個人個人の状況もインスタグラムで知るくらい。俺の状況もそうやと思うし。2人目(の子ども)ができたんやとか(笑)。今はそれだけデュッセルドルフでのプレーに集中しているということ。ピッチ内ではサッカーのみですし、ピッチ外は家族や子どものみ。その2つだけですね」と本人はスッキリした心境で新天地での結果に集中していることを明かした。

 仮にデュッセルドルフの2部優勝に貢献できれば、彼自身の評価も自ずから上がる。2013年夏にG大阪に復帰してJ2制覇の原動力となり、翌2014年の国内3冠獲得を経験している宇佐美にはその事実の重さがよく分かっている。

「ドイツ2部でもタイトルを取れれば、ドイツに来て初めてのタイトルになるわけですし、日本に帰った時もそこから始まっている。そうやって地道にステップアップしていくのが大事かなと思っています。今、そこを目指せる集団の中に入れているので、自分の仕事を引き続きやること、プレーと振る舞いの両方で周りをリードしていけるようになれたらいい。25歳っていうのはドイツでは決して若くない。本当に若くて優秀な選手が次々と出てきているから。最初に自分がドイツに挑戦した頃とは立ち位置が全く違いますよね」と彼は神妙な面持ちで言う。

 こうした自覚はプレースタイルの変化にもつながっている。かつてホッフェンハイムにいた頃は左サイドで張ってボールが来たら強引にドリブル突破してゴールを奪いに行くというエゴが少なからず垣間見えたが、今はチーム第一という姿勢が色濃く伺える。守備意識も格段に上がった。そういったオフ・ザ・ボールの質の向上が、最大のテーマであるゴールにつながり、代表復帰という成果となればベストなのだが…。

「ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の秘蔵っ子」と言われた怪物FWは、ロシアへの挑戦権を得るための重要なハードルである11月遠征に参戦できるのか。31日の代表メンバー発表が楽しみだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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