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内田篤人が垣間見せた新たな一面…魅せられし変貌の先には

フランクフルト戦にフル出場した内田 [写真]=Bongarts/Getty Images

 意外なシーンだった。

 日本代表が、ベルギー代表を3-2で下した4日後。ブリュッセルでの代表戦からシャルケに戻った内田篤人は、ブンデスリーガ第13節のフランクフルト戦に臨むべくコメルツバンク・アレーナのピッチに立っていた。

 シャルケにとっては敵地での一戦だったが、15分に内田が相手のオウンゴールを誘発して先制すると、直後の18分にも追加点を奪う。右サイドでの内田のボール奪取から、マックス・マイヤーがファウルを受けFKを獲得。デニス・アオゴの左足から放たれたボールは、ジョエル・マティプの頭を経由してフランクフルトゴールを揺らした。

 2点目の発端も作った内田はゴールの瞬間、ピッチの中央にいた。そして、マティプの豪快なヘディングシュートによりリードが広がったところを見届けると、力強く右拳を握って大きなガッツポーズを見せた。

 例えば、ポーカーフェイス。あるいは、飄々と。

 掴みどころがなく、感情を表に出さないようなイメージがあっただけに、得点直後に遠くからでも確認できるようなジェスチャーを見せたことは、大きな驚きだった。それでも、既に在籍4年目、今シーズンも疲労を考慮されて出場を回避した第3節を除き、リーグ戦12試合でフル出場を続けている。感情の発露やチームを引っ張るような振る舞いは、むしろ自然なのかもしれない。

 前半終了間際、フランクフルトに続けざまにセットプレーを許した際も、味方選手に集中を促すかのように、何度となく手を叩いて声を張り上げていた。

「うちは1点取られたらがらっと雰囲気も悪くなりますし、それで前半戦は何度も試合を落としているので」と、試合後に語ったように、失点のもたらす悪影響や時間帯を考えた上での行動でもあるのだろう。後半に劣勢に立たされてセットプレーのピンチを迎えた時も、ディフェンスラインを下げるなと手振りを交えながら、さかんに指示を出していた。自身の出場こそなかったが、ベルギー戦から中3日での試合で先発メンバーにしっかりと名を連ねていることや、試合中の言動を考慮すれば、紛れもなくシャルケの中心選手と言えるはずだ。

 思えば、核心を見せないようなイメージも内田自身の戦略だったのではないか。様々なところで、「普通の顔をしてすごいことをやりたい」と語っていることは、裏を返せば努力や苦悩を隠したがっているとも、捉えられる。報道陣に対しても、敢えて意表をつくようなコメントを発することで反応を楽しんでいるかのような節もあったが、真意を悟られないようにという思いもあったのではないか。

 しかし、つかみどころのないような振る舞いにも、何かしらの変化が感じ取れる。上記のような試合中での言動はその一端とも言えるし、自著の影響もあり、甘いマスクに隠れた熱い一面も多くの人に知られた感もある。

 フランクフルト戦で、最も印象的だったシーンがあった。

「ファーに一人流れたのが見えたので、ちょっとボールは低かったですけど、オウンゴールですけど入ったのは良かったんじゃないですか」

 先制点に繋がる左足でのシュート性のクロスについて、内田は試合語にさらりと振り返ったが、実際に得点直後に大きな喜びを見せることもなかった。スタジアムの電光掲示板の得点者には内田の名前が記されたが、当の本人は駆け寄ってきたチームメートからの祝福に少しばかり応えると、すぐにピッチ中央に足を向けた。先制点に繋がる一連の流れの中で、ペルー代表FWジェフェルソン・ファルファンが相手選手との接触により、倒れこんだままだったのだ。

 自身のゴールに繋がるプレーをよそに、今節にけがから先発復帰を果たした右サイドの相棒を心配する姿は、内田の持つ感情の豊かさを象徴するかのようだった。やはり、その人が持つ人間味というのは、隠し切れずににじみ出てしまうのではないか。

 内田は、チャンピオンズリーグでの日本人として初となるベスト4進出や最多出場をはじめ、クラブと代表問わずに様々な記録を打ち立ててきた。25歳という年齢を考えれば、まさに驚異的としか形容しようがない。ただ、だからこそ、酷とは思いつつも更なる期待も抱いてしまう。

 もちろん、本人にその気は全くないかもしれない。

 それでも、普通の顔をしてとてつもなくすごいことを成し遂げてきた選手が、溢れんばかりの感情を表に出した時、どこまでの高みに上っていくのかを見てみたいと思う人々は、決して少なくないはずである。

文●小谷紘友

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