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【コラム】鎌田ら若手選手に「落ち着きを」…後輩の“思い”を理解する長谷部が担う役割とは

2017.10.23

今季からともにフランクフルトでプレーする長谷部(左)と鎌田(右) [写真]=Bongarts/Getty Images

 昨シーズンのブンデスリーガでは守備重視の戦い方で一時3位まで浮上しながら、長谷部誠の長期離脱などが響いて、最終的に11位でフィニッシュしたフランクフルト

 今シーズン立ち上がりもフライブルク、ヴォルフスブルク相手に勝ち星を奪えず、苦しいスタートを余儀なくされた。が、夏の移籍期間に獲得したセバスティアン・ハラーやケヴィン・プリンス・ボアテングらが徐々にフィットし、9月半ば以降は勝ち星が先行するようになる。9月30日のシュトゥットガルト、10月14日のハノーファーと、昇格組との連戦をモノにしたことで、順位も1ケタに上げてきた。

 そんななか迎えた10月21日のドルトムント戦。今シーズン開幕からハイペースで勝ち点を積み上げてきた強豪に対し、フランクフルトは先に2点を奪われ、厳しい戦いを強いられた。「3-4-1-2」のリベロで先発した長谷部は、ヌリ・シャリンに決められた先制点のシーン(19分)では裏を取られ、マキシミリアン・フィリップに許した2点目の場面(58分)でも寄せの甘さを露呈。「1失点目は自分のミスでしたし、2失点目ももう少しシュートを打った選手に対していい対応ができた。個人的にやられてしまった」と本人も反省の弁を口にした。

長谷部誠

悔いの残る失点を喫した [写真]=Bongarts/Getty Images

 それでも、この日のフランクフルトは前半から攻めの勢いを押し出し、得点の匂いを色濃く感じさせていた。2点のビハインドを背負った直後、ニコ・コヴァチ監督はマルコ・ルスに代えてブラニミル・フルゴタを投入。前線を3枚にして前がかりになった。この采配が功を奏し、64分にはハラーのPKで1点を返し、その4分後にはマリウス・ヴォルフが同点弾をゲット。香川真司は「途中出場してこの終わり方は残念。でも試合内容を見た中では妥当な結果」とフランクフルトのアグレッシブな戦いを称えていた。

 ここまで9戦で4勝2分3敗の勝ち点14という結果はまずまず。指揮官が昨シーズン以上に攻撃に比重を置いたことも好調の一因だが、「チームの競争激化」も1つの重要ポイントであると長谷部は見ている。

「今、このチームは選手がすごく多くて、ケガ人を含めると十何人もメンバーに入ってない選手がいる。競争が厳しい中でチーム力も上がっていると感じますし、監督の引き出し方もすごくうまい。(鎌田)大地も含めて全員がチャンスを待つ中、それを少なからずみんなに与えている。このままうまくいけば、本当に上に行けるだろうし、逆に転べばもう少し下の順位にいるのかなと思います」とコヴァチ監督から絶大な信頼を寄せられるベテランは前向きに言う。

 長谷部が指摘する通り、今シーズン加入した鎌田も8月20日の開幕節・フライブルク戦と9月23日のライプツィヒ戦の2試合でスタメンのチャンスを与えられている。

鎌田大地

ライプツィヒ戦でスタメン起用された鎌田 [写真]=Bundesliga/DFL via Getty Images

「大地は監督にすごく期待されている」と日本代表キャプテンも太鼓判を押すほど、21歳の日本人ファンタジスタは飛躍の可能性を垣間見せている。しかしながら、ボアテング、ヴォルフらの壁は厚く、サガン鳥栖にいた頃のようにはコンスタントにピッチに立つことはできていない。それは鎌田にとって辛く苦しい時間に違いない。ただ、原口元気(ヘルタ・ベルリン)も宇佐美貴史(デュッセルドルフ)も移籍当初はフィジカルやコンタクトの部分で苦しみ、異国への適応に時間がかかった。それを踏まえると、今の試合に出たり出なかったりの状況は鎌田にとって必要な時間なのかもしれない。

 長谷部自身も23歳で浦和レッズからヴォルフスブルクに移籍して以降、さまざまな紆余曲折を経験してきた。移籍2年目の2008-09シーズンはブンデス制覇という最高の時を味わったが、その後は右サイドハーフやサイドバックに起用されたり、フェリックス・マガト監督から構想外の扱いを受けたり、13-14シーズンに在籍したニュルンベルクで2部降格の憂き目に遭ったりと、そのキャリアは決して順風満々ではなかった。ドイツで足掛け11シーズンを過ごしてきた彼には後輩の思いがよく分かるはず。だからこそ、今は若い選手のメンタル面を安定させることを第一に考えているという。

「若い選手たちは経験ある選手たちの一挙手一投足を見ていると思うので、そういう意味ではチームに落ち着きをもたらすことが大事。それは監督からも言われていますし、自分の役割は大きいかなと思います」と本人も神妙な面持ちで話す。

長谷部誠

コヴァチ監督からは絶大な信頼を得ている [写真]=Bongarts/Getty Images

 だからと言って、ベテラン選手としてどっかり構えるつもりがないのが長谷部という男。つねに自身を進化させようという思いを抱き続けている。

「自分は今、『落ち着かないこと』をテーマに考えています。リベロというポジションでより多く出ているので、あのポジションは中盤よりも、いわゆる『目でプレーできる』ところがある。このドルトムント戦なんかも、もっともっとボールを触って自分が組み立てていく部分をやらなければいけなかった。そこを最近はうまくやれていないので、もう少し求めていきたいですね」

 そうやって33歳になっても貪欲に高みを追い求め続ける彼の姿は、鎌田ら若手の大きな励みになっているだろう。しかもこの背番号20は今年3月に負傷した右ひざのケガが完全に癒えていない中、懸命にチームを鼓舞し続けている。

「足がよかったり悪かったりするので、僕もひざに機嫌を聞かないと分からないところがある」と本人も苦笑いするほど、状態は刻一刻と変化しているという。にもかかわらず、どんな時もベストを尽くし、チームの勝利のために全身全霊を込めて戦う勇敢さを、同じ日本からやってきた21歳の若きアタッカーは学び、ピッチ上で実践する必要がある。

 長谷部と鎌田が揃ってコンスタントにピッチに立てるようになるまではもう少しが時間がかかるだろう。が、近い将来、必ずそういう日がくるはず。2人がお互いに刺激し合いながら、フランクフルト、そして日本サッカーにプラス効果をもたらすことを切に祈りたい。

文=元川悦子

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