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ドルト香川、完全復活の裏側…トゥヘル新監督が施した“マジック”とは

2015.11.04

2015-16シーズンにおけるドルトムントのフォーメション

 今シーズンのブンデスリーガ11試合終了時点で8勝2分1敗の勝ち点26と、バイエルンに次ぐ2位の座をキープしているドルトムント。ヨーロッパリーグ(EL)の方でもC組トップを独走中で、ドルトムントの地方紙『Medienhaus Lensing』で5年間、番記者をしているユルゲン・コーエルス氏も「今シーズンはELとカップ戦で2冠は取れる」と太鼓判を押すほどだ。

 昨シーズンの前半戦をリーグ最下位で折り返したチームとは思えないほどの急浮上を演出しているのが、トーマス・トゥヘル新監督。トゥヘル監督はマインツ時代から対戦相手やチーム状態に応じて猫の目のように戦術やフォーメーションを変える指揮官として知られたが、今シーズンも選手の配置や構成を事細かく変化させている。

 9~10月の数試合の戦いぶりを見ても、その緻密さが伺える。まず9月27日のダルムシュタット戦では、MFユリアン・ヴァイグルをアンカーに入れ、MF香川真司を右、MFイルカイ・ギュンドアンを左のインサイドハーフに配置する「4-3-3」で戦った。だが、翌節の10月4日に行われたバイエルン戦ではダイヤモンド型の中盤の「4-4-2」へと変更。アンカーにヴァイグル、右にギュンドアン、左にMFゴンサロ・カストロ、トップ下に香川という並びにして、ボール支配時間を可能な限り増やそうと試みた模様だ。

 インターナショナルブレイク明けの10月16日に行われたマインツ戦は再び「4-3-3」に戻したが、香川とギュンドアンの位置を入れ替えて香川を左に。相手の右ボランチを務めたMFユリアン・バウムガルトリンガー、右サイドバックのDFダニエル・ブロジンスキが上がり目の位置を取ることが多いのを想定し、香川がより背後に飛び出せるように配慮したのだろう。さらに同月22日のEL・ガバラ戦では、ギュンドアンとヴァイグルをダブルボランチ気味に配置。香川を完全なトップ下に据え、右のMFヨナス・ホフマン、左のFWマルコ・ロイス、1トップのFWピエール・エメリク・オーバメヤンとともによりゴール前へ行けるようにした。香川自身の得点はなかったものの、相手との力関係もあって前線4枚の破壊力は一段と光っていた。

「トゥへル監督は戦術に関してすごく分かりやすく伝えてくれる。うまくいかない時のボールの回し方、動き方なんかは映像を使いながら『もっとこうやったらうまく回る』と具体的に説明してくれる。相手のウィークポイント、ストロングポイントも的確に伝えてくれるんで、いいイメージを持って試合に臨めていますし、選手としてはすごくやりやすいです。やってるサッカーもすごく魅力的で充実している。練習からすごくいい形で入れていますし、ホントにもっと向上していきたいと思っています」と香川も新指揮官のアプローチのうまさを認めている。

 Uー23の方でプレーしているMF丸岡満も「クロップ(ユルゲン=現リヴァプール)さんとトゥヘルさんはゲーゲンプレスは全く一緒で、どちらも切り替えの速いサッカーを重視してますけど、トゥヘルさんの方がより戦術を重視します。ポジションごとに役割がハッキリしていて『こういう時はこう動け』とかなり指示してくる」と今シーズンは戦術色が非常に強くなったことを明かしていた。

 こうした結果、ドルトムントはタテへタテへと速く攻めるカウンタースタイルから、ボール支配をより多くしたポゼッションスタイルを採る時間が長くなった。香川自身のボールタッチの回数、アシストの数も劇的に増加している。ゴール数が今シーズン、リーグ2点というのは本人も不完全燃焼感の強いところだが、それでもトゥヘル監督は「シンジは決してボールを失わないし、ほとんどの決定機に彼が絡んでいる。毎試合アシストしてくれているのは我々にとって非常にハッピーなことだ」と香川のパフォーマンスを高く評価している。

 こうやってトゥヘル監督が香川を称賛するシーンは、今シーズンの試合や練習の中で随所に見受けられる部分。10月下旬にブラッケル練習場を訪れた際も、指揮官は8対8+フリーマンの練習でボールを2度追い3度追いして献身的な守備をし続けた香川に「シンジ、グード」「シンジ、グード」と繰り返し声をかけていた。

「我々は彼を再び最高レベルに引き上げるようにあらゆる手を尽くしていくつもりだ」

 トゥヘル監督は7月に川崎フロンターレとの親善試合で来日した時も、こう繰り返していた。FW岡崎慎司(レスター)をマインツで指導した経験から、日本人は頭ごなしに怒鳴ったり、怒ったりするより、褒めて自信をつけさせる方がベターだと考えているのだろう。

「監督が褒めるのは真司だけじゃない。もちろん真司がいいプレーするからそういう形になっているのかもしれないですけど。トゥヘルさんは『全員が強い気持ちを持って戦わないとダメだ』ということを厳しく言う人。そこはマインツ時代から変わっていません。その要求に真司もしっかりと応えていると思う」とDFパク・チュホも話していた。

 いずれにせよ、今シーズンの香川が自分に真摯に向き合ってくれるいい監督に恵まれたのは間違いない。それを前向きなエネルギーにして、さらなる飛躍を遂げてほしいものだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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