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内田が移籍したウニオン・ベルリンってどんなクラブ?…熱いファンと共に悲願の1部初昇格へ

2017.08.23

内田篤人が移籍したウニオン・ベルリンとは? [写真]=City-Press via Getty Images

 DF内田篤人が7年間在籍したシャルケを退団し、2部のウニオン・ベルリンに電撃移籍した。再起を図る内田が活躍の場を求めたウニオン・ベルリンとはどのようなクラブなのだろうか?

 ウニオンは1906年に創立され、1920年代までにベルリン南西部のクラブが統合を繰り返し、ドイツを代表する強豪にまで成長した。「ウニオン(連合)」という名前は、この時代からの名残が定着したものだ。その後、1949年に東西ドイツに分裂した際に、クラブも分裂を経験したが、再び統合と名称変更を繰り返して、1966年に現在の姿になった。

 そして1968年にはFDGBポカール(東ドイツ国内カップ戦)を制覇し、初のタイトル獲得を果たした。しかし、栄光は続かず、1986年にFDGBポカール決勝で敗れて2つ目のタイトル獲得を逃し、東ドイツリーグが1991-92シーズンからブンデスリーガに編入されて以降は、現在も1部リーグでの戦いを経験していない。

 それでも、00-01シーズンには3部優勝で編入後初の2部昇格を果たすと、DFBポカールでも格上をなぎ倒して決勝に進出。シャルケに敗れて準優勝に終わるが、3部クラブの快進撃で国内を沸かせた。その後、一度3部降格を経験するが、09-10シーズンから再昇格し、今シーズンで2部での戦いは9年目に突入した。

2001年のDFB杯では3部所属ながら準優勝の快進撃を見せた [写真]=Bongarts/Getty Images

熱いサポーターが支える“カルトクラブ”

 1部を経験していないウニオンだが、サポーターは熱狂的でクラブ愛が強く、「カルトなクラブ」としても知られている。1万6000人を超えるクラブ公式会員は、自前でスタジアム建設を進め、クラブが財政難のときには自分たちが資金集めに奔走するほど、積極的で強固なつながりを誇っている。ヨーロッパでは一般的に家族で過ごすクリスマスでさえも、ベルリン中のファンたちがスタジアムを満員にして集会を開くのが恒例だ。

 財政難に陥った2004年には、同じくカルト的なクラブで有名なザンクトパウリ(現在FW宮市亮が所属)と、「ウニオンのために血を流せ」というキャンペーンを展開。“カルトクラブ”同士の結び付きも強い。ただ、そんなサポーターの団結力の強さが“熱さ”を呼び、試合中にスタンドを発煙筒で真っ赤に染めるなど過激な行為もたびたび見受けられる。

発煙筒などを使う過激なサポーターもいる [写真]=City-Press via Getty Images

「カルトなクラブ」の理由は“オスタルギー”にある。これは東ドイツを懐かしむノスタルジーを意味する造語だ。ウニオンの試合前には、東ベルリン出身の歌手ニナ・ハーゲンが歌うスタジアムソング『アイゼルン(鋼鉄の)・ウニオン』が流れ、サポーターたちも大合唱で歌声を響かせ気持ちを高ぶらせる。ウニオンには旧東ドイツの影が色濃く残り、国内のファンから一目を置かれるクラブなのだ。

「鋼鉄のウニオン」という1920年代の呼称を今もなお大事に使い続け、記者会見では旧東ドイツを彷彿とさせるスタイルで監督やスタッフが台を前に立ったまま話す。本拠地「シュタディオン・アン・デア・アルテ・フェルステライ」も、昔の王家が狩りに使った森のロッジが近くにあったことから、「森のロッジのそばにあるスタジアム」という意味の名前がそのまま残っている。ネーミングライツのような現代的な仕組みとは一切関わりなく、飾り気のない旧東ベルリンの直接的な物言いを連想させる。クラブ公式サイトも東ドイツの要素をところどころに散りばめられ、こういった垢抜けない雰囲気が、ロマンチックでレトロ調を好むドイツのサッカーファンの心をくすぐるのだろう。

約2万人収容のスタジアム。当時のお城がモチーフとなっている [写真]=ullstein bild via Getty Images

 同じくベルリンに本拠地を構える“西側”のヘルタ・ベルリン(現在MF原口元気が所属)とは東西分裂時代の苦労を分かち合う存在として、サポートする部分もあったという。ベルリンの壁崩壊前を知るオールドファンたちのシンパシーを呼んでいるのだろう。しかし時代は進み、最近はそんな苦労を知らない若い世代が増えるに連れ、ライバル意識が強まり敵対する傾向にあるようだ。

現在のチーム状況は? 内田のポジション確保の可能性は?

 ウニオンは昨シーズン、1部初昇格に向けてイェンス・ケラー監督を招へいした。2012年冬から2014年秋までシャルケを率いた指揮官は、若手選手を積極的に起用し、豊富な運動量を活かした鋭いショートカウンターでチームを飛躍させた。レアル・マドリードでプレーするトニ・クロースを兄に持つフェリックスも昨シーズン加入し、ようやく水の合うチームに出会えてキャプテンとしてその才能を開花しつつある。チームは最終的に4位で終え、最も1部に近づいたシーズンとなった。

F・クロース

キャプテンを務めるフェリックス・クロース [写真]=City-Press GbR

 今シーズンは第3節終了時点で2勝1分とスタートダッシュに成功した。最後まで昇格争い絡んだ昨シーズンに続き、今シーズンも期待が大きい。地元紙『Berliner Kurier』が2部の各監督に行ったアンケートでも、18人中10人の監督がウニオンを昇格候補に挙げるほどだ。地元ベルリンのファンも1部でのダービーマッチの実現を心待ちにしている。

 地元紙『B.Z.』は、昨シーズン1部昇格を逃した理由を「経験の少なさから重要な勝ち点を取りこぼしてしまったから」と分析している。今夏はすでにケルンから21歳のドイツ人MFマルツェル・ハルテル、フライブルクから31歳のスペイン人DFマルク・トレホンら6名を補強。さらにチームに“経験”を加えるため、ケラー監督はシャルケで重用した内田を呼び寄せた。

内田篤人

内田は2012年〜2014年にケラー監督のもとでプレーした [写真]=Bongarts/Getty Images

 右サイドバックで内田のライバルとなるのは、30歳のオーストリア人DFクリストファー・トリンメルだ。2014年夏にオーストリアからウニオンに移籍したトリンメルは、加入以降レギュラーとして活躍し、チームを良く知っている。バックアップとの報道もあった内田だが、それでもブンデスリーガ1部を戦ってきた経験や指揮官との信頼関係がポジション争いで有利に働くだろう。

『B.Z.』紙も「ゲームの展開を読みながらポジショニングで緩急をつけられる能力と、豊富な経験は貴重なものになる」と内田を高く評価。マネージャーのヘルムート・シュールテ氏も「経験豊富な素晴らしい選手と契約できた。チームはますます強くなると確信している」と大きな期待を寄せている。

 ワールドカップイヤーの今シーズン、復活を期す内田篤人が選んだのは、旧知の中のケラー監督の下で実践感覚を積むこと。シャルケファンからプロフェッショナルな態度で“ウッシー”の愛称で親しまれた内田は、新天地の熱いサポーターたちにも愛される存在となるのだろうか。

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