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監督交代で揺れるルール地方の両クラブ…ドルトムント&シャルケの来季への動き

2017.06.12

今夏、監督交代を敢行したドルトムント(左)とシャルケ(右)[写真]=Getty Images

 6日に発表された日本代表MF香川真司が所属するドルトムントの新監督就任に続いて、9日にはDF内田篤人の所属するシャルケがマルクス・ヴァインツィアル監督を解任し、後任にブンデスリーガ2部のエルツゲビルゲ・アウエを奇跡的な残留に導いたドメニコ・テデスコ監督を招へいした。

 前指揮官のトーマス・トゥヘル監督にしろ、ヴァインツィアル監督にしろ、解任の噂は今シーズン終盤の4月末から本格的に騒がしくなっていた。ドルトムントの場合は、一時は和解が報じられたものの、ハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEO(最高経営責任者)とトゥヘル監督の対立が煽られ、シャルケの場合はスポーツディレクター(SD)を務めるクリスティアン・ハイデル氏のヴァインツィアル監督に対する「戦術上のコンセプトが感じられない」あるいは「クラブの至る所が発展を見せている、ピッチ上以外では」というコメントが繰り返し引用され伝えられた。

ドルトムントはひと悶着の監督交代

 DFBポカール決勝直前のドイツ紙『シュポルト・ビルト』では、ドルトムントではチーム内にトゥヘル監督を支持するギリシャ代表DFソクラティス・パパスタソプーロスやスイス代表GKロマン・ビュルキ、ドイツ代表MFユリアン・ヴァイグルらのグループと、ドイツ代表DFマルセル・シュメルツァーやトルコ代表MFヌリ・シャヒンといった批判的なグループに分かれていたことが伝えられていた。最終的にはドルトムントが約290万ユーロ(約3億6000万円)の違約金をトゥヘル前監督のスタッフチームに支払い、収拾をつけた。

ボス

ドルトムントの新指揮官に決まったボス氏。現役時代にはJリーグでもプレーした [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images

 ドルトムントが500万ユーロ(約6億円)を支払ったものの、一方でボス監督とアヤックスの間にもひと悶着あったようだ。『シュポルト・バザー』はアヤックスのマネージャーを務める元オランダ代表GKエトヴィン・ファン・デル・サール氏の「我々はボス監督を引き止めたかったが、彼は今の雰囲気のなかで仕事をしたくなかったようだ」というコメントを受けて、ボス監督のスタッフチームと、アヤックスで長年プロジェクトを進めてきた元オランダ代表FWのデニス・ベルカンプ氏らクラブスタッフとの間に行き違いがあったことを伝えている。

 ドルトムントは新監督に加え、新加入選手も続々と決まっており、再びチーム編成を組み直す必要がある。ドルトムントの地元紙『レヴィア・シュポルト』のマリアン・ラスケ記者は「ボス監督は再び選手たちをひとつにまとめなければならない」という題のコラムを掲載。「(マルク・)バルトラや(ウスマン・)デンベレ、(クリスティアン・)プリシッチのようにトゥヘル氏のもとで大きな成長を遂げたと実感し、褒め称える選手たちもいる。その一方で、ロッカールームで影響力の大きな選手たちをあまりにも軽率に扱い、信頼を失ってしまった。ボス監督の最初の仕事は再びメンバーをひとつにまとめることだ。トゥヘル氏と同様に完璧主義のボス監督は戦術について何時間も説明することは出来るだろう。だが、彼はまずは人としてチームを納得させなければならない」と前任者と同じ轍を踏まないよう警告している。

 ボス監督には若手の成長を促し世代交代を進めながらも、ドルトムントでのキャリアが長いベテラン選手たちも納得できるようなチーム作りという相反する難しい仕事が待ち構えている。

31歳の青年監督を迎え入れたシャルケ

 シャルケの場合は、より状況が厳しい。マインツで結果を残し、満を持してのハイデル体制1年目で出だしからつまづき、結果は10位。ヨーロッパリーグ(EL)出場権さえ届かない結果ながら、シーズンが終わるまでシャルケに恒例(2002年以降、暫定指揮官を含めてテデスコ監督で20人目)の監督交代にまつわる騒動が起きていなかったが、ウクライナ代表MFイェウヘン・コノプリャンカの「弱虫」という批判がことさら強調されるようになってから状況が一変、解任の見方が一気に強まった。

ヴァインツィアル

1年で解任となったヴァインツィアル氏 [写真]=Bongarts/Getty Images

 ヴァインツィアル前監督が休暇先のサルディーニャ島で解任を電話越しで言い渡されることが報じられると、すぐさまテデスコ監督の就任が発表された。アウエによれば、契約の際に記された違約金を満額を受け取る円満な形での移籍だという。「私たちはテデスコ監督の仕事に大きな感謝を示すとともに、シャルケでの活躍を祈っている」と好意的なコメントを残している。

 10日付のドイツ紙『ビルト』ではこのタイミングの良さに、マネージャーや会長との面会を断ったヴァインツィアル氏が、ハイデルSDに対してシーズン中からすでに後任探しをしていたのではないか、と疑惑の念を向けていると報道。ハイデル氏は否定しているが「彼との共同作業には、もはや納得できる余地は無かった。私は間違いを犯した。そしてそれを修正したんだ」と話している。アウクスブルクに400万ユーロ(約5億円)を支払って契約したものの、今後はさらに数百万ユーロ単位の違約金をヴァインツィアル氏に支払わなければならないようだ。

 31歳のイタリア系のテデスコ監督はドイツ語、イタリア語、英語、スペイン語を操る青年監督だ。日本のS級ライセンスにあたる『フースバル・レーラー(サッカーの先生)』のライセンスのテストでは元同僚であるホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督とともに試験を受け、彼よりも優秀な成績を残したことで話題を集めた理論家だ。シュトゥットガルト(U-17)、ホッフェンハイム(U-19)の育成カテゴリーで結果を残し、昨シーズンの途中から2部のアウエで指揮を取った。基本的に、ホッフェンハイムと同様に3バックを軸に、縦にボールを入れるタイミングを探りながら丁寧にボールを繋ぎ、ディフェンスでは一気にコンパクトに撤退するソリッドな戦い方でクラブの内外から高い評価を得た。

テデスコ

2016年3月にナーゲルスマン氏とともに監督ライセンスを取得したテデスコ氏(左) [写真]=Bongarts/Getty Images

『レビア・シュポルト』紙によればトゥヘル氏、ロジャーシュミット氏も後任候補に挙がっていたようだ。クレメンス・テンニース会長は「トゥヘル氏を高く評価しているが、今の状況で天敵ドルトムントから彼を引っ張ってくるのは自分たちにとっても大きな負担になるだろう。マインツ時代にトゥヘル氏と交渉したことがあるが、そのときはハイデル氏が移籍の許可を出さなかったんだ。あのとき、彼が来ていれば、クラブは全く違った成長を見せていただろう」と冗談交じりに話している。

 ハイデル氏は「テデスコ監督は経験こそ無いが、今後どのようなサッカーでシャルケを作り上げていくか、という話し合いで私を納得させてくれた。他のクラブがそうであるように、私たちも若いイノベーティブな監督に賭けたい」と招へいの理由を話した。

 ヨーロッパの舞台への出場権も掴めず、主力選手の流出が懸念されている。現状は、そもそも誰がチームの軸として残るのかもハッキリしていない状況。今年の夏は青年監督とともに再びゼロから始めなければならない状態に陥っている。

 お互いに天敵同士であるドルトムントシャルケ、夏には両クラブともにアジアツアーも組まれており、準備の時間も限られている。シーズンは終了したばかりだが、ピッチ外ではすでに来シーズンへ向けて大変動が始まっており、両クラブのファンはオフシーズンも休む暇が無さそうだ。

By サッカーキング編集部

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