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【インタビュー】14歳の少年に明かした酒井宏樹の本音。高い順応力、メンタルの秘密…次世代へのメッセージ

2017.05.23

インタビュー=テオ・ボッティ(Théo BOTTI)
写真・構成・文=ボッティ喜美子(Kimiko BOTTI)

 酒井宏樹がフランスの名門チーム、オランピック・ド・マルセイユ(OM)に移籍して、もうすぐ1年。不動のポジション、右サイドバックでの活躍は、地元で高く評価、支持されている。

 違和感なくこの国に溶け込んでいる心身の強さは、どうやってコントロールしているのか。ブラジル、ドイツ、フランスで、どう感じ、何をつかんできたのか。3大陸での違い、共通すること……南米生まれマルセイユ育ちの日仏ハーフ、14歳のテオ・ボッティがインタビュアーとなり、その疑問をぶつけた。

 14歳はヨーロッパ式で大人扱い。酒井は一人の大人と話すように、一つひとつの質問に丁寧に答えてくれた。

――ピッチで、全く違和感ないですよね。

酒井宏樹 自分がやっているところ、外から見ているわけじゃないんでわからないんですけど、他の10人に助けられています。本当に。
違うチームに行ってたら、自分ひとりでやってくれっていうチームに、もし入れられてたなら、多分、こんな結果にはなっていないと思いますし、皆のクオリティがすごいから、自分の長所とかサポート能力がアダプトできていると。僕自身そんなに、ちやほやされてプレーしてきたわけではないので、現地の人たちが、僕を好きでいてくれればいいなとも思ってます。

――今日、酒井選手に会うって話した友達や周りの人みんなに、「酒井選手は、これからもずっと長くOMにいてくれるつもりですか?」って、聞かれました。

酒井宏樹 ああ、もうそう言ってくれるだけですごく嬉しいですし、求められるところでサッカーをするっていうのは、サッカー選手にとってすごく幸せなことで。僕は、長くいたいです。

――以前、インタビューで、指示や命令をされて自由に行動できないのが嫌だと、大事なのは、指示通りに動かなきゃいけない練習の時間以外の、その残りの1日の時間をどう使うのかが大事って言っていましたが、どういうふうに使っていますか?

酒井宏樹 例えば、今日、クラブハウスを出るのは僕が最後でしたけど、試合の2日前っていうのは、とても重要で、集中力を上げていくことに専念しています。練習自体は軽かったんですけど、皆、メンタルはほぼ試合と同じです。終わったあと、しっかりストレッチして、マッサージして、サウナ入って、アイスバス入って。できる限りのことをして、自分の疲れをとろうとする日です。そして、試合後、週明けには、負荷を高くし、自分の体をいい意味で傷つける、刺激を与える。そんな感じで考えています。

――そういう自由な時間を過ごすのには、やりたいことを優先していますか? それとも、身体を休めるとかそういう方を?

酒井宏樹 僕の性格的には、結構やりたい方だから、フィジカルコーチと相談しながら上手くバランスをとっています。
そして、家に帰ったら、家族と触れ合うことが優先。やるべきことは全て、練習場を出るまでに。家ではサッカーのことはしない。きっちり分けるようにしています。

――どのように努力していますか? 毎回練習とか試合の後に、自分のプレーを振り返って、次、それを意識しながらプレーをしていたりとか。

酒井宏樹 そうですね、僕の場合、試合中に起こった悪いプレーの方が結構印象に残って、明確に自分の頭の中に残るんですよ。だから、「悔しい」って思ったプレーは、どうやって練習したらそれが直るようになるのか、を。考える時点で、ひとつステップは踏んでますし、それで、いろんなひとと相談したり話しあいながら、こういうことをやっていけば、よくなるかもしれない、って。1日1日、トライです。「これやって、ちょっとよくなったかな」「でも、そんなに変わんないな」って思ったら、また違う日に違うことを。で、「ちょっと上がった」ってなったら、「あ、じゃあ、これちょっとしばらくやってみよう」みたいな感じでやってます。僕のポジションには、フリーキック練習とかシュート練習みたいに、これをやればうまくなるっていうものがないから、常に模索しながら、やってます。

――サッカーで、脳は筋肉みたいに鍛えるもので、イメージトレーニングする時に使っている脳の部分が、プレーしている時に実際使っているものと同じって言われていますが、そういうイメージトレーニングしていますか?

酒井宏樹 うん、プレーしている時……多分、君もサッカーをやっているからわかると思うけど、それは、試合中の90分やっていること。プロは試合90分で、その中で、いろんなことが起きるんですよ。だから、僕のイメージは常に、何があっても冷静に対処できるような準備。いいプレーがあっても、テンションがガッと上がらないようにちょっと抑えたりとか、すごく悪いプレーがあっても、落ちないで平常心保ってたり。それだけ、かな。イメージしているとしたら。

――サッカーではメンタルが大事って言っていましたけど、それは、自分に自信を持ってプレーするということですか? やっぱり多くの選手みたいに、試合の前はプレッシャーあるとも言ってましたけど、それをどうやって克服して、プレーをしていますか?

酒井宏樹 現時点で、乗り越えてないですよ。1日1日、すごいプレッシャーと戦っています。

――じゃあ、プレッシャー、次の試合に向けてもありますか?

酒井宏樹 もちろん。毎試合毎試合、緊張って感じじゃないんですけどプレッシャーはあります。それを、どれだけ不安要素を取り除いていくかっていうスタンスでいます。対戦相手の特長とか利き足、どういうクセがあるとか、ビデオで見てます。ミスして大惨事にならないように、知れることは知っておく、やれることはやるという。

――よくヨーロッパで、日本人にはファイティングスピリットが足りないって言われていますよね。たとえば、フランスでは、5歳ですでに、サッカーのグランドは戦場で、もう戦争しているつもりで、相手を潰す気でプレーしろと教わります。でも、酒井選手は、それが足りないようには見えないし、ファンサポーやターもそう思っていないんですけど、どういうことを意識して、どんな気持ちでプレーしてますか?

酒井宏樹 でも、まだまだ足りないと、そういう局面での迫力とか威圧感っていうのは、まだまだこっちの選手に比べたら全然足りないと思っていますよ。相手の足を壊すとか、そういう気持ちでは全く行ってないですし、だけど、ファウルでも止めないといけない局面っていうのは必ずあるから、そこのオンとオフはしっかり。
思い切りガッツり、ガッツり行かなくちゃ行けないという局面を作っちゃってるのは自分だから、そうならないように気をつけてます。

――ブラジルに行った時に、ハングリーさをもっと得たって言っていましたけど、やっぱり、ブラジル、ドイツ、フランスは違いますか?

酒井宏樹 正直、日本で育った自分にとってすごくサプライズだったですよ。練習が違うし、勝負への意識が違うから。練習中のゲーム形式の試合でも、絶対に!皆勝ちたい。それは、フランスもそうだし、そういうところは足りてないな、と。

――同じヨーロッパでも、ドイツとフランスの違いは?

酒井宏樹 共通して負けず嫌いですよ。サッカー選手は、すごく負けず嫌いだし。試合になったら、なおさら。

――ドイツからマルセイユに来て、酒井選手の得意なクロスをあげるときに、O Mの選手との方が、フィーリングがもっと合うって言っていましたけど、それは、どういう感じで?

酒井宏樹 基本的にOMは攻めるチームなので、攻撃している回数は増えるし、守備に負担がない分、少し攻撃に余裕が持てる部分あります。周りの人と関係を持ちながら攻めて行けたり、上げる場所やタイミングが明確になるので。

――クロスの上げ方のコツっていうのは、どういうふうな動きでやっていますか?

酒井宏樹 もう、自分自身では全く意識してないですし、まぁ、いいボールが上がればいいなって思いながら蹴っているから。それで、それを、「こういう蹴り方にしようかな?」みたいな感じですよ。

――今は、次世代が応援されている時代ですけど、今、プレーしているU-17から下のプレーヤーたちに、何かアドバイスを贈るとしたら何ですか?

酒井宏樹 そうですね。僕自身、今、後悔しているのは、U-15、U-17の時にもっとプロみたいな意識でサッカーしていれば、もう4年ぐらい早くいい舞台に立てたかもしれないということですね。ユースとかアマチュアという考えでは遅いです。U-17でプロデビューしている人はいっぱいいますし、ヨーロッパでは特にそういう選手が多いので。日本では、すごく稀で、そういうところで遅れをとっているわけです。欧州では17歳でデビューして、もうトップレベルの選手たちとやっているのに、日本の場合はちやほやされて、そのままこう埋もれていくということもある。どれだけ自分にプレッシャーをかけるかっていうのがすごく大事になるんじゃないかなって思ってます。

――そして、そのプレッシャーに負けない強いメンタルを持てるように、毎日の繰り返しが大事なんですね。ありがとうございました。

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