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北マケドニアの英雄ゴラン・パンデフ、EUROでゴールを決めた37歳はどんな人?

2021.06.14

北マケドニアの英雄ゴラン・パンデフ [写真]=Getty Images

 人生に遅すぎることはない――。そんなことに気づかされた一戦だった。

 13日に行われたEURO2020・グループC第1節で、北マケドニア代表はオーストリア代表と対戦。国際大会初出場となった彼らは1-3で敗れたものの、キャプテンを務めるFWゴラン・パンデフが記念すべき初ゴールをマークした。

 37歳321日での得点は、EURO歴代2番目の年長記録。北マケドニア代表の最多出場記録(120試合)と最多得点記録(38得点)を持つベテランストライカーは、また一つ金字塔を打ち立てた。

 そもそも、パンデフのキャリアは成功に彩られている。2001年、17歳で北マケドニア代表デビューを果たし、同年にインテルの下部組織に入団。ラツィオを経て、2009年にインテルに復帰すると、ジョゼ・モウリーニョ監督(当時)のもとでクラブ史上初の3冠獲得に貢献した。2010年のFIFAクラブワールドカップで優勝を経験し、“世界王者”に輝いたこともある。その後もナポリでコッパ・イタリアを制覇し、1年間在籍したガラタサライでは国内リーグと国内カップの“ダブル”を成し遂げた。

 「彼はキャリアを通して、非常に過小評価されていると思う」。インテル時代の同僚である元オランダ代表MFウェズレイ・スナイデル氏がそう話せば、北マケドニア代表として、ともにEURO2020を戦うDFエズジャン・アリオスキも「彼があと10歳若かったら、バロンドールを受賞できるかもしれないと思うことがある」と、先輩について語っている。

 パンデフは北マケドニアの国民的英雄であり、イゴール・アンゲロフスキ代表監督からは「ゴラン大王」と称されるほどの存在だ。ただ国際的な名声をそれほど得られなかったのは、本人のキャラクターが関係しているのかもしれない。

 ラツィオ時代に監督としてパンデフを指導したデリオ・ロッシ氏によれば、パンデフは“寡黙なリーダー”なのだそうだ。「彼は試合前にモチベーションを高めるようなスピーチをする選手ではない。だが彼の目を見れば分かるんだ。チームメイトはいつも彼のことを愛していた。それは偶然ではない」。イギリス紙『ガーディアン』にそう語っている。

 控えめな性格とは対照的に、内に秘める情熱は誰よりも強い。そうでなければ、37歳の今も欧州5大リーグで現役を続け、代表のキャプテンを務めることはできないだろう。パンデフ自身も、スペイン紙『エル・パイース』のインタビューで「代表で何か重要なことを成し遂げる必要があった。自分にそう言い聞かせてきた」と明かしている。

 2013年に一度は代表引退の決断を下したが、アンゲロフスキ監督から説得されて2年半後に復帰を決断すると、EURO2020の予選ではキャプテン、そしてエースとして母国をけん引。ジョージア代表とのプレーオフで決勝点をマークして北マケドニアに初のEURO本大会出場権をもたらすと、歓喜の涙を流した。「私の人生で最も感動的な瞬間だった」と本人も振り返っている。そして夢を叶えた男は、「楽しみたい」と言っていた本大会でも早速ゴールネットを揺らしてみせた。

 なお、パンデフの活躍はピッチ上にとどまらない。「子供たちを助けたい」と、2010年に故郷のストルミツァで自身の名を冠したアカデミー「アカデミヤ・パンデフ」を設立した。『ガーディアン』によると、パンデフは年間予算の50パーセント程度を自ら負担しており、現在は国内有数の施設で13のユースチームが日々練習を行っているという。

 2014年に発足したトップチームは、2017年から北マケドニアのトップリーグに参戦。2019年には国内カップ王者に輝き、生え抜きではないものの、今回のEUROメンバーに登録されているFWマルヤン・ラデスキのように代表選手を輩出するまでになった。

 「マケドニアがパンデフに投資したものを、今はパンデフがマケドニアに還元している」。パンデフに代表デビューのチャンスを与えたドラギ・カナトラロフスキ氏は、教え子の活動をそう評している。パンデフは今回のEUROを最後に現役を退く可能性があるが、“第2のパンデフ”が誕生するのも、そう遠い未来ではないのかもしれない。

 もちろん、パンデフのEURO2020は始まったばかりだ。北マケドニア代表は、17日に行われるグループステージ第2節でウクライナ代表と対戦する。黒星スタートとなった彼らが次に目指すのは、国際大会での初勝利だ。

「私はチームメイトの2倍働き、彼らの2倍走らないといけない」と言うレジェンドは、チームのため、そして祖国のために、次の試合でもピッチを駆け回ることだろう。代表デビューから20年、待ちわびたヒノキ舞台で輝く背番号10から目が離せない。

(記事/Footmedia)

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