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【コラム】ゴール量産を渇望する大迫勇也に試練…再び悩まされるトップ下起用のジレンマ

2016.12.20

ゴール量産に期待がかかるケルンFW大迫勇也 [写真]=Bongarts/Getty Images

 ケルン3シーズン目を迎え、ようやく念願だったFWの定位置を獲得した大迫勇也。今シーズンは開幕からアントニー・モデストと2トップを組み、前線でタフさと逞しさを発揮。彼自身のゴールは9月21日のシャルケ戦と同25日のライプツィヒ戦の2得点にとどまっているが、モデストのゴール量産(今シーズンここまで12点)を力強く支え、チームの快進撃を演出。序盤のケルンはブンデスリーガ1部・2位まで順位を上げたこともあった。

「自分はモデストと組んでいる時が一番やりやすい。それはモデストもそうだと思う。彼は僕のことを信頼してくれているんで、それが一番じゃないですかね。ボールも出してくれるし。お互いに生かし生かされる関係ができていると思います」と大迫自身も前向きに語っていた。

 ところが、ここへきて負傷者が続出。マルセル・リッセやマティアス・レーマンら主要選手がケガで離脱した。そこでペーター・シュテーガー監督は12月10日のドルトムント戦から大迫をトップ下に配置。最前線をアルチョムス・ルドニェフスとモデストのコンビに変更した。そのドルトムント戦と12月17日のブレーメン戦でルドニェフスが連続ゴールをゲット。監督の采配自体は一応、奏功しているように見えるが、チームは2試合連続ドロー、最近4戦未勝利と失速傾向にあり、順位も暫定7位まで下がってしまった。

「トップ下でのプレー? チーム状況がチーム状況なんでしょうがないですね。これだけケガ人がいる中で、自分が前にいてもなかなかボールが来ないんで、今は我慢の時かなと思います。前の2人(モデストとルドニェフス)は中盤ができる選手じゃないし、僕まで前に行ったらチームが崩れちゃう。今は自分がやることがすごく多いですね」と目下の大迫は指揮官の起用法を受け入れるしかないようだ。

 昨シーズンもトップ下やサイドアタッカーの役割をたびたび課せられ、苦しみながら出場機会増に努めてきただけに、せっかくつかんだFWの一角を手放すことには悔しさも募るはず。実際、本人も「早くケガ人が戻ってきてほしい。(自分が点を取るには)そこからじゃないですか。中盤だと位置が低いし、今は守備が多すぎるんで。前でやれる自信はありますけど、とにかく今は我慢ですね」と2トップに戻り、攻撃に専念したいという強い渇望を口にした。

 しかしながら、ブレーメン戦のケルンを見る限りでは、中盤でゲームを作れる選手が大迫とボランチのヨナス・ヘクターの2人しかいない。「ヨナスはボールを持てるから、監督からもヨナスとうまくゲームを作るようにと言われています」と彼自身もシュテーガー監督の指示を頭に叩き込みながら、パス回しやタメを作る動きで献身的に攻めを組み立てていた。

 こうした大迫の器用さや気配り、視野の広さ、要所要所で的確なプレーを選択できる判断力はやはりほかの攻撃陣にはない部分。だからこそ、指揮官は過去にもたびたび彼を中盤で起用してきたのだろう。それは間違いなく大迫の強みなのだが、「FWとしてゴールを量産したい」という本人の思惑とはかけ離れている。

 そのギャップをどう埋めていくべきか…。大迫は今シーズン折り返し地点に来て、再び悩ましい状況に直面しているのだ。

 ただ、今回のブレーメン戦でもゴールを奪えそうなチャンスが皆無だったわけではない。最たるシーンが65分の決定機。マルコ・ヘーガーからタテパスを受けた大迫はペナルティエリアぎりぎりのところでフリーになり、右足を一閃。敵地に押し寄せたケルンサポーターの誰もが決まったと思っただろう。だが、ボールはゴールわずか左に反れてしまった。

「狙いすまして左に打ちましたけど、ちょっとズレましたね。中盤をやる中で、あのチャンスをしっかり仕留めることを考えておかないといけないですね。トップ下で出た時にボールを回したりするのは最低限の仕事。そこからもっともっと点に絡む仕事をしなきゃいけない。練習から突き詰めてやるしかないと思います」と本人も今シーズン3点目を奪える絶好機を逃した反省を胸に刻み込んでいた。

 年内最終戦は12月21日のレヴァークーゼン戦。リッセらの復帰はまだ先になる見通しで、大迫のトップ下出場が続く可能性は極めて高い。その状態でゴールを奪うのは難易度が高いが、彼自身は「点を取りたいですね。それはすごく思います」と偽らざる本音を吐露した。同じく日本代表でプレーする原口元気(ヘルタ・ベルリン)も「サコちゃんの能力があれば、今季2ケタゴールは十分行けると思う」と太鼓判を押していただけに、リーグ戦10戦無得点の壁を何とかして破って、新たな2017年を迎えたところだ。

 かつてマインツでプレーした岡崎慎司(レスター)が2シーズン連続2ケタゴールという偉大な記録を作った通り、FWは数字を残してナンボのところがある。1トップを担い続けてきた当時の岡崎と、現在のようにトップ下など下がり目の位置で起用されがちな大迫は、得点チャンスの数自体が大きく違うかもしれない。が、それでも岡崎を超え、日本トップの点取屋に君臨するためにも、ここから得点を量産するしかない。その起爆剤となる一撃をいち早く手にしてほしいものだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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