2013.08.07

乾貴士を称えるフランクフルト指揮官「クオリティーの高さは世界屈指」

乾貴士
フランクフルトでの2年目を迎える乾貴士。初年度は6得点8アシストを記録 [写真]=aflo

『ワールドサッカーキング』増刊 2013−2014シーズン選手名鑑[開幕版]掲載

乾貴士の現在地

 乾貴士は2013-14シーズン前半のフランクフルトの快進撃を牽引した“主役”の一人だった。迎える新シーズンも、チーム内の立ち位置は変わらない。大幅に戦力アップしたフランクフルトで、乾は攻撃の中核を担う。

◆指揮官が絶賛する乾のポテンシャル

 ボーフムからフランクフルトへの移籍が発表された1年前、ドイツで乾貴士のことを知る人は少なかった。

 ところが、シーズン開幕から試合を重ねるごとに乾に対する評価は一変し、その存在はドイツ中で知られることになる。「第2の香川真司」と称賛された彼は、第5節までに3得点3アシストと最高のスタートを切った。

 特にシーズン前半の活躍は素晴らしかった。対峙するDFを軽やかなドリブルで翻弄し、相手の守備網をことごとく切り裂いた。シーズン後半は相手に研究されて苦しんだが、指揮官アルミン・フェーは乾を信頼し続け、不動のレギュラーとしてピッチに送り出し続けた。指揮官は、この日本人アタッカーへの賛辞も惜しまない。

「私はこれまで、何人かのワールドクラスの選手を指導してきた。乾のトラップ技術、トラップからのスムーズな動き出しは、彼らと比較しても劣らない。いや、むしろそのクオリティーの高さは世界屈指と言っていい」

 もちろん課題もある。あえて厳しい意見を言うなら、乾は最も肝心なゴール前のエリアで慌てすぎる傾向にあるし、意図の感じられないミドルシュートでチャンスを潰す場面も少なくない。もっと冷静にプレーできれば、絶対的な評価材料となるゴールも多く生まれるはずだ。

 昨シーズンと同様、迎える新シーズンも乾は左サイドMFとして起用されるだろう。本来、彼自身が最も得意とするのはトップ下のポジションだが、そこにはチームのトップスコアラーであるアレクサンダー・マイヤーがいる。昨シーズンのブンデスリーガで16得点を記録したマイヤーは、2メートル近い体格の持ち主でありながら足元の技術も達者。まさにチームの中核を担うエースであり、そのポジションが誰かに取って代わられる可能性は低い。乾は最前線でのプレーも可能だが、チームは今夏の移籍市場でホッフェンハイムからFWホセルを獲得しており、非常事態でもない限りその可能性は低い。

◆新チームに対する確かな手応え

 もちろん乾とて、無条件でピッチに立てるわけではない。

 新戦力のヤン・ローゼンタールは昨シーズンのブンデスリーガで4得点4アシストを記録しており、フライブルクのヨーロッパリーグ出場権獲得に大きく貢献。ホセルと同じくホッフェンハイムから加入した新戦力、シュテファン・シュレックも左サイドMFの有力候補だ。

 乾は「ローゼンタールとシュレックはチームの始動日から参加している。だから、僕は今のところ3番手ですね」と謙虚な姿勢を見せるが、もちろんスタメンを譲る気はないだろう。彼のポテンシャルを考えれば、昨シーズンの6得点8アシストという成績は決して満足できるものではない。

 昨シーズン後半戦の失速は、チームとしての守備意識の高まりに原因がある。フェー監督によるディフェンスへの要求は強まる一方で、FWも高い位置から積極的にプレスをかけることがチームでのルールとなっている。当然ながら、その反動として、攻撃に転じた際の疲労感は大きい。

 もっとも、ベースとして「あくまで攻撃的に戦おう」とするチームの方針は、乾のプレースタイルにマッチしていると言っていい。攻撃時に真価を発揮することができれば、ヨーロッパリーグという大舞台で自らの価値を売り込むこともできるはずだ。「僕たちにはバイエルンよりも大きなモチベーションがある。すべてが噛み合えば、バイエルンに勝つことも不可能じゃない」

 乾自身がそう力強く語る背景には、主力の放出を回避し、新たに即戦力を加えたチームへの確かな手応えがある。キーマンの乾が輝けば、フランクフルトの未来は間違いなく明るい。2013-14シーズンのブンデスリーガは現地8月9日に開幕。乾所属のフランクフルトは、同10日に細貝萌が所属するヘルタ・ベルリンとのアウェー戦でシーズンの幕を開ける。

文=キム・デンプフリング 翻訳・構成=EIS 写真=aflo

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